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黄金珠館  作者: ビードロくん。


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ゴールデンウィーク

幸せとはなんだろう……


一人になると、ぼーっとすると、ふとした瞬間に死んだ後の事を考えてしまうのと同じように、僕は今日も考える。


周りと自分を比較はしない、だってそれが基本的に必要ない事を僕は知ってるから。

もちろん、順位や成績、点数のような可視化されるものに関しては比較した方が、より良い結果になる事があるだろう。

だが、日常生活において必要無いことを知っている。


それを、理解した上で幸せとは何なのだろう。

比較はしない…が、自分と他人の幸せの違いを知りたい。

こんな疑問は、ある夏のゴールデンウィークに経験した事が全ての始まりだった。

そして、ひとつの答えを僕は見つけることが出来た。


共有することの無い、誰にも伝えない、僕だけの幸せの形……いつか同じ人とで会えたらいいな。



二年前、高二のゴールデンウィーク。

この週間に僕は変わったのかもしれない。



「やま〜、明日からのゴールデンウィークって部活あるっけ?」


「ゴールデンウィークだぞ? あるに決まってるだろ。全く、先生達も休んでくれたらいいのに」


「分かるわ、決して部活したくないとかじゃないけど、ね? 休んでもらいたいよね?」


「そうそう、じゃ。俺こっちだからさいならー」


「おうよ!」



僕は同じ部活に所属する友人と別れた。

駅の乗り場が違うので、電車が来る時間ギリギリまで話す事は出来るのだか、僕と友人は部活仲間でそこまで仲良くない。

だから、ホームでは話さない。


きっとこういう人間関係の人達は多くいるだろう。いや、むしろそういう人達の方が圧倒的だろう。



「…………明日から…ゴールデンウィークか、部活もだけどダルいなぁ……バイトも部活も休むか……良いよな、ゴールデンウィークだし」



スマホもいじらずに椅子に座り、上を見上げる。

足元には朝からずっと一緒にいるリュックを置いて、周りを見渡すと時間が遅いせいか人の数が自分含め二、三人しかいない。



「人少ねぇ……そりゃそうか、明日からゴールデンウィークってんなら早く家に着いて、夜更かしとかやる事やりたい人達の方が多いか…………」



そんな事を考えながら、電車がホームに来るまでの一時間ぼーっとしていた。

田舎の電車は遅い、一時間に一本、二時間に一本なんてよくある話だ。


一人ぼーっとしてる顔を想像すると、飛んだマヌケな光景に見えるだろう。



「___ギャハハ、お前それはやべぇよ」


「____いいだろ? あの女体だけはいいからな」


「__おいおい、駅なんだからせめてもう少し声量落とせよ」


「あっ、わりぃわりぃ___それでよー!」


「落とせよ」



階段をあがってきたのは、三人組の男子大学生だった。

注意されたからなのか声量は若干抑えられていたが、それでも人が少ないホームに響くには十分だった。



「うるせぇな………あれって幸せなのかな? お酒飲んで、馬鹿やって、公共の場に相応しくない会話して、楽しいのかな…………どうでもいいや」



騒いでいる男子大学生の声をBGMに電車を待った。その間ずっと、上をみて空を見続けて視覚に一切の情報を入れなかった。


少しすると、電車が到着したの少し大きく耳にうるさいブレーキ音が響いた。



「……帰ろ」



足元のリュックに置いておいたリュックを背負い、電車の扉が開くのを待つ。

しかし一向に開く気配がなかったり



「あれ? ……いや、方面は同じ…到着時間も合ってる…車両がたまたま違うのか」



いつも乗っている車両とは違い、自分で扉を開閉するタイプの車両で少し戸惑ったが、特に気にすることは無く車両に乗り込んだ。


いつも通りの座席に座ろうとするが、自分以外に人が全く居ないことに、驚いた。



「この時間で人が一人もいないのは珍しいな……ん? ほかの車両も誰もいない見たい…まぁラッキーって捉えておこうかな」



少なくとも僕が乗っている車両には自分以外誰も居ないことを確認した上で、贅沢に座席の真ん中に座り、再び外の景色をぼーっと長めながら最寄りに到着するのを待つ。



〈あ〜、まもなく列車が停車いたします。お降りる際は、お荷物のご確認をお忘れなくお願いします〉


「……もう着いたのか、ぼーっとしてると意外とすぐに着くんだな……次からスマホは弄らないでおこう」



扉の前に立ち、電車が駅に止まるのを待つ。

ブレーキが掛かり遠心力を体で感じながら、完璧に車両が止まるのを感じてから、ボタンを押し電車を降りた。


いつも通り、電車を降りた後に少しだけ椅子に座るのが日課なのだか、いつもの場所に椅子が確認できなかった。


流石に違和感を感じ、顔をあげると僕が居た場所は駅のホームではなく……周囲が草木に囲まれた場所だった。

