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ブレーメンの錬金術師は散財したい  作者: 初鹿余フツカ
7章 猫も歩けば小判に当たる

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1.革命はお金の味がする

 天高く馬肥ゆる、秋である。

 秋といえば収穫の季節。夏に引き続き、農家の忙しい季節となっている。

 夏は夏野菜が実り、秋は秋野菜が実る。

 そんなわけで夏にやり損ねた農家を猫は今、満喫している――。


 庭のそこかしこで暴れまわる、真っ白なラコラたちと共に。


「にゃん……」


 秋の日差しをうらうらと浴びて葉をそよがすものもいれば、運動会さながらに庭駆け回るものあり、水桶で流され沈むものあり、猫の前にわくわくと並ぶものあり。


 いや、お久しぶりだけど相変わらず自由だなこの大根たちめ!


 一列に並んだ白ラコラたちにジョウロのように『ピュリファイ』で浄水をかけながら、猫は生き生きと我が世の春を謳歌する白ラコラたちを眺めた。

 今に見ておれ。

 根こそぎ収穫してやるからな……!




 さて。

 猫の庭にラコラ王国が復活してしまったのには、もちろん理由がある。

 説明すると一行で済む。

 今、『白ラコラ』が高い!


 はい。お金には勝てなかったよ。


 夏の終わり頃だっただろうか、ちょうど猫が庭にいたときに、全体アナウンスがあったんだよね。


『魔子族の里にて『食糧危機』が起こりました。これより魔子族の里では食糧アイテムの入手が困難となり、里の民はこのままいくと飢餓に直面することでしょう』


 『食糧危機』。

 それは以前、猫が自由都市で踏みかけて、ノーカさんたちの助けを借りて阻止したイベントである。

 通称、革命。

 プレイヤーたちにとっては金稼ぎの大イベントであるお知らせに、掲示板は沸き立ち、商人たちはアップを始めた。

 しかも場所は新マップ。なんと未発見だった魔子族の里で、更にそれは天空の島だというじゃないか。


 一夜にしてお祭り騒ぎになった『魔子族スレ』と『革命スレ』は、しかしわりとすぐに鎮火した。

 そう、場所は天空の島。移動してアイテムを運び込むには、場所が悪かったのである。

 転移施設ポータルポートが全面オープンしてたらまだやりようもあったのだろうけど、クエスト式で、しかも革命中は開けないと来てる。

 これには『運搬』持ちの商人たちもやる気を失くしてしまい、急騰したマケボの食糧価格も下落した。


 『食糧危機』は、足りない食糧分を街に届け終わるか、原因となったクエストを解決して街の生産ラインを復活させることで終了する。


 里の生産ライン復帰へ向けては、魔子族のプレイヤーたちがせっせと日々頑張っているらしい。

 そして食糧の供給は、猫たち畑持ちの農家が頑張っているというわけだ。


 魔子族の里、転移施設ポータルポートはないけど冒険者ギルドはあってホーム更新出来るので、畑ワープが可能なのだ。

 畑とホームを往復することによって、食糧の納品が楽々行える。ついでに畑で食糧を作れば、農家のLVも上がりお金も稼げて万々歳。

 猫にとって、この魔子族の里での革命は大歓迎のイベントだったのである。


 しかし問題は、育てる野菜の種類にあった。

 このゲーム、農家は神官を兼ねてる人が多いからライバルが多い。そうなると納品するアイテムによっては、思った値段がつかないこともしばしば。

 となれば、育てるしかないじゃない、マイナー野菜。

 そこで復活したのが白ラコラ王国なのである…!


 もちろん、畑では他の野菜もいろいろ育てている。トレントのモリーに夢見蝶のラモとレモが面倒を見てくれているので、作物の育成は順調そのものだ。

 それに庭の白ラコラ王国だって、猫も考え無しに復活させたわけじゃない。勝手に増殖する白ラコラたちへの対策無しに、庭での建国を許したりしない。


 猫の隣には、ずんぐりした白い大根が立っている。

 見よ、これが白ラコラ王国の王、マンドラコラのラッキーであるぞ!


