ゴールデンウィーク
「皆様、お久しぶりでございます。
黄金珠館 館長 福笑 来門と申します。
この前はご来店ありがとうございました。
あの後、青年は高校を転校し親友の元へ向かったそうです。
おや? なんでそんなことを知っているかって?
何故でしょうね…私も深く考えた事がありませんでした。
ところで皆さんにひとつ質問がございまして。
"自分"について考えたことがありますか?
いきなり言われても分かりませんよね。
既に答えを持ってる方も、まだ答えを持ってないよという方も参考程度にご覧いただけると、もしかしたら視野が明るくなるかもしれません。
お心準備が出来ましたら…皆さんから見て左手、カウンター横の扉をお進み下さい。
それでは皆さま、ごゆっくりご堪能ください」
___
なんでこうなってしまったんだろう。
朝起きて、働いて、理不尽に怒られて、上司からはセクハラを受ける………
高校卒業して五ヶ月。
社会人五ヶ月目、最初はこんなものだと思っていた、お母さんの話やテレビの人の話、ニュース等の内容でしか"社会"と言うものを知らない私にとって、何が当たり前で何が当たり前じゃないのか分からなかった。
でも、周りの同期や友人達から話を聞くと………私とは全然違う。
理不尽に怒られることも無ければ、セクハラを受けることも無い、残業が続くことも無ければ定時で上がれる。
けれども、私はその真逆。
本当に真逆………
こうならないように、出来るだけ人生が上手くいくように……一生懸命動いてきた。
周りがやらなかった事をしたり、馬鹿にされることだってあった学生時代。
順風満帆と言えるだろう学生時代だった、友人との関係も良好。
先生との関係値もあった、勉強も頑張って頭も良くなった……運動は大して成長しなかったが、それでも出来る限り頑張った。
それなのに、バカで自分勝手で他人を見下して居た奴らの方が楽しそうにしている。
大学生活が上手くいっているからなのか、社会人生活が上手くいってるかなのか、分からないけど気に食わない。
あんな奴らが私よりも楽しそうにしているのが気に食わない。
好き勝手やって迷惑かけ続けて、周りからも嫌われてきた人達が楽しそうに来てるのが気に食わない。
暴力沙汰を起こして休学・退学になった奴らが私よりも楽しそうにしてるのが気に食わない。
___私は私が気に食わない___
自分を殺して、今まで生きてきた。
言われた事はイエスで返した。
人に好かれ続けてきた。
意見を殺して周りに合わせて……流されつつ、たまに芯を見せて人の心を掴んできた。
親、先生、親戚、友人……みんなから好かれた。
そうなれるように努力した。
高校卒業までそれが正しいと思っていた。
人から好かれれば何かと事が穏便に進むし、相手からしても悪い気はしないはず……つまりお互いがWinWinの関係。
自分をころし続けた結果……私はどれが本当の私か分からなくなった。
家族といる時、友人と話している時、遊んでいる時、寝ている時、仕事をしている時……考えれば考えるほど私は自分が分からなくなった。
だからなのだろう、自分が分からなくなり意見を殺し自分が無い。
そうなれば、ストレス発散に丁度いいだろうしセクハラだってし放題………
絶対に反論してこない、絶対に嫌がらない。
そんな相手が居るならば寄って集る。
___なんでこうなってしまったんだろう。
私は皆と私の為に"いい子"で居続けただけなのに、なのにどうして……もう、いっその事死んでしまった方がこの悩みも無くなるのだろう。
人ケガ少なくなった電車に乗り、スマホもいじらす窓の外をただ眺め続けた。
海が見える。飛んでる鳥が見える。海を走る船が見える。
自由になりたい。もう少しだけもう少しだけ私は…………
「……んぅ…ん? 終電か、寝過ごしちゃった…仕方ない、降りよう」
景色を眺めながら浸っているといつの間にか意識を手放してしまっていた。
最近は…というか社会人になってから残業続きでろくに寝てなかったから、いつかは寝過ごすと思っていた。
だからなのか、変に慌てることはしないで済んだ。
電車を降りると、自然豊かな駅だった。
周囲は草木で囲まれていて、けれども手入れはされていて整えられている。