そして目の前には一軒の家が建っていた。



「……黄金…珠館………ゴールデンウィーク……」



この館が僕の幸せの形を教えてくれた、きっかけの場所だ。



電車は来ない。

いくら待てど電車こない、あれから二時間が経った。駅名が書いてない廃れた駅のホームで、一人いつ帰れるのかという不安に駆られながら、ただひたすらに待っていた。


春だと言うのに、冬を感じてしまうほどの冷たい風が吹きだし、三十分。

さすがにキツくなった僕は、後ろにある怪しい建物ゴールデンウィークに足を踏み入れる事にした。



「いらっしゃいませ」


「あっ、どうも」


「今日はどいった、ご要件で?」


「あの、実は電車を間違えて降りてしまって……」


「おやおや、そうでしたか。ですが、あなたは選ばれてしまったようですね」


「何にですか? それよりも、次の電車はいつ来るんですか?」



ゴールデンウィークの中にいたおじいさんは、僕の質問に答えずに、部屋の奥に行ってしまった。

しかし、すぐに戻ってきた。

その手には、水色に光る水晶の様なものを持っていた。



「あの、電車……」


「こちら数ある真珠の中から、あなたの直感で選んだ物を私に渡してください」


「えっ? いや、あの電車___」


「あなたには知りたいことは無いのですか?」


「……知りたい事?」



おじいさんの言葉に疑問符を浮かべていると、次はカウンターのしたから紙を取り出した。



「あなたが知りたい事をここに書き出して見てください、そうすればもしかすると…貴方が本当に知りたいものが見えてくるかもしれません」


「……知りたい事を…いや電車は___」


「真実から目を背けるのは行けませんよ? それにまだまだ汽車が来る時間ではありませんから」


「……分かりました、ここに書いていけばいいんですよね?」


「ええ、お時間はいくらでもかけて頂いて大丈夫ですよ」



電車が来ない間に特にやる事もない僕は、ペンを握って紙に知りたい事をなんでもいいからとにかく書き出した、部活の事やテストの事…ゲーム攻略や恋愛……色々書き出した。


すると、書いた文字達が金色に光だし紙から剥がれていくかのように宙に舞った。

おじいさんはその光景を少し確認し、コーヒーの用意を続けた。

僕は、宙に舞った文字達を追うようにして顔を動かした。


金色に光る文字はとても綺麗に見えた。

次の瞬間……舞った文字達は一箇所に集まり、僕の手のひらに落ちてきた。



「これは……」


「その紙を開いて見てください」


「はい、わかりました」



手のひらに落ちてきた紙を開くと、そこには一言だけ書いてあった。



「…幸せとは……?」


「おぉ、なかなか難しい事を知りたいようですね」


「えっ? ……もしかして、これが僕の今知りたい事ですか?」


「そういう事です、あなたもすぐにそれが理解できるという事は思い当たることが浮かび上がって来たようですね」



図星だった。

幸せ……それは、僕がしばらくよそ見し続けた…テストよりも難しい事だった。



「本題に入る前に、あなたの事を教えてください。幸せを知りたい理由を、きっかけを」



何故だろうか、僕はおじいさんにずっと感じていた事、悩んめいた事を話した。

一人でいるのが好き、なら一人でいるのが幸せなのか。

恋人がいる人達が羨ましく思うという事は、今は幸せじゃないのか、そんな事を知らず知らずに考えて事、水に流されたかのように全てを話していた。


おじいさんは僕の話を馬鹿にする事も否定する事もせず、話終わるまで待ってくれていた。


話の途中で飲んだコーヒーはブラックのはずなのにとても甘い様に感じた。



「なるほど、確かに幸せの形は分からないものですよね」


「はい…ふとした時に考えてしまう事が多いですね」


「そしたら、本題に入りましょうか。先程もお話した通りこちらのショーケースに飾ってある真珠の中から、あなたが直感的に気になる物、惹かれるものをお選びください」



僕は、カウンターショーケースに目を落とし、特に惹かれる真珠を三つまで絞った。

それを伝えると、おじいさんは中からその三つを取り出してくれた。


ショーケースから取り出された、真珠はガラス越しに見るよりもより綺麗に輝いた。



「それでは、こちらにあなたの名前と生年月日、生まれた土地を記入してください。それと同時に身分証明書の提示をお願いします」


「……わっ、りました…」


「書き終わりましたら、こちらの注意書きをご覧下さい」



指示された内容を書きながら、学生証を提示し、注意書きに目を通す。

そこには、興味を示さざる得ない内容が複数書いてあった。

金色の真珠の正体や記憶を閲覧出来る事等目を引く事が多くあった。



「これって……一体どういうことですか?」


「そのままの通りでございます。しかし、今回貴方様は初回ということで、こちらの三つに限り相手の情報を記載しないでご覧することが出来ますが、どうしましょう。今ならまだ、引き返すことができますが?」



