12:大海賊デッセル-1
少しお休みいただいておりました (>д<;)
すいませんでした m(_ _)m
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「あー、もう概要に出たのかぁ! 岸が見えないよ!」
セオが海の彼方に目をやってそう叫ぶと、その場にいた水兵達は皆同じように海の上に目をやった。
今朝初めて本格的な外洋巡航に出たオーリュメール号の新兵達は、艦での旅に興味津々だ。
「すごいな!あっという間だ!ね、ヒューイ!」
「うん、そうだね」
セオに話を振られたヒューイも、ロープをたぐる手を止めて、同じように海の上を見た。まだ夏本番と言うには早く、だが日差しはずいぶん強くなってきた。海風はカラリと心地良く、皆少々浮かれていた。
「こんな気持ち良いんだな、海の上って!」
「ばーか!これから真夏になってみろよ。甲板の上なんて逃げ場所ねぇから暑くて死ぬぞ」
ダリルが鼻の頭に皺を寄せてそう混ぜ返すが、そんなダリルだってどこか楽しそうに見えた。
皆浮かれているが、さっきまでは全ての帆を揚げる展帆作業でヘトヘトだった。それでも自分たちで張った帆が風を受けている姿は爽快で、新兵達は皆満足そうに帆を見上げ、海の景色を満喫している。
ほとんどの新兵は看板でロープを張る作業だったが、身軽なヒューイはベテラン達に混じって帆桁の上での作業だった。身軽そうに帆桁の上を動き回るヒューイを見て、ダリルは「楽な仕事ばっかり死やがって」などと吐き捨てたが、じゃあお前がやるかと言われれば、高所作業をする勇気などダリルにはなかった。
もちろん、帆を張って終わりというわけではない。これから風向きに会わせて帆の角度を変えたり、風量に会わせて帆を畳んだり揚げたりと作業は山積みだ。それでも今は、初めての大きな作業をやりきった満足感で、皆頬を紅潮させていた。
初日は順調に終わった。この初めての大仕事も、日が重なれば日常だ。
新米水兵の彼らは操帆作業だけでなく、艦内の清掃や洗濯という雑用や、戦闘訓練などもしなければならない。彼らに与えられた船室は下甲板のかなり下層で、一部屋に三段ベッドが四台も押し込まれている。ヘトヘトになって部屋に戻り、横になればすぐに眠りにつくとはいえ、それでも徐々にストレスは溜まっていく。
「あ~、早く陸に帰りたいな~」
「潤いもないしな~」
昼間の甲板作業中にぼやきながら上を見れば、相変わらずヒューイは疲れたかもせず、ひょいひょいと帆桁の上を走り回っていた。
「……あいつ、猿みたいだな」
「猿よりは可愛いんだから、せめてリスくらいにしとかないか?」
「ああ、リスか。そうだな。小さくいしな」
真っ青な空には白い雲が浮かび、帆桁の上を走り回るヒューイがチラチラと見える様はなんだか気持ちを弾ませてくれた。それだけで少しはストレスが晴れていくようだ。
「あいつ、あんな高いとこでよく楽しそうに動けるよな」
「ベテランの水兵よりよっぽど動いてるんじゃないか?」
「あれが若さか……」
最初はダリルの流す悪意のある言葉のせいでヒューイを下に見ていた船員達も、気がつくとヒューイをまるでマスコットのように見るようになっていた。
「おーい、ヒューイ! はしゃいでないでちゃんと足元も見ろよ~!」
「はい!落ちないように気をつけます!」
上に向かって声をかけると、元気な声が返ってくる。それは思ったよりみんなに元気を与えてくれた。
のんびりと、順調に航海は続いていく。
海の魔獣はよほど深い所にいるのか影を見ることもなく、他国の船を遠くに見ること春が、それはほとんどが貿易船だった。
「海軍って、ずいぶんとのどかなんだなぁ」
誰もがそう勘違いして、少し気が抜けていたのだろう。
「あれ? ね、ロイさん。あの旗って……」
マストの上にいるヒューイが、先輩の水兵に声をかけた。
海の上に小さな点が見える。それは徐々に大きくなってきた。
マストの上にいる水兵達は、常に不審船がいないか監視をしている。ヒューイも監視役として、自国、他国の船の船籍を見分けるための帆のマークや旗を教え込まれていた。
だが、国旗を掲げず、黒地に白いドクロと二本の骨を交差させ、その周りに蛸の足を巡らせているあのマストは……
「半鐘を鳴らせ! 海賊船! 海賊船だ! 敵はデッセル団の海賊艦隊!! 総員戦闘配置につけ! 一人残らず殲滅せよ!!!」