生きていてここまで綺麗に見える駅は初めて見た。
そう感じる程自然豊かで良い駅だった。
興味本位で駅を出ると一本の道が伸びているのに気が付いた。
人が歩けるスペースは十分にある。
むしろ通ってくださいと言わんばかりの道だ、普段私なら絶対に通る事はしないし、駅から離れることもしないけど今日だけは、今だけは何故がその道を歩いていた。
まるで何かに導かれているように、私の思いとは裏腹にどんどん一本道を進んでいく。
すると、一軒の建物が見えてきた。
家…にしては大きい建物で、私は吸い寄せられるようにその建物に近づいた。
扉の前に立ち扉をノックする……しかし返答は返ってこない。
それでも、私は扉を引いた。
「おや? これはこれはご新規さん。
黄金珠館 ゴールデンウィークへようこそ」
扉を開けると、綺麗なベルの音が聞こえるのと同時にカウンターに居たおじいさんが話しかけてきた。
「あの、ここって一体……」
「ここは…簡単に言うならば貴方が知りたがっている答えを知れる場所ですよ」
「私が知りたがっている事を……知れる場所…」
「えぇ、その通りです。
貴女が知りたいならどんな事も知ることが出来ます」
おじいさんは私の好奇心を掻き立てる様なことを言う。
正直に言う……にわかには信じ難い、
何故なら今の私が知りたい事は私しか知らないはずだから、本当の自分など相手に分かるはずがない。
ましてや、今初めてあった相手なら尚更。
「その顔は、信じていないようですね?」
「……いえ、全くそんなことはないです」
「なるほど、でしたら実際にお試しになるのが早いかもしれません」
「試……す?」
おじいさんは一度カウンター内にある扉から裏に言った。
微かに空いた扉の隙間から、紙を複数枚用意する音がこぼれて聞こえてくる。
おじいさんは一分程で戻ってきた。
その手には、紙とペン……そして普通ならあまり見ることが無い水晶が添えられていた。
水色の水晶。
「さて、準備が整いました。
この紙に今貴女が悩んでいる事を書いてみてください。おひとつでも構いませんし、悩みの大小は関係ありません……思いつく限り」
おじさんは私にペンを手渡した。
私はペンを受け取った。
でも、ペンが進む事は無かった……正確には何を書けば良いのか分からなかった。
悩み等尽きるはずがない、普段なら大小構わず沢山溢れてくるはず。
「焦らなくて結構ですよ? 時間はいくらでもあります。気を使う必要はないですよ」
おじいさんは何かを透かしているかのように私に伝える。
私はそこで初めて気が付いた、私の手が止まっている理由、悩みが思いつかなかった理由に。
それは、相手に気を遣わせている…相手の時間を奪っている……無意識下に行われていた相手を考える行動、気分を害さないようにしないといけないという自分勝手の正義間。
それが私の思考と動きを止めていた要因。
「そうですね……では、こうしましょう。時計の針が一を刺したらそこでやめにしましょうか」
「…………」
「期限があれば気にする必要も無いでしょう?」
おじいさんはそう言い残すとカウンターを離れて部屋の掃除をし始めた。
その様子や提案に困りながらも気づいたら私の手は警戒に走っていた。
紙に書いているのは、悩みのはずなのに軽快に愉快にペンが…手がまるで意志を持ったかのように動いていた。
しばらくすると時計の針が一を刺した。
その瞬間、音楽が響いた。
私は三分前くらいからペンを置いて時間が来るのを待っていた為音楽が急になってもそこまで驚きはしなかった。
音楽が鳴り止むと書いた文字達が金色に光り紙から剥がれていくかのように宙に舞った。
「わぁ………」
「おやおや、もう時間ですか。やはり時が経つのは早いですね……」
私は宙に舞った文字達を目で追う。おじいさんはその間に何かの準備をしている。
少しすると舞った文字達は宙でひとつにまとまり、紙に向かって落下した……そして一言だけそこに印されていた。
「枯死……?」
「なるほど、なかなか深刻な問題なのですね」
「えっ? …これの意味が分かるんですか?」
「どうでしょうね? これは貴女の悩みですから貴女にしか分かりません。ですが、字を見ると楽な悩みでは無いことは分かりますから」
