10 感動!
「だって俺……同調値が殆どゼロなんだ!なのに巨神が動かせるわけ……っ。」
《僕の方が全部変えたから大丈夫だよ。思考型遺伝子を二コと全く同じにしたから、ソレ以外の人間じゃあ、もう僕は動かせない。》
声の主がそういった瞬間、コックピット内にはグラフのような図形が浮かび上がった。
そこには難しい言葉がつらつら書いてあったが、とりあえず分かった文字は【同調値100%】という文字と数字であった。
「同調値……100!??そんな馬鹿な……っ!ブラックの新型人類でも、30が限界値だったのに!」
《こんなの簡単だよ。異才を持つ者達は思念の力……つまり脳の中の波形を変えて周りに干渉する力を使うことができる人種なんだから。
僕はその力が生まれつき強くて、だからこそ皆が恐れて閉じ込められたんだよ。
干渉じゃなく支配するくらいの大きな力だったから。》
絶対的に不可能とされる力、それをあっさりできてしまう声の主に、改めてその脅威さを感じる。
それと同時に、ハイラビッシュの能力についてあることに気づいてしまった。
「まさか、ハイラビッシュの能力は、殆どが元人型だった時のモノ……。」
《御名答!二コは賢いね。多分コイツは火を操る異才を持っていたんじゃないのかな?》
視界はまた変わり、こちらが飛び上がったのに気づいたハイラビッシュが振り向く姿が映る。
すると声の主は、突然《右手にあるレバーを少し引いて、前に出して。》と指示を出してきた。
そのため慌てて座っているコックピットに設置されている両サイドのレバーを握って言われたとおりに動かす。
すると────……。
────ガァァァンッ!!!
なんと巨神の手が動いて、そのままハイラビッシュにストレートパンチ!
メキメキメキ〜ッ!!!と嫌な音がしながら、ハイラビッシュは大きく吹っ飛んでいった。
「なっ……なぁぁぁぁぁぁっ────!!!」
《アハハ〜!よく飛んだね〜!》
楽しげに笑う声の主に呆然としながら、自分のレバーを持っている手を見つめる。
…………は、初めて巨神を動かせた……っ!
─────ジ〜〜…………ンッ!!
軍に入って十年以上。
憧れの巨神を動かせたことにただただ感動した。
「ありがとうございました……。」
《うん、どういたしまして。なんか凄い気持ち良い感覚だね。嬉しいんだ?》
ついついお礼を告げると、声の主も嬉しそうに返してくれる。
だから『うんうん……!』と何度も頷いていると、ハイラビッシュが凄まじい形相で戻ってきたではないか!
この時点でちょっとチビってしまった。
「う、うわぁぁぁぁ!!!」
慌ててレバーをガシャンッ!と動かすと、ハイラビッシュが吐き出してきた火の玉を、まるで飛び回るハエを叩く感じの動作で叩き落とす。
すると地上はまた燃え盛る地の様になったが、手は全く熱くはない。
だから、そのまま連続で吐き出してくる火の玉を次々と叩き落とした。
「うわっ!うわっ!わわわわわっ〜……!!」
《なんか楽しそうなのに、さっきみたいな感覚じゃなくなっちゃったね。焦りとか不安とか?》
当たり前だ!
そう言いたかったが、必死で言えず……とにかく全てを叩き落としていく。
なんか上位層の人達はカッコいい剣とか銃とか持って優雅に戦っていたのに……俺、ただのハエたたき!カッコ悪すぎる!
そのままヒィヒィ悲鳴を上げながら攻防を続けたが、声の主がなにかに納得したかの様《う〜ん……武器か。》とつぶやいた。
するとその直後、コックピット内の画面に、何やら武器のアイコンマーク(?)の様なモノが多数表示される。
《僕の異才を使って武器でも作ってみようか。ちょうどいい材料は一杯あるし。なんの武器がいい?》
「えっ!武器まで作れるの!?」
驚いて声が上げると、声の主は《うん。》とアッサリ答えた。
異才って凄い!なんでもありじゃねぇか!
思わず、ほほ〜う?と感激していると、突然ハイラビッシュは火の玉を撃ち出すのを止めて空に向かって大きく口を開ける。
すると────……。
────メキッ……っ。
…………バキッ!!!ゴキッ!!……メキメキッ〜!!!
なんと喉の奥に見えた沢山の手が外に向かって一斉に飛び出し、複雑に絡まりあっては鋭く尖る剣の様な形へと変わっていった。
まさかアレは……アイツの武器なのか?
「く、口から剣が……。」
《今まで取り込んできたゴミやこの星の人間達を材料にすれば、いくらでも作れるからね。
でも、随分大雑把な作りだな。》
どうやらハイラビッシュは、取り込んだ他の物質の構造を変えて新たな物質を創り出せるらしい。
もうなんでもありだ。
「ハイラビッシュが人を襲うのは、こうやって取り込んで使うためでもあったのか……。」
《んん〜……一番は本能的に『人』だった頃のことを思い出したからかな?
元々、思念だけの状態で他の生物がいる星に到着した後は、そこに住む知的生命体の身体を奪うつもりだったから。
でも、ほら……狂っちゃったでしょ?だからゴミについている残留思念的なモノに反応して取り込んじゃったんだよ。バカだよね。
でも、狂っていても『生きたい』って気持ちを忘れないって凄いね。
僕を実験体として容赦なく使って星を捨て身体を捨てて……そうまでしてそれを望んだ強欲な人種なんだから当たり前のことかもしれないけど。》
声の主からは、非常に軽い感じを受けたが、内容はとても重い……。
どうやらこの声の主を虐げていた宇宙人達は、とんでもない計画を立てていた様だ。
そう考えると、ゴミの島に落っこちたのは幸運だったのか……?
そう考えてしまうくらいの胸糞共に、心の中で『クソッタレ!』と憤っていたら、ハイラビッシュは顔の向きを変え、剣先をこちらに合わせてきた。
────来る!
「────くそぉぉぉ!!死んでたまるかぁぁぁ!!!」
俺は、その剣先がこちらに向かってこようとした瞬間、スクリーンに浮かぶ1つのアイコンに手を伸ばす。
すると、地上に散らばる建物の破片や何かが壊れて飛び出したらしい金属片が一瞬で手元へと集まり、それが形を変え────……巨大な盾になった。
《盾か。いいね。このまま跳ね返してやろう。》
声の主の弾む声が聞こえた瞬間、まさに目にも止まらぬスピードで、ハイラビッシュが剣ごと突っ込んでくる。
そのため俺は巨大盾を前へ。
すると、盾はハイラビッシュの剣を見事に止めた!
だが────……。
「────う……っ……うぅぅぅ〜っ!」
貫けれていないが、それでも強い衝撃で手は震える。
戦闘訓練もなしに巨神を動かすなんて……正直、その負荷になれていないからめちゃくちゃキツイ!
それでも盾は離さず耐えていると、そのままハイラビッシュは、軽く顔を引き、そのまま剣の激しいラッシュが始まった。