おじいさんは手袋をはめた手で真珠を持ち上げながら問いかけてくる。

正直迷った。

なぜなら、他人の幸せを覗いた時自分がどれだけ惨めになってしまうのか……

また、それを味わってしまった時よからぬ事をなしてしまうのではないか……


色々考えた。

結果……僕はおじいさんの誘いを受けた。



「わかりました、それでしたらこちらの特製サンドイッチとコーヒーをお飲みください。

こちらは記憶を覗いた際、あなた自身に起こる違和感を軽減する作用がございます」


「わかりました」


「お食事中に話して起きたい事がありまして、今回貴方様が選びなさった、三つの真珠の説明を軽くさせていただきます」


『真珠一つ目、乗り越える幸せ。

こちらは同い年学生の記憶になります。


二つ目は、二度と来ない幸せ。

こちらは大学を卒業した女性の記憶になります。


そして最後三つ目は、流されぬ幸せ。

こちらは大学一年生の男子学生の記憶になります。』



おじいさんは一つずつ丁寧に簡潔に教えてくれた。

出されたサンドイッチとコーヒーを飲み干し僕はおじいさんと向き合った。



「準備は良いですね?」


「はい、お願いします」


「三つの内どれを最初にご覧になりますか?」


「…………僕と同い年の子でお願いします」


「わかりました」



おじいさんは僕の希望を聞くと、ひとつ真珠を手に取り、一番最初裏から取ってきた水色の水晶の中に転がり入れた。


金色に輝く真珠は、水晶頂点の穴から水晶内部に広がっている道を転がり中央に到達すると、水色の水晶は金色に変わりだした。



「おぉ…………」


「準備が整いました、それではこちらの水晶に触れてください。そうすると、あなたの意識はあっという間に水晶の中に吸い込まれていきます」


「水晶に触れると、他人の記憶を覗ける……」


「えぇ、その通りです。最後に今ならまだ引き返す事が可能ですが?」



おじいさんは準備が整った状態で最後の選択肢を与えてくれた。

けれども僕の中では既に答えは決まっていた。



「大丈夫です。この目で幸せの形を確かめてみたいと思います」


「わかりました、それでは水晶に触れてください」



僕は水晶に触れた。

その途端、視界が金色に光だし眩しく目を閉じた。



「行ってらっしゃいませ……」




___瞳を開くと僕は見知らぬ土地にいた、いや正確にはどこにいるのかは分かった。

ここは体育館だ。

けど、僕が知らない体育館だ。


すると、体が勝手に動き出した。

パイプ椅子から立ち上がり、目の前にあるコートに向かって歩き出した。

応援する歓声が響き、その中で監督らしい人やチームメンバーである人達と会話をしていく。


僕は違和感を感じた。

目線や言葉が自分の意思とは関係なく勝手に動く、しかしその違和感はをどういうものなのかすぐに理解した。

他人の記憶を見ているからだった。


彼は部活人間らしい。

成績……頭は良くないらしいが運動というカテゴリで多大なる成績を収めているようだ。

そしてたった今、その多大なる成績のひとつになりうるバスケットボールの試合の最中。



これが、彼が幸せを感じる瞬間なのか……



彼がコートに入ると体育館内全体に歓声が上がる。応援の声もより一層響き渡った。

その様子に相手チームは、萎縮せざる得なかった。

流れは完全に彼のチームにある、点数は一点差で負けているが、流れが確かに来ている。


試合が始まった。

彼は、チームメンバーに指示を出しゴール下に陣取った。

一進一退の攻防を繰り返し試合は順調に進んでいた。

すると突然体に衝撃が走った。

痛み、確かに僕はそれを感じた。


さっきまでの歓声が嘘かのように変わり、悲鳴にが轟いた。

彼の周りにチームメンバーや顧問の先生、相手チーム、様々な人達が寄ってきた。


聞こえてくる話をよく聞くと、バスケットボールが突然破裂したらしく、しかも運が悪い事に彼がキャッチした瞬間にだ。

正直に言ってバスケットボール…というかスポーツ全般ルールが曖昧だが、素人でも分かる事はスポーツマンの体から健康が無くなることは、とても悲惨だと言うこと。


その後彼は病院に行き詳しく検査した結果……今回の件だけではなく、今までの体の酷使の結果高校卒業まで運動する事が禁止されてしまった。


その事実が医者から告げられた次の瞬間、視界が色を失い灰色の世界に変わった。

比喩だと思っていた事を実際に経験した。


彼は未来が絶たれたと失望の念に駆られていた。

彼の記憶を覗いている僕にもその気持ちが次々と流れてくる。

他人なのに他人の気がしなくて、僕と彼は先が見えなくなった。



あの試合から二日後。

彼は一人でいた、最初こそ大丈夫? 等の声が掛けられたが次第に話題は薄れていった。

部活の方は彼が居なくなったことで、新たな選手の育成に力を入れこの二日で急成長を遂げる選手が複数人出ていた。


"いらない子"


