表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
29/47

Method29:深淵4

挿絵(By みてみん)

タイトルバックイラスト:西山りょう


その昔、かにがRPGツクール2000で制作したゲームの小説化!

ゲーム版のメッセージや内容を抽出したものを再構成し、西山さんが小説化を担当しました。

エンドレス・ロード関連作品。

https://ncode.syosetu.com/n7077gj/

 上に出て1年近くが経った。

 金も底を尽きて行き倒れていたところに、一人の男が円達に手を差し伸べた。


「大丈夫か……?」


 とてもあたたかい手だったのを今でも覚えている。


 気がづいた時には円達は教会にいた。

 助けてくれた人は二階堂寛治にかいどうかんじという神父で、不幸な孤児を引き取って保護しているのだと言う。

周りを見渡せば円と同じ年の少年、少女から小さい子まで十数人いた。


「ここで、一緒に暮らそう」


 その何気ない一言で、そこにいる全員と円達は家族になった。


 教会は二階堂寛治にかいどうかんじとその妻、ゆめが運営していた。

寛治かんじの考えに賛同するボランティアの大人も多くいた。


 そこはとても居心地が良かった。

 とても暖かい輪の中にいるようだった。

 差別されることも、することもない。

隠し事も無く、まるで本当の家族のように円達は日々を過ごした。

 実の両親を知らないだけに、寛治かんじゆめは円達にとって本当の両親のようだった。



 ある日、ゆめは幼い男の子を連れて町へ来ていた。

 子ども達が喜びそうなお菓子や食料を買い込み、帰路へ着く途中に浮浪者の襲撃に遭う。


「その手をお離しなさいっ!」

 男の子をさらおうとした浮浪者に飛びついて子供を奪い返す。

「子供は高く売れるからよう」

 諦めの悪い浮浪者は力ずくでゆめから男の子を引き剥がした。

「やめてっ!」

「ママー!」

必死で浮浪者にすがりついたゆめは男が隠し持っていたナイフで左脇腹をぐさりと刺された。

「く……っ」

 浮浪者の攻撃にも怯まず、ゆめは男の子の体を掴んで離さない。

「この子は私の子ですっ! 誰か治安局に連絡をっ!」

「もっと刺されたいのかよっ!」

「ママー! ママー! うわぁぁぁぁーん!」

 人だかりができ始め、ようやく浮浪者は子供を離してこそこそ逃げ出した。

「ママー! ママー!」

恐怖に泣きじゃくる男の子を抱きしめたまま、ゆめの意識が遠のいた。


 男の子は一部始終を見ていたパン屋のおかみに保護され、血濡れたシスター服のゆめは町の病院へと運ばれた。

 寛治かんじが連絡を受け駆けつけたときには、すでにゆめは意識不明の重体だった。

「主よ、どうかこの者にお慈悲を……!」

 寛治かんじの祈りも虚しく、翌日の早朝にゆめは天へと召された。


 教会の大人も子供たちも深い悲しみに包まれた。

 ゆめはみんなのママだったからだ。


 葬儀が終わると教会の裏手の墓地に新しい十字架が建てられた。

 皆は毎日夢ゆめの墓に野の花を供えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