Method30:深淵5
タイトルバックイラスト:西山りょう
その昔、かにがRPGツクール2000で制作したゲームの小説化!
ゲーム版のメッセージや内容を抽出したものを再構成し、西山さんが小説化を担当しました。
エンドレス・ロード関連作品。
https://ncode.syosetu.com/n7077gj/
それから半年が過ぎた。
円と沙良は教会を出て町へ買い物に来ていた。
教会では掃除当番や買い物係りなどが決まっいて、今日は円達の当番だった。
「お姉ちゃん、あのね、ありがとう……」
「何だ? 急にどうしたんだ?」
「私、上に来れて本当に良かったって思うの。寛治さんや夢さんにも会えたし、お友達も兄弟もできた。夢さんのことはとても悲しかったけど。だから、今は本当に幸せで嬉しいの」
「沙良……」
「でも、私一人ではきっとここに来ることもできなかった……。お姉ちゃんがいてくれたから……」
「沙良、それは私も同じだ。私も一人だったならここに来ることはできなかっただろう。私には、守るものが必要だったんだ」
円は沙良をきつく抱きしめた。
この世でたった1人の血縁。
唯一の絆。
本当の名前も知らない自分たちが繋ぎとめる為の大切な絆。
円は何があっても、ずっとこれから沙良と一緒にいようと思った。
「お姉ちゃん、ありがとう。大好き……」
「沙良……」
その時だった。
黒塗りの高級車が円達を包囲した。
一瞬何が起きたのか解らなかった。
バラバラと車から降りてきた屈強な男達が沙良に近付いた。
円の胸に嫌な予感が走る。
(こいつ等の目的はきっと沙良だ!)
(しかし、何故だ? なぜ沙良を狙う?一体これはどういう事なんだ?)
男の1人が紗良の腕を掴む。
「さぁ、お嬢ちゃん、俺達と一緒に来るんだ」
考えている暇は無かった。
円は沙良を守ろうと屈強な男達に殴りかかった。
だが、数が多すぎる。
5、6人倒した時点で他の男に円は取り押さえられてしまう。
殴る蹴るの暴行を受け、円の視界が真っ暗になった。
かろうじて意識を取り戻した時、円の霞む目に遠くへ消えて行く黒塗りの高級車が見えた。
円は沙良を守れなかった。
思えば、あれが全ての始まりだった。