それが今の彼だった。



学校にいれば、友人といれば、相手に気を使わせてしまう。

勉強もできなければ、取り柄の運動も出来ない。

そうなれば行き着く先は一つだけ、不登校だ。



そこから更に三日後。

土曜日の朝、彼はせめてもの気晴らしで散歩をしていた。

運動は良くないと言われていたが、散歩なら問題がないらしい。


最寄り駅から二駅先の場所で歩いていると、一人の少年に話しかけられた。



話を聞くとその子はあの時の相手チームのキャプテンの弟さんらしい。

弟さんと話していると、相手チームのキャプテンがやって来た。


話をした、世間話から恋愛相談……色々話した。

久しぶりに味わったその感覚に、目頭が暑くなったが、突然キャプテンさんが彼のチームの話をし始めた。

最初こそ、怪訝そうな表情を浮かべていたが次第に彼はその意図を理解した。

キャプテンさんは彼に自分自身の必要性を遠回しで教えていたのだ。



しかし彼の冷めきった心に届く言葉など、一言二言程度で限界があった。

すると、キャプテンさんは彼の胸ぐらを掴んでこう叫んだ。



「お前は何がしたいんだ! バスケをしたいのか? 仲間とふざけていたいのか? 何がしたいんだ!」



彼は黙り込んだ。

続けてキャプテンさんは言った。



「お前は…お前は……ポイントガードだろ?」



その言葉に彼の何かが動き出した。

キャプテンさんが伝えたかったのは、言葉だ。

勉強を放ったらかしにして、運動……バスケットボールだけに明け暮れた彼は、次第に自分には運動しかないと考えていたが、彼のポジションの重要な事を忘れていた。


『見て、言葉にして、動かす』


彼の瞳に微かに色な戻った。

キャプテンさんと弟さんの前で彼は涙を流した、思いの丈を全て話した。

そして、チームメンバーに電話を掛けた。



……週初め彼は再びコートに立っていた。

あの時と同じ、会場、同じ相手。

そう、彼は心を開き仲間に支えられながら一年で完璧に体を治したのだ。

驚異的な回復力…この一言に尽きる。


そして、今日あの時からまる一年。


リベンジの時が来た。


相手は自分にきっかけをくれたあのキャプテンだ。


コートに入りポジションに着き、瞳を閉じて集中する。


彼は乗り越えた先にある幸せを覗くことができたのだ。




___眩しい第一印象はその一言だった。

どうやらカーテンの隙間から日が差して目元を照らしていたようだ。


体を起こし、スマホを開く。

その際映ったのは一人の女性だ。

どうやら今回は彼女が記憶の持ち主らしい、というかそういう説明をされていたのを忘れていた。


彼女は朝ごはんを食べながらニュースを確認していた。

朝にしては物騒なニュースだった。

内容は簡単に言えば、バラバラ死体が様々な場所の墓地に置かれていたという内容だ。

話を聞くだけでも気持ち悪くなりそうだ。


朝ごはんを食べ終えた後はスーツを着て家を出た。

電車に乗り会社に向かっている。

僕は初めての景色に少し感動した、高校卒業までまだ一年あるし、大学を含めたはスーツを着て会社に行くなんて機会決して多くはないだろう。


名前が書いてあるデスクに座ると、すぐに上司らしき人から名前を呼ばれた。

人気のない会議室で、一冊のファイルを手渡され内容を確認する。

僕はその内容を見てもよく分からなかったが、ひとつ気になる事が身に起きていた、それは腰辺りを触られているような気がした。


彼女もそれに気づいていたようだが、何も言わずにファイルに集中する。

きっと、気にしたらもっと良くない方向に進む事を分かっているのだ。

