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エレメンタルクロス ~精霊の剣~  作者: KEI
第31話 生まれ直した王たち

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(一)同じ二人か

◆ 一か月後


 眠りの王を倒してから、一か月が過ぎた。

 セトたちは、ミレナの村に残っていた。


 戦いの直後は、全員がまともに動けなかった。

 セトは全身を打ち、以前に痛めた右脚にも再び腫れが出た。

 ミレナも、創界から戻った直後に受けた衝撃で、数日は一人で起き上がれなかった。

 次代として生まれ直したシアとネアも、身体ができた直後から自由に動けたわけではない。

 二人とも姿は以前と同じだったが、原光の流れが身体へ定着するまで、何度も輪郭が薄くなった。


 今は、もうその心配もない。

 セトは村の外れを走り、白刃と黒刃を続けて振った。

 右脚に痛みはない。

 身体のどこにも、眠りの王との戦いで負った傷は残っていなかった。


「本当に治ったな」


 白刃を消し、右脚へ体重をかける。

 谷へ向かう前まで残っていた鈍い痛みもない。

 創界を振るう間に無理を重ねた筋肉も、吹き飛ばされた時に打った背中も、すべて元へ戻っていた。

 治療に特別な術を使ったわけではない。

 眠りの王が消え、周囲の原光が正常へ戻ったことで、治癒の術も人間の回復も、本来の速さで働くようになった。


「何度確認するんですか」


 後ろから見ていたネアが言った。


「動けることと、治ったことは違うと何度も言われたからな」

「今回は、どちらも問題ありません」


◆ 傷のない身体


 シアは、セトの横を走り抜けた。

 地面を蹴ると同時に赤橙色の光が弾け、少し離れた岩の上へ着地する。


「私も問題ない」

「昨日も同じことをしていただろう」

「昨日より速い」

「比べる必要がありますか」


 ネアが尋ねる。


「ある。新しい身体だから、前より強いかもしれない」

「昨日までと同じ範囲です」

「もっと強くやれば分かる」

「村の近くで試さないでください」


 シアは岩から降り、自分の手を開いた。

 赤橙色の炎が小さく灯る。

 色も、熱も、以前と変わらない。


 ネアも銀青色の線を伸ばし、周囲を流れる原光を曲げた。

 二人の役割は、次代として完全に戻っている。

 知識にも、大きな欠落は見つかっていない。


 それでも、以前と同じだと言い切れるのかは、別の問題だった。

 髪の長さも、顔立ちも、声も以前と同じだった。

 それでも、身体を構成する原光は一度ほどけ、次代として組み直されている。

 外見が同じことだけでは、以前の二人がそのまま戻った証明にはならなかった。


◆ 剣へ戻れる


 回復を確かめるため、二人は一度ずつ精霊剣にもなった。

 最初にシアが極炎となり、セトの右手へ収まった。

 炎の流れも、身体へ返ってくる力も、以前と変わらない。

 人型へ戻った後、ネアも絶光となった。

 原光を吸収し、偏向し、セトの動きへ合わせる感覚も同じだった。


「つながりは残っている」


 セトが言う。


「残ったのか、新しく同じ形でつながったのかは分かりません」


 ネアは自分の手首へ銀青色の線を巻き、流れを確かめていた。


「違うのか」

「結果だけなら同じです」

「なら同じでいい」

「セトは、そう言うと思いました」


「不都合があるのか」

「ありません。ただ、同じ結果へ至ったから同じものだと決めるのは、説明としては不十分です」

「説明が必要な相手がいるのか」

「まず、わたし自身に必要です」


 シアが二人の間へ入る。


「私は私だ。剣にもなれる。問題ない」

「前は、たぶんそうだと言っていただろう」

「あの時は、生まれた直後だった」

「今は?」

「私はシアだ」


 答えは早かった。


◆ 同じ二人か


 村へ戻る道で、ミレナが待っていた。

 両手に布を入れた籠を持っている。


「もう走っても大丈夫なんですか」

「ああ。ネアにも確認された」

「わたしは、走る前に確認しました」

「私は走った後に確認された」

「止める前に走ったからです」


 ミレナは少し笑い、それからシアとネアを見た。


「お二人も、もう大丈夫なんですね」

「問題ない」


 シアが答える。


「少なくとも、身体と役割は安定しています」


 ネアの言い方には、わずかな留保があった。

 ミレナはそれに気づく。


「まだ、分からないことがあるんですか」

「わたしたちが、なぜ記憶と人格を持ったまま次代になれたのかについては、推測しかありません」

「一か月考えても?」


 シアが尋ねる。


「一か月考えたから、推測の形までは整いました」



※第31話「生まれ直した王たち」は全五回です。

続きます。



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/elemental-cross-top/

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