第73話 美帆と真由子
「友達とこうやって花火するの青春ぽくてええな」
「桑原さん、ちゃんと終わった花火はバケツの中に入れてください」
「あれ〜、これ火着かないんだけど」
向こうで溝口、太田さん、桑原さんは花火をしながらわーきゃー楽しそうにしている。俺は何だか疲れたので砂浜に座って休んでいる。
「溝口さんも元気になって良かったです」
「竹之内さん」
竹之内さんは花火を二本とライターを持ってきて花火を片方、俺に手渡す。
「アイツ普段元気そうにしてんのに悩んでたんだよな」
「……、私だって溝口さんに嫉妬しているのに……」
竹之内さんの顔を見ると頬を膨らませている。ハムスターみたいで可愛い。
「峻君、溝口さんと一緒にいる時の方が遠慮がない感じがします」
「まあ、そりゃそうかも……」
アイツと一緒にいると男友達みたいな軽口を言い合えるんだよな。その時間が楽しくてついイジり合いみたいなやり取りしてる。
「私にも遠慮なく色々言ってください!!二人だけの世界を作られると私だって拗ねますよ」
「ええ、そんな事言われてもなあ」
竹之内さんはなんか高貴な感じがしてイジる感じじゃないんだよなあ。そんな事を考えていると竹之内さんの顔に青筋がピクピク動いているのに気付く。これアカンやつだ。
「へえ……」
「いや、でも竹之内さんだってずっと敬語じゃない」
「そ、それはそうですけど。私のは癖というか。お父様の知り合いと会う機会が多くてついこうなってしまうんです」
なるほど、お偉さんって会食とかパーティーとか多そうだもんな。それで敬語がつい出ちゃうと。
「それと一緒!!急に不慣れなこと出来ないの!!」
「むう、では私の事、名前で呼ぶ事だけでもお願いしたいです」
「うっ」
以前、名前呼びだけは恥ずかしいと断ったんだよな。でもそれが望みなら俺だって頑張らなきゃか。
「み、み……」
「……」
竹之内さんは真剣な顔で俺の言葉を待っている。俺はゴクッと唾を飲み込んで息を吐く。
「み、美帆」
「はいっ」
美帆は満面の笑みで俺の手を取る。ビックリしたが余程嬉しかったのか離してくれない。俺達は手を取り合い向かい合う。
「何やってんのよ」
当然の如く、見逃されるはずがない。溝口は俺と美帆の顔の真ん中にぬるっと入り込んで邪魔をする。
「ずるい。私も名前で呼びなさい」
「えっ」
俺が困惑すると溝口が泣きそうな顔をする。お前の方がズルいじゃないか。
「ま、真由子。これで……」
「う、うん……」
俺が言い終わる前に真由子は照れて下を向く。何とも言えない焦れったい雰囲気が流れる。
「ちょ、ちょっと、溝口さん今は私と峻君の時間ですよ」
「そんな時間ないでしょ!!私だって峻とい、イチャイチャしたいんだから」
何故か二人の間で火花が散ってお互い睨み始めた。
「ああ、戸松君これ君が止めな……」
「戸松君、お願いします」
太田さんと桑原さんは「またやってますね」と言いながら二人離れて花火を再開し始めた。えっ、俺に任せて二人だけで遊ばないでもらえる?
「溝口さん、いつも隣の席でイチャイチャしてるんだから我慢してください」
「なっ、そっちは資金力に物言わせてクルーザーとかプラネタリウム行ったりしてるんでしょ!!私だってカップルでプラネタリウム行くシチュエーション憧れてたのに!!」
おお、ヒートアップしちゃってるよ。止めたほうが良いんだろうけど俺が入る隙がない。
「今日だって峻君に優しくしてもらって、溝口さんは甘えすぎですよ」
「言ってくれるじゃん。竹之内さんが凄すぎるから私悩んでるんだよ!!」
「私だって二人の距離が近くて羨ましいと思ってるんですから!!」
いや、これ喧嘩になっちゃいそうだし、無理やりにでも止めなきゃだよな。
「二人共、落ち着いてくれ」
「峻はちょっと黙ってなさい。全てはアンタのせいなんだから」
「そうです。ちょっと待っててください」
「はい……」
俺は弱い。そう感じました。その後、何十分か二人で何か話をしだしたので俺は太田さんと桑原さんの元へ避難する。
「よっこらせ」
「……、いや戸松君しれっとこっち来ないでください」
「二人のとこ、戻った方がええで」
俺は二人に拒絶されてしまったので再び、美帆と真由子の元へ戻る。すると二人で何か笑いながら話をしていた。あれだけ言い合うだけ仲が良いって事だよな。
俺は俺達を照らす大きな月を見上げる。俺達はこの先、どんな関係になっていくのだろう。いや、それを決めるのは俺自身なのだ。俺は二人とどうなっていきたいんだろう。
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