または、何度もされてもう慣れてしまったのかの二択だろう。



その後、時刻はお昼になり彼女は昼食を取るために会社を出た。

お友達さんと一緒に、何を食べるか見て回っていると、一瞬視界に気になる物が映った。

そして、その瞬間に胸の…心の奥底でなにかざわつくのを感じた。

僕がそれを感じたと言うことは彼女も同じものを感じたということ。


彼女はお友達さんに話すと快くその視界に映った何かを見に行く。

すると、彼女もそのお友達さんも目を見開き手で口を押さえ、驚愕した。

声が出ない、言葉にならないとはまさにこの事だろう。


僕は何が何だか分からないでいると、お友達さんの声が耳に届いた。



「あれって、あんたの彼氏だよね………それに…あの人って………うちの受付の人だよ…ね」



流石に目の前の状況とこの発言を聞いて、分からないほど僕も馬鹿じゃない。

彼女と僕は偶然にも浮気現場に遭遇してしまったようだ。


心の中に紫色のドロドロした何かが生まれた。

しかし、すぐに熱を帯び真っ赤に染まり……彼女の心の中にひとつの覚悟が生まれていた。



……その日の夜彼女は、彼氏さんの家にやって来ていた。

ふたりで食事をして、ふたりで一緒にお風呂に入って、髪を乾かし合いっこして、理想のカップルの様なことをしていた。

彼氏さんの顔は常に笑顔だった。

スマホをいじったり、ゲームをしたりせずに彼女だけを構った。


彼女の中に浮気の罪滅ぼしだと心に浮かんだ。


僕の目にはいつも通りの景色として映った。



全てを終わらせて、リビングのソファーに腰掛けゆっくりしていると彼女が一言話題を振った。



「来週の誕生日……プレゼント期待してるね」



その言葉に、彼氏さんは自信満々に返事をした。

しかしその笑顔は今の彼女には地雷となっていた。


黒い感情が渦をまく。

私だけに向けていた笑顔を他の誰かに向けた。

私だけのその手は誰かの手を握った。

私だけの彼はもうどこにもいない。


彼女は、何も言わずにその場を立ち上がり玄関の方に足を進める。

彼氏さんは異変に気づいたのか、彼女の後を置い手を掴もうとした時……



「誕生日プレゼントは……お別れしましょう」



彼女はそう一言言い残し、彼氏さんの家を出ていった。


翌日彼女は体調が優れないと会社を休んだ。


会社を休んだ次の日、彼女が会社に入ろうとすると、受付の女性が泣きながら近寄ってきた。


彼女は、冷たい視線を向けながら話を聞く。

話を聞くと彼女の誕生日プレゼントを選ぶ為に彼女と仲の良い、この受付の女性に手伝ってもらっていたらしい。



言い訳その言葉が脳裏に過ぎる。

受付の女性は、話の最後に


「もう一度話してあげて欲しいと」


お願いをしてきた。


話すつもりなどもう無いが、この場を離れたいが為に了承しオフィスへ向かった。


…いつもよりも長い一日を終わらせて、家に帰っているとスマホの着信音が鳴った。

電話の相手は共に浮気現場を見たお友達さんだった。

電話に出て話を聞くと、なんとあの受付の女性の話は本当だと言うことがわかった。


受付の人以外にも彼女の周りの人に話を聞いていたという証言が複数取れ事実の確認が取れたのだ。


彼女は、戸惑った。

話し合わずに、話を聞かずに一方的に突き放してしまった事に対して自分への嫌悪が走った。


彼女はすぐに彼氏さんに電話をかける。

しかし、電話に出ることは無い。

急いで家に向かう。

すると玄関の鍵が空いていた、中に入ると彼氏さんの姿はなかった。仕方なく彼女さんはメッセージや電話を繰り返し彼氏さんに送り続け、返事が来ることを願いながら、彼氏さんの家に居座った。