おじいさんはそう言いながらカップに珈琲を注ぎ、私の前に置いた。
私は無意識にその珈琲を口にしてしまった。
珈琲が喉を通ってから気が付いた、見ず知らずの人の家? に上がって、そこで出された珈琲を口にしてしまった。
普通に考えて安全なはずがない。
表情には出さず、密かに焦っていると……
「こちらの注意書きをご覧下さい」
「えっ? ……………」
紙を渡された私は、とりあえず形だけでも取っておこうと文章に目を通す。
その内容は、衝撃的な物であり一見ふざけている様にすら感じるが、さっきの文字が宙に舞った出来事を見た後だと、この注意書きの内容が真面目な物だと理解できた。
「内容がご確認できましたら、私に着いてきてください」
「あっ、はい」
私は注意書きの紙を持ったままおじいさんの後をついて行く。
カウンター左手にある扉を進むとさっきと似たような部屋が広がっていたが、部屋中央カウンター上に書いてあった文字が変化していた。
しかし、元の字がなんだったのか思い出せない。
確実に確認していたはずなのに……
「今から貴女がご覧になるのは、ある女子高校生の記憶と男子小学生の記憶になります」
「女子高生と小学生の記憶……?」
「はい、その通りでございます」
おじいさんはそう言うと、水色の水晶の中に金色に輝く真珠をひとつ中に転がし入れた。
真珠は水晶の中を円を描くように回転し中央に収まった。
その瞬間私は眠気が一気に襲ってきた。
抗うことすら出来ずに、意識が遠のいていく……
___電車の中……満員の電車の中に私はいた。
見知らぬ制服を着用して電車に揺られている、懐かしい感情になるが夢と現実の区別がつかないほど、ふわふわしていてかつ鮮明な景色が広がっている。
夢を夢だと認識した時に、夢の中を好きに動けるみたいな事をよく聞くが実際はどうなのか、よく分からない。
けど、ひとつ言えるのは今の私は自分の意思に合わせて体を動かすことが出来ていないという事。
感覚でいえばVRで映像を見ている状態に近い気がする。
少しすると電話が停車した、するとこの女子高生はカバンの中から一冊の単語集を取りだし、流れるように二人席に腰掛けた。
私はきっとこれがこの子の特等席なのだと理解した。
二駅過ぎるとようやく目的の駅に着いたようで女子高生は電車を降りた、ホームを歩いていると周囲の生徒や先生たちがみんなこの女子高生に向かって挨拶する。
気分はまるでお姫様の様だった。
しかし胸の奥底で青白い何かが漂っているのが分かった。
しばらく歩き正門前まで来ると、友人であろう人達が女子高生の隣に立ち共に歩き出した。
話している内容は一般的なもので、テレビの話やアニメ、アイドルのような当たり障りのない会話をしていた。
昇降口まで行くと、見るからに偉く、怖い学年主任らしき男性の先生が時代にそぐわない物を持ち立っていた。
話を聞くと生徒会に勧誘されているようだ。
一週間後に生徒会選挙があるから出てくれと懇願されている。
……その様子を見て私は、どこか昔の自分を見ているようで心が無性に痛くなった。
教室に着くと彼女はクラスメイト全員から挨拶をされていた。
このクラスの中心人物なのだろう。
___朝のホームルームが始まると文化祭の話をされた。
男子生徒も女子生徒も"文化祭"という単語が聞こえただけで皆騒ぎ出した。
しかしこの女子高生だけは騒ぐどころか、むしろ落ち着いている。
だが決して騒いでいる周りを見下している訳でもないのが伝わった、きっと何かしらの理由があるのだろう。
黙って話を聞いていると、次に話に上がったのが"文化祭実行委員"だった。
教師が、やりたい人・手伝ってくれる人と募集をかけるが一切手は上がらない。
さっきまでの盛り上がりが嘘かのように静まりかえる。
すると、一人の女子生徒がこの女子高生の名前を上げ推薦という名の押しつけを始めた。
その押しつけに最初に乗ったのは、この女子高生の友達だった、次に周りの女子生徒、その次に男子生徒の順に波紋は広がった。
教師もこの女子高生に向かって、お願いできないか?、なんて言うし始末。
……なんとも都合のいい話だ、騒ぐだけ騒いでめんどくさい事は押し付ける…学生の、いや②人の悪いところだろう。
