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エレメンタルクロス ~精霊の剣~  作者: KEI
第50話 七つの分霊核

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(六)満ちる器

◆ 七つ


 町の向こうに、最後の分霊核があった。

 低い丘の裏側、石が崩れた場所に埋まっている。

 シアは真上で止まり、反応の消える一点へ手を向けた。

 周囲の石を焼き抜き、赤い玉が通れる隙間を作る。

 穴から浮き上がった器は、ほとんど空だった。


 シアが指を曲げる。

 最後の赤い玉が、ゆっくりと手元へ来た。

 町を通った時とは違い、この一個を取り出すかどうかで迷うことはなかった。

 どこにあるかも、どう取り出すかも分かっている。

 その確かな操作と、さっき町で止まった手が同じ自分のものだった。

 六個の分霊核が、その周囲で位置を変える。

 新しい一個が赤い四翼の循環へ入った。


 七個。


 最初から持っていた二個。

 岩山から取り出した一個。

 人の手を経た一個。

 川底と塔にあった二個。

 そして、今取り戻した一個。


 それぞれが、シアの精霊力を蓄えるための器になっている。

 扱える七個の器が、すべてそろった。

 シア自身を加えれば、力を使える場所は八つだ。


 シアが右手を動かす。

 七個の核が同じ方向へそろった。

 別々に動かすなら、今でもそれぞれの位置と役割を選ぶ必要がある。

 だが、一つの流れに乗せるだけなら違った。

 四翼は、同じ動きを七個へ同時に伝える。


 シアは赤い玉を見た。

 そろったから嬉しいとは感じない。

 セトを助けるための準備が整ったとも思わない。

 離れた器が戻った。

 七個が一つになった。

 その事実だけが、はっきりしていた。


◆ 黒の七つ


 ネアも最後の一個がある場所へ着いていた。

 岩陰の下にできた浅い洞窟だった。

 長い時間をかけて落ちた土砂が入口を塞ぎ、その奥へ黒い分霊核が埋まっている。

 四翼の感覚には、位置が最初から分かっていた。


 ネアは手をかざす。

 黒い線が岩の隙間へ伸びた。

 入口の土砂を少しずつ動かし、奥から物が通るだけの隙間を作る。

 大きな岩をすべて動かす必要はない。

 支え合う石をまとめて崩せば、分霊核まで埋まるものが増えるだけだった。


 黒い玉が姿を現す。

 ネアは細い流れで引き寄せた。

 器は傷ついていない。

 倒れた土砂の向こうには、まだ誰も触れていない古い空間が残っていた。

 ネアは奥へ入ろうとはしない。

 必要な一点を取り出せたなら、周囲を調べ直す理由はなかった。

 原光を受け取るだけで、自分から何かを放つこともない。


 最後の分霊核が、黒い四翼の循環へ入る。

 これで七個だった。


 ネアは手を止めた。

 七つの黒い玉も、空中で同時に止まる。

 次に同じ方向へ動かすと、すべてがそろって移動した。

 これだけの数を個別に細かく操作するには、それぞれの流れを分けて考えなければならない。

 だが、一つの動作を全体へ伝えるだけなら難しくない。


「七つ、そろいましたね」


 言葉に喜びはなかった。

 かつてなら、セトへ知らせようと考えたかもしれない。

 シアと合流する方法も考えたかもしれない。

 今は七個を集めた理由さえ、遠く感じる。


 ネアの周囲で黒い四翼が開いたまま、周囲の原光を取り込み続けていた。


◆ 満ちる器


 回収した分霊核は、初めから大きな力を持っていたわけではなかった。

 人間には小さな宝玉に見える、ほとんど空の器だった。

 火の核も、月の核も同じだった。


 それでも、七個そろえば蓄えられる場所は増える。

 最初から持っていた二個は、戦闘と身体の修復に使われていた。

 新しく得た五個は、回収の時に薄い精霊力を受け取っただけだ。

 数がそろった瞬間、すべてが満たされるわけではない。

 七個という数は、完成した蓄えではなく、蓄えを置ける場所がそろったという意味だった。

 以前の二核で続けた戦いと、これから七核でできることは同じではない。


 シアの赤い四翼は原光を取り込み、七個の器へ流し続ける。

 小さな空白だった核の内部に、少しずつ赤い光が増える。

 その流れを一度も止めずに、シアは空中で静止していた。


 遠くでは、ネアの黒い分霊核も同じように満たされ始めている。

 ネア自身が毎回一個を選んで補充しているわけではない。

 四翼の循環が、それぞれの空いた場所へ原光を送り込んでいた。


 だが、七個を個別に別の場所へ動かせるようになったわけではない。

 複雑な役割を同時に任せるには、今も意識を分ける必要がある。

 それに対して、同じ術を同じ瞬間に流すなら、七個を一つの循環として使える。


 シア自身と七個の赤い器。

 ネア自身と七個の黒い器。

 それぞれ八つの出口がそろった。


 まだ、そこから全力を放つ理由はなかった。

 二人は力を試すことなく、満ちていく核を伴ったまま次の変化を感じ取った。



※第50話「七つの分霊核」は全七回です。

続きます。



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/elemental-cross-top/

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