……翌日。

気づいたら眠ってしまって居たようだ。

寝起きなど関係なく、家中探し回り彼氏さんを探したが……姿はなかった。


癖でニュースをつけると………



彼女はショックで意識を失った。


彼女は気づいた時には遅かったのだ、これが彼女の幸せの形。

二度と来ない……訪れることのない幸せの形。




___頭が痛い。

目を開くと電車の中にいた、頭痛、吐き気、目眩がする。


身体を預け運ばれていた。

どうやら飲み会帰りで酔いつぶれてしまったらしい。


友人達に運ばれていると、身体がコンビニに向かっていった。

そして、彼は衝撃な発言をした。



「俺、万引きしてくるわ〜」



その言葉に周りの友人も止めたが、酔ってるにしては力が強く止めること事が出来なかった。

彼はお酒の飲み物のコーナーに行き、お酒を手に取り堂々と外に出た。


もちろんそれが通じるはずがなく、すぐに店員さんに取り押さえられて警察のお世話になった。



お酒は怖い、これがおじいさんの言っていた三人目の幸せの形。

流されない幸せの形………流されない…意味を履き違えると、自己中心的にも捉えられるのだろう。




___声がする。

目を開くとあの部屋にいた。

おじいさんが声をかけていた。



「大丈夫ですか? 体調になにか違和感はありますか?」


「……はい、大丈夫です。少し胸がざわついてる程度です」


「左様ですが、どうでしたか? 他人の"幸せ"の形を覗いて見た感想は」


「一人目は幸せそうでした、二人目は最後はバットエンドで、三人目に関しては見方を変えると幸せそうでした。

一人目と三人目に関しては幸せかもしれませんが、二人目は幸せなんですか?」



僕はおじいさんに尋ねた。

なぜなら、幸せの記憶を覗かせてくれるという話なのに二人目の彼女は最初から最後まで幸せな事などひとつもなかったからだ。


おじいさんは少し考えてから話し出した。



「……実は、既に彼氏さんに気持ちがなかっとすれば?」


「えっ? そんな事あるんですか?」


「あなたが感じた、赤い沸騰した様な感覚が怒りではなく興奮から来るものだとすれば?」


「なら、なんであんなに感情的に……」


「自分の管理下からコレクションがいなくなるのが嫌だったのでしょう。最後にニュースの内容を見て気を失ったのは、緊張がほぐれた安堵から来るものでしょう。


……死んでしまえば誰かに取られることはありませんからね」



おじいさんはカウンターに行き一枚の手紙を取り出した。



「あなたが見つけた、幸せとはなんなのかここにご記入ください。ご記入できましたら、一度外に出て頂き入口横のポストに投函してください」



僕は手紙を受け取り、自分自身なりの答えを見つけ記入した。


外へ出て、入口横のポストに投函すると体から力が一気に抜けその場に倒れ込んでしまった。




___意識が戻ると見知らぬ白い天井が広がっていた。


病院だ。



「……ん? おっ、やっと起きたから。このバカ」


「お前……」


「ったく、お前が病院に運ばれたって聞いてすぐに飛んで来たよ。せっかくのデート中だったって言うのに」



僕が寝ているベットの横で座っているのは、高校進学を機に都心へ言ってしまった幼なじみの親友だった。

中学卒から連絡も会うこともなく、一年と数ヶ月……ここにコイツが居ることに心から嬉しかった。



「……早く直せよ。そんで、駅前の限定コーヒー奢ってもらうからな」


「……あはは、あぁわかったよ」


「…あっ、それとお前が治るまで、ここにいてやるからな」


僕達は笑いあった。

夜遅くになるまで……



「暇だな」


「あぁ、暇だ」


「………」


「………」



静寂が訪れた。

暇という名の静寂はとても心地よかった。


これが僕の見つけた幸せの形。

心を許した人と共に……みんなと共に……暇という時間を共有し味わう事が僕の描いた…


幸せの形。


何も無かったゴールデンウィークは、病室のベットで何も出来ないけど親友と何も無い暇な時間を味わえるらしい。




______



「おやおや、これはなかなか興味深い幸せの形ですね。

さて、どうでしたかな? あなたも見つけてみませんか? 幸せの形を。


安心してください。初回は相手の情報はいりませんから。


この黄金珠館はいつでもどこでも、必要な時に選ばれた時に、また出会えますよ。


あなたのゴールデンウィークがここから始まることを願って。


それでは、行ってらっしゃいませ」

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