そして何より害悪だと思ったのは、全員で取り囲んでどこにも逃げられないように道を塞ぎ、この女子高生の答えは半ば強制的に"YES"しか存在しなくなる。
女子高生がわかりましたと返事をした。
その時また胸の奥に青白い何かが立ち篭める、さっきよりも多く深く濃く。
その後この女子高生の生活を見ていると、相当周りからの信頼が厚く言わば優等生という印象を受けた。
放課後になると、女子高生は教室に一人残り教師から頼まれた文化祭実行委員の仕事を始めた。
友人と思わしき人物達は、逃げるようにそそくさと早歩きで教室を出ていった。
ばいばいの一言なし…薄情な奴らだと感じた。
女子高生は誰もいなくなった教室の中一人、部活動をしている生徒達の声を聞きながら黙々と仕事をこなしていた。
そこから三十分程経ち下校終了時刻が迫っていた、見回りの教師が女子高生に気づく。
「おっ、まだ居たのか。早く帰りなさい」
教師はそう言うと場を離れた。
きっとこの女子高生も私と同じ事を感じたはずだが、声には出さずに愛想良く返事をした。
校門まで歩く。
その間、胸の奥の青白い何かが濃くなっていくのが分かる。
次第にその霧はこの女子高生の体に、私の意識に張り付くかのように取り囲んでいく。
瞬間、女子高生の身体から力がスッと抜け壁にもたれ掛かるように座り込む。
息遣いが荒くなり汗がふきでる、視界もぼやけ、声すら出ない…………呼吸が浅くなり瞬きひとつ出来なくなった、焦りを感じつつも何も出来ない。
本格的に"死"を意識した。
次の瞬間、誰かわからないが声をかけ手を差し伸べてくれる人が居た。
男子か女性か、子供なのか大人なのか、若いのか老いているのか、声や見た目から判断できる情報から導き出すことは、今のこの女子高生と私には出来なかった。
しかし、何も出来ない以上抗う事も何も出来ない。私と女子高生はそのまま流れるように連れて行かれた。
次に目を覚ますと私は知らない部屋にいた。
部屋を見る限り、女の子の部屋だ。
女性と言うよりも女の子の部屋、身体を起こすのと同時に部屋の扉が開き一人の女の子が入ってくる。
私はその子が着用している制服に見覚えは無かったが、この女子高生には慣れ親しんだ物なのか制服に見覚えがあったようだ。
話を聞くと、この女子高生が倒れている所をこの女の子が発見し父親に運ん貰ったとの事。
なおかつ、倒れている女の子が誰か分かってる状態で手を差し伸べてくれたらしい。
助けてくれた女の子は三つ年下の中学三年生らしい。
そして、この女子高生と助けてくれた女の子が来よっているのは珍しい中高一貫校らしく、制服に見覚えがあったり、誰が倒れているのか分かったりしたのかが解明された。
女の子は優しい声で何があったのかを尋ねてきた。女子高生は最初、単純に体調が悪かったや最近寝れてない等の事を話した。
もちろん嘘では無いだろうが、私はそれだけが理由ではないのを薄々感じ取っていた。
すると、女の子が悩みを聞いて欲しいと女子高生に言った。女子高生は、助けてくれたんだしどんどん話してと言い承諾。
「先輩…私は言ってしまえば優等生なんです。勉強も出来ますし運動も出来ます、クラスみんなと仲良いですし先生とも仲良しです。
でも、それがどんどん辛くなってしまって……なんて言うんでしょう……期待? のようなものだったり意外って言葉が辛くて仕方ないんです」
一呼吸置いてから女の子は再び話し出した。
「この前ハンバーガーを食べていたら友達から、ハンバーガー食べるんだ意外! って言われて……黙っちゃったし。
それに先生達だって、この問題が分からないのか優等生も苦手なものがあるんだなぁって笑いながら言うんです」
女の子は涙を流すのを堪えながら続きを話した。
「私だって女の子なんです、ミスもしますしハンバーガーだって食べます。でも、みんなの中ではそうじゃなくて一つでも"そうじゃない一面"を見せたら意外とか色々言われるのが……辛くて……」
女子高生はいつの間にか女の子を抱きしめていた。
女の子の話はまるでこの女子高生を見ているようだった、完璧故に感じる孤独や偏見。
まさにこの女子高生も感じている最中だった。