 ……。

 改めて考えると大根が立ってるって変な絵面だね?


 猫の新しい従魔となったラッキーは『統率』を持つ個体で、なんと白ラコラを従えることが出来る。『統率』がマンドラコラの標準装備なのか、ラッキーがレア個体なのかはまだデータが揃ってなくて不明だ。

 マンドラコラ、手懐けるのが難しい魔物らしくて、持ってる人が少なすぎるんだよね。猫のように畑産のマンドラコラを持つ人もいると思うんだけど、掲示板では見なかった。

 神官農家ではアルミハクさんが無事にマンドラコラを生み出すことに成功したが、彼女の個体は『統率』持ちではなかったそうだ。

 そもそもうちのラッキーはシュガーマンドラコラで、アルミハクさんちのはグリーンマンドラコラらしいから、種類が違うんだけどね。

 シュガーマンドラコラは魔法全般、特にデバフを得意とする。グリーンマンドラコラは攻撃魔法タイプだそうだ。


「猫さんちは、シュガーマンドラコラから交配させたって言ってたじゃない? 見習ってマンドラコラの花を採ってきて途中で交配させたから、そのせいじゃないかなあ」

 とアルミハクさんは言っていた。


 そういえば、猫んちの白ラコラたちは図書館ダンジョンのシュガーマンドラコラから始まったんだったね。思わずしみじみとしてしまった。

 思えば遠くまで来たものだ……。


「さあ、出荷のお時間にゃんよ~」


 猫が言うと、ラッキーが手旗信号のように右手(?)をサッと上げる。すると、収穫可能らしい白ラコラたちが庭の右側にわらわらと集まる。

 ラッキーがてこてこと歩いていき、白ラコラの列から小さめの白ラコラの肩(?)を叩き、左側へ外していく。

 すると選び抜かれた収穫可能白ラコラが、ラッキーの前に一列に並ぶのである。

 それはありがたい話なんだけど、白ラコラがラッキーに敬礼(?)したあと、ラッキーと抱き合ってから猫の前に来るのが……なんというか……!

 問答無用でもぎ取るのとはまた違う、絶妙なやりづらさである。しかし農業とは時として残酷なものだ。

 命をいただきますってことだね。こんなところで食育しなくてもいいんだぞ。


 ちなみに左に避けられたラコラは花を咲かせて、種を作る方に回る。こうして白ラコラ王国は循環しているのである……。

 ……。

 いや、大丈夫。白ラコラは不滅じゃない。ちゃんと時が来たら滅して、猫は素敵な庭を取り戻すのだ。


 さて、そうして収穫してきた自慢の大根――もとい『純白ラコラ』たちを荷物にぎっしり詰めて、ついでに荷物の隙間に自由都市で購入した格安の肉系素材などを詰めて、いざホーム帰還。

 踵3回打ち鳴らし、行くぞ、魔子族の里へ!




「何度見てもいい眺めにゃんね~~」


 絶景かな絶景かな~。

 魔子族の里は天空の島、風任せに流れて移動するものだから、見下ろす風景はいつ来ても違う。

 そんな移動する島へもピタッと帰還できちゃうのだから、『リターン』は優秀な魔法だ。

 ちなみに踵3回で『リターン』が出る動作魔法は、ペチカちゃんとのオズの再挑戦で手に入れた。一緒に気球に乗って天空の島を拝みにも行ったんだけど、そこは岩石のような天空島で、魔子族の里ではない別の島だった。あれはあれで上陸してみたいねって、ペチカちゃんとも話していたところ。


 魔子族の島は、通称、天空土星島。今日の背景はゆたかな草原の広がる大地に、転々と風車が立っている。おっ、これは風車の街ウォーデンヒルが近いのかな。

 街が近くなると商人プレイヤーたちがここぞとばかりに乗り込んでくるので、里も一気に賑やかになる。クエストが進むといいね。

 

