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エレメンタルクロス ~精霊の剣~  作者: KEI
第11話 名を呼ぶ剣

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(三)五分

◆ 炎の斬撃


 グラウスが魔剣を振る。


 巨大な炎の斬撃が放たれた。


 一つではない。


 続けて二つ。


 三つ。


 修行場を覆うように、異なる角度から迫る。


『全部を受ける必要はない』


「分かってる」


 セトは一つ目を避ける。


 二つ目の下をくぐる。


 三つ目だけが、倒れている一族の者たちへ向かっていた。


 精霊剣を振る。


 赤い刃と炎の斬撃がぶつかった。


『切る場所を右へ』


 セトは剣の角度を変える。


 シアが刃の右側へ火を集めた。


 炎の斬撃が二つに分かれる。


 左右へ流れ、倒れている者たちを避けて岩壁へ当たった。


 岩が焼け、ひびが入る。


「白炎より軽い」


 セトが言う。


『わたしが剣の形を保っている』


「なら、俺は振ることに集中すればいい?」


『どこへ振るかも考えろ』


「分かってる」


◆ 初めての剣


 グラウスが距離を詰める。


 魔剣を上から振り下ろす。


 セトは精霊剣で受ける。


 重い。


 魔剣に蓄えられた火の量は、今のシアを上回っている。


 先代イフリートから奪った力。


 シアから奪った力。


 人や魔物から集めた力。


 それらが一本の剣へ詰め込まれている。


 正面から押し合えば負ける。


 セトは刃を斜めに傾けた。


 魔剣を滑らせる。


 グラウスの体が前へ出る。


 肩へ精霊剣の柄を打ち込む。


 グラウスが下がる。


 セトは追う。


 炎の剣を横へ振る。


 グラウスが魔剣で受ける。


 受ける角度を変え、セトの剣を外へ流そうとする。


『このまま押すか』


「押さない」


 セトは力を抜いた。


 受け流そうとしていたグラウスの魔剣が大きく動く。


 空いた場所へ踏み込む。


 精霊剣の切っ先が、グラウスの肩を斬った。


◆ 五分


 血が飛ぶ。


 同時に、切断面へ炎が流れ込もうとする。


『止める』


 シアが出力を抑えた。


 グラウスの肩を焼き尽くす前に、炎が引く。


「なぜ止めた」


 グラウスが傷口を押さえながら尋ねる。


「斬るために振った」


「殺すためではないと?」


「今はな」


「甘い」


 グラウスが左手へ白刃を作る。


 魔剣と白刃を同時に構える。


 セトへ踏み込む。


 左から白刃。


 右から魔剣。


 セトは白刃を避ける。


 魔剣を精霊剣で受ける。


 シアが接触部分から炎を引く。


 吸収を抑える。


 グラウスが白刃を返す。


 セトは体を沈める。


 頭上を白い刃が通る。


 そのまま足元へ斬り込む。


 グラウスが跳び下がる。


 以前は、剣技でも出力でもグラウスが上だった。


 今は違う。


 出力だけなら、まだ魔剣の方が強い。


 だが、セトの体はシアの力で強化されている。


 速さと力が増しても、剣を動かしているのはセトだ。


 初めて握る剣でありながら、剣の方がセトの動きへ合わせてくる。


 ようやく、グラウスと同じ場所に立てていた。


◆ 剣の中の声


『右から来る』


 グラウスの白刃が迫る。


 セトは精霊剣で弾いた。


『次は魔剣だ』


「見えてる」


『なら避けろ』


 セトは半歩下がる。


 魔剣の切っ先が胸元を通る。


 すぐに前へ戻る。


 精霊剣を突き出す。


 グラウスが身をひねる。


 刃が脇腹をかすめた。


「シア」


『何だ』


「剣になっても、よく話すな」


『悪いか』


「いや」


 剣から声が返る。


 そのことが、セトには妙に自然だった。


 シアは剣になってもシアのままだ。


 炎の量を調整し、セトの体を支え、グラウスの動きを見ている。


 ただ握られているわけではない。


 二人で戦っている。


◆ 奪われた火


 グラウスが魔剣を大きく振り上げた。


「火よ来たれ」


 周囲に散っていた火が魔剣へ引かれる。


 シアから奪われた火も、先代の火も、剣の中心へ集まる。


 刀身の周囲に、巨大な炎の刃が生まれた。


『あれは、わたしから奪った火だ』


「奪った火を、自分のものみたいに使うな」


 セトが言った。


「私が扱っている以上、私の力だ」


「元が誰のものでも?」


「使えない力に意味はない」


『先代を殺した時も、そう考えたのか』


 シアの声が低くなる。


「先代を殺した時も、同じことを考えたのか」


 セトが代わりに尋ねた。


 グラウスは答えず、魔剣を振り下ろした。



※第11話「名を呼ぶ剣」は全十回です。

続きます。



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/elemental-cross-top/

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