数分すると女子高生も自分の事を話し出した。
女の子が話た内容と似た事で悩んでいる事や人を頼ることが出来ない事……色々話した。
気づくといつの間にか女子高生の頬を涙が流れていた、本人も無意識のようだ。
何度涙をふいても流れてくる。
次第に声が震えだし感情が露になりだす、今までひたむきに優等生を、完璧を作り上げてきた。
この学校に入学した時からずっと……
だからこそ今、自分よりも幼い後輩が自分と同じ悩みを持っていた事がきっかけとなり隠し続けてきた感情が押し寄せていた。
女子高生が作り上げてきた完璧と言うなの、都市はたった小さなきっかけ一つで押し寄せてきた感情という名の波によって次々と壊されていく。
完璧で作られたビルも家も公園も道路もなにもかもが洗い流されていく。
その波はやがて彼女のプライドと言うなの堤防を超え涙に変わり……完璧とは程遠い顔で泣き続けた。
女の子はそんな様子の女子高生を抱きしめながら、子供をあやす様に背中を叩き続けた。
溢れた感情は止まらない。
嬉しいものでも辛いものでも怒っているものでも例外じゃない。
しばらくして、一旦落ち着いた様子の女子高生は一言ありがとうと言った。
___女の子の家から帰っている途中、女子高生は今日の出来事と今までの事を振り返っていた。ゆっくりと歩きながら女子高生は何か覚悟を決めたようだ。
スマホを取り出し、クラスグループにあるメッセージを送信した。
女子高生は吹っ切れたように良い顔をしながら、自身の家まで一直線に全力で走り出した。
すれ違っていく通行人達に変な目で見られているのが伝わってくるが、そんな事など気にもとめずにただただ走り抜けた。
次の日の朝、女子高生はいつも通りの電車には乗らずに少し遅めの電車に乗りこんだ。
学校に着くと昨日よりも騒がしい。
その原因はこの女子高生のクラスにあった。
女子高生が教室に入ると、血気盛んに話し合いが行われていた。
話し合いの内容は、『中高一貫校という特色を活かした文化祭を!』という内容で、そして何よりもその話し合いの様子をカメラが捉えていた。
昨日、女子高生がグループに送ったメッセージは非常にシンプルなもの。
「文化祭実行委員として、今までに無いものをやろうと考えています。
中高一貫校である特色を活かしどんなものが良いのか皆さんで考えましょう、またその時の話し合いの様子はカメラに収め文化祭の映像に使われる予定です」
この内容は彼女が導き出した答えだった。
完璧で居続けた彼女は人をずっと頼りたかったが頼ることが出来なかった、その理由はプライドがあったから。
自分がそうなりたくてなったのだからと言う文からくるプライドが邪魔をしていたのだが、
昨日の出来事で彼女の都市は無くなってしまい。
残っているのはプライドという堤防のみ。
だから彼女はあくまでも企画という形で、隠れて助けを求めたのだ。
プライドだけが残り更地になった土地にまた新しく街を作り上げるために、前回の反省を生かし前の都市よりも良いものにしようと考えた。
プライドを保ちつつ新しい自分に変わるきっかけが突然やってきた。変える変わるは簡単なことでは無いが、きっかけはいつ来るかわからない。
女子高生は自分の席に鞄を置くと、すぐに女の子がいる中等部に向かって走り出した。
周りの生徒達は声に出して驚いたりしていた。
もちろんその声の中に困惑を顕にした発言もあったが、いちばん多く耳に届いたのは………
「なんか、楽しそうじゃない?」
この言葉だった。
中等部にたどり着き女子高生は元気よく、今までのキャラを無くし。
「おはよ! ちょっと来て!」
「えっ! はい!」
女の子の手を引いて、屋上に向かって走り出した。
女子高生と女の子は似たもの同士で、お互いの本根を打ち明けた仲。
それは二人にとって初めてのことだったの、だから彼女は女の子の手を取ってこれからも一緒にいれるように、屋上で固い握手を交わした。
「先輩と握手するの……なんだかはずかしいですね」
ふたりは親友と呼べる程仲良くなり大学も同じ所に進学。
社会人になるとバラバラになってしまったが、それは一、二年間の話……数年後ふたりは再開し一緒に親友としての時間を過ごしたらしい。