 猫はロバのルイと一緒に、てくてく街歩きをしながら荷下ろしだ。


 実はルイは、先日新たに進化した。魔子族の里に到達したとき、進化可能LVになったのだ。やはり騎獣って街到達経験値が一番大きいんだなあと痛感したところ。

 ルイは元々は動物で、第一段階の進化で魔物の魔ロバとなっていたのだが、この度第二段階――つまり最終進化を迎えることになった。


 進化先はミミットホース。

 兎馬、まあロバですね。名の通り、形態にそれほど大きな変化はない。ただミミットと名のつく通り、若干ミミット種の傾向を受け継ぐようで、魔法系のロバとなった。

 これまでのルイはときどき突撃とかもして猫を庇ってくれるタンクっぽいところもあったから、正統進化としては体が大きくなる進化だったんだよね。

 フェアリードラゴンのソルベちゃんに乗ったときに気づいたけど、猫の『騎乗』LVもずいぶん上がったので、もう大きな獣でも問題なく乗れる。それはわかっていたのだけども、でも見た目的に感情的に、ルイが大きな馬になるような進化をする、というのはちょっと受け付けなかった。猫としてはやはり、ルイにはロバのままでいてほしい。


 そんなわけで、ルイの見た目はロバのまま。魔ロバと変わったところといえば、少し耳が大きくなったのと、尻尾がふわふわの真ん丸になったところだろうか。あとは首のところに、刺青のような模様が入った。トライバルタトゥーみたいな感じで、これはミミットホース特有の模様らしい。ちょっとかっこいい。

 これ以上の進化は従魔のために『ルイネの林檎』を捧げるクエストが必須となる。もちろんルイに林檎を捧げる準備はあるのだが、ロバのままの進化先ってあるのかなあ……。

 うーん、進化先によってはちょっと悩ましいよね。でもせっかくだから、進化させてあげたいしなあ。


 レトやルビーの進化はまだまだ先の予定。レトは進化自体はもうできるんだけど、準備がまだ整っていない。進化先がヒーラーマルモしか出てきてないんだよね。通常、ふたつは進化先が出てから進化させるのがいいといわれている。だからそれ待ちかな。

 ルビーの方はLVがまだ上がりきってないので、もうちょっと先になりそう。


「ありがとう! とっても助かるよ!」


 持ってきた食糧を商店に卸すと、店がオープンしてNPC魔子族がぞくぞくやってくる。それを横目にみながら、次の店、次の店と卸していく。

 やることは単純作業だし、もうすでに何周かしてるので目新しい話も聞けなくなっていて、実は猫、ちょっと飽きてきていたりする。

 でも稼ぎ時だし、白ラコラの育成出荷は『農業』だけでなく『牧畜』にも経験値が入るし、続けた方がいい。それはわかってるんだけど、ちょっと他所が気になっちゃう今日この頃。


 商店で聞けた話をまとめると、魔子族の里にはいろいろなクエストが眠っているっぽいのだ。

 気になる、気になる。


7章開始です。

猫の新たな冒険が始まります。

評価、ブクマ、リアクション、感想、誤字報告ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 更新にゃーん [一言] 白ラコラ王国再び! ついでにシュガーマンドラコラまで従魔にしちゃってまぁ…… 猫のことだから放浪させた方が面白いナニカを見つけるけど、そうするとお金が貯まらない…
7章スタートありがとうございますにゃーん。 白ラコラ王国の復活! むしろ前は無秩序だったところに王があらわれたんだから建国かも。 ラッキーの治世は頼もしいけど、出荷と種取に分けられるとか、『農業』と『…
猫ちゃんがルビーの靴(原作版オズの魔法使いだと銀の靴)でラッタッタできるように! 旅の道連れも充実してるし実質ドロシーになっちゃったにゃん
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