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12:大海賊デッセル-1

少しお休みいただいておりました (>д<;)

すいませんでした m(_ _)m

   ◇◇◇ ◇◇◇




「あー、もう概要に出たのかぁ! 岸が見えないよ!」


 セオが海の彼方に目をやってそう叫ぶと、その場にいた水兵達は皆同じように海の上に目をやった。

 今朝初めて本格的な外洋巡航に出たオーリュメール号の新兵達は、艦での旅に興味津々だ。


「すごいな!あっという間だ!ね、ヒューイ!」

「うん、そうだね」


 セオに話を振られたヒューイも、ロープをたぐる手を止めて、同じように海の上を見た。まだ夏本番と言うには早く、だが日差しはずいぶん強くなってきた。海風はカラリと心地良く、皆少々浮かれていた。


「こんな気持ち良いんだな、海の上って!」

「ばーか!これから真夏になってみろよ。甲板の上なんて逃げ場所ねぇから暑くて死ぬぞ」


 ダリルが鼻の頭に皺を寄せてそう混ぜ返すが、そんなダリルだってどこか楽しそうに見えた。


 皆浮かれているが、さっきまでは全ての帆を揚げる展帆作業でヘトヘトだった。それでも自分たちで張った帆が風を受けている姿は爽快で、新兵達は皆満足そうに帆を見上げ、海の景色を満喫している。

 ほとんどの新兵は看板でロープを張る作業だったが、身軽なヒューイはベテラン達に混じって帆桁の上での作業だった。身軽そうに帆桁の上を動き回るヒューイを見て、ダリルは「楽な仕事ばっかり死やがって」などと吐き捨てたが、じゃあお前がやるかと言われれば、高所作業をする勇気などダリルにはなかった。


 もちろん、帆を張って終わりというわけではない。これから風向きに会わせて帆の角度を変えたり、風量に会わせて帆を畳んだり揚げたりと作業は山積みだ。それでも今は、初めての大きな作業をやりきった満足感で、皆頬を紅潮させていた。


 初日は順調に終わった。この初めての大仕事も、日が重なれば日常だ。


 新米水兵の彼らは操帆作業だけでなく、艦内の清掃や洗濯という雑用や、戦闘訓練などもしなければならない。彼らに与えられた船室は下甲板のかなり下層で、一部屋に三段ベッドが四台も押し込まれている。ヘトヘトになって部屋に戻り、横になればすぐに眠りにつくとはいえ、それでも徐々にストレスは溜まっていく。


「あ~、早く陸に帰りたいな~」

「潤いもないしな~」


 昼間の甲板作業中にぼやきながら上を見れば、相変わらずヒューイは疲れたかもせず、ひょいひょいと帆桁の上を走り回っていた。


「……あいつ、猿みたいだな」

「猿よりは可愛いんだから、せめてリスくらいにしとかないか?」

「ああ、リスか。そうだな。小さくいしな」


 真っ青な空には白い雲が浮かび、帆桁の上を走り回るヒューイがチラチラと見える様はなんだか気持ちを弾ませてくれた。それだけで少しはストレスが晴れていくようだ。


「あいつ、あんな高いとこでよく楽しそうに動けるよな」

「ベテランの水兵よりよっぽど動いてるんじゃないか?」

「あれが若さか……」


 最初はダリルの流す悪意のある言葉のせいでヒューイを下に見ていた船員達も、気がつくとヒューイをまるでマスコットのように見るようになっていた。


「おーい、ヒューイ! はしゃいでないでちゃんと足元も見ろよ~!」

「はい!落ちないように気をつけます!」


 上に向かって声をかけると、元気な声が返ってくる。それは思ったよりみんなに元気を与えてくれた。

 のんびりと、順調に航海は続いていく。

 海の魔獣はよほど深い所にいるのか影を見ることもなく、他国の船を遠くに見ること春が、それはほとんどが貿易船だった。


「海軍って、ずいぶんとのどかなんだなぁ」

 誰もがそう勘違いして、少し気が抜けていたのだろう。


「あれ? ね、ロイさん。あの旗って……」


 マストの上にいるヒューイが、先輩の水兵に声をかけた。


 海の上に小さな点が見える。それは徐々に大きくなってきた。

 マストの上にいる水兵達は、常に不審船がいないか監視をしている。ヒューイも監視役として、自国、他国の船の船籍を見分けるための帆のマークや旗を教え込まれていた。


 だが、国旗を掲げず、黒地に白いドクロと二本の骨を交差させ、その周りに蛸の足を巡らせているあのマストは……


「半鐘を鳴らせ! 海賊船! 海賊船だ! 敵はデッセル団の海賊艦隊!! 総員戦闘配置につけ! 一人残らず殲滅せよ!!!」

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