Method29:深淵4
タイトルバックイラスト:西山りょう
その昔、かにがRPGツクール2000で制作したゲームの小説化!
ゲーム版のメッセージや内容を抽出したものを再構成し、西山さんが小説化を担当しました。
エンドレス・ロード関連作品。
https://ncode.syosetu.com/n7077gj/
上に出て1年近くが経った。
金も底を尽きて行き倒れていたところに、一人の男が円達に手を差し伸べた。
「大丈夫か……?」
とてもあたたかい手だったのを今でも覚えている。
気がづいた時には円達は教会にいた。
助けてくれた人は二階堂寛治という神父で、不幸な孤児を引き取って保護しているのだと言う。
周りを見渡せば円と同じ年の少年、少女から小さい子まで十数人いた。
「ここで、一緒に暮らそう」
その何気ない一言で、そこにいる全員と円達は家族になった。
教会は二階堂寛治とその妻、夢が運営していた。
寛治の考えに賛同するボランティアの大人も多くいた。
そこはとても居心地が良かった。
とても暖かい輪の中にいるようだった。
差別されることも、することもない。
隠し事も無く、まるで本当の家族のように円達は日々を過ごした。
実の両親を知らないだけに、寛治と夢は円達にとって本当の両親のようだった。
ある日、夢は幼い男の子を連れて町へ来ていた。
子ども達が喜びそうなお菓子や食料を買い込み、帰路へ着く途中に浮浪者の襲撃に遭う。
「その手をお離しなさいっ!」
男の子をさらおうとした浮浪者に飛びついて子供を奪い返す。
「子供は高く売れるからよう」
諦めの悪い浮浪者は力ずくで夢から男の子を引き剥がした。
「やめてっ!」
「ママー!」
必死で浮浪者にすがりついた夢は男が隠し持っていたナイフで左脇腹をぐさりと刺された。
「く……っ」
浮浪者の攻撃にも怯まず、夢は男の子の体を掴んで離さない。
「この子は私の子ですっ! 誰か治安局に連絡をっ!」
「もっと刺されたいのかよっ!」
「ママー! ママー! うわぁぁぁぁーん!」
人だかりができ始め、ようやく浮浪者は子供を離してこそこそ逃げ出した。
「ママー! ママー!」
恐怖に泣きじゃくる男の子を抱きしめたまま、夢の意識が遠のいた。
男の子は一部始終を見ていたパン屋のおかみに保護され、血濡れたシスター服の夢は町の病院へと運ばれた。
寛治が連絡を受け駆けつけたときには、すでに夢は意識不明の重体だった。
「主よ、どうかこの者にお慈悲を……!」
寛治の祈りも虚しく、翌日の早朝に夢は天へと召された。
教会の大人も子供たちも深い悲しみに包まれた。
夢はみんなのママだったからだ。
葬儀が終わると教会の裏手の墓地に新しい十字架が建てられた。
皆は毎日夢の墓に野の花を供えた。




