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ブレーメンの錬金術師は散財したい  作者: 初鹿余フツカ
6章 猫はいつでも風まかせ

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307/313

幕間:轟けドラゴンレース! 1

「大変お待たせしましたにゃん~!」


 いやはや今回は大遅刻。

 あわてて露店へ駆け込めば、メガネをかけて本を読んでいたフーテンさんが顔を上げた。おや珍しくインテリジェンス。


「お待ちしてましたにゃん~! どしたの、遅刻珍しいね」

「申し訳ないにゃ、船の時間を間違えてたにゃん。あわてて『リターン』したけどホームがダンジョン前出張所だったにゃん? 出張所に転移施設ポータルポートはないし、めちゃくちゃ焦ったにゃんよ~」

「あらら。じゃあすごい急いできたんじゃない? スタミナ大丈夫?」

「ギリギリだけど大丈夫にゃん!」


 久々に風猫族のスタミナのなさを実感しました。

 今回は幸いにして荷は満ちていたので、運送神官の特殊神聖魔法『キャリッジ』が火を吹いた。街道を爆走してしまったぜ。過疎街道でよかったね。


「お約束の『金の毛髪』『銀の毛髪』100本ずつ、合計3セットあるにゃ。よろしくお願いするにゃん」

「おお、大量だね~。あのダンジョン、人全然いないし飽きなかった?」

「猫は過疎地が結構、好きにゃんよ。サンドワームより全然いいにゃん」

「まあサンドワームはね~、俺もあんまり行きたくはないかな……。端数はどうする?」

「マケボで売るから大丈夫にゃん~」

「了解~~」


 猫が今回、行ってきたのは海沿いにある幽霊ダンジョン。住み着いた幽霊から髪をむしるという、通称「羅生門」である。

 経験値的にも湧き的にも微妙で、地味に人気のない場所だ。しかしここで出るプチレア『金の毛髪』『銀の毛髪』はそこそこ高値で売れる。姫系装備アイテム、『乙女の前髪』の材料になるからだ。この髪を抜いてな、この髪を抜いてな、カツラにしようと思ったのにゃ……というわけである。

 高値で売れるのに人気がないのは、とにかく湧きが少ないのと、毛髪がプチレアで出にくい点にある。


「それにしてもたくさん集めたね~。これだけ出るまでかなり時間かかったんじゃない?」

「『怨嗟のペンダント』を入手したから、アンデッド系は集めやすいにゃんよ~」

「あー。ありましたねそんなものが…」


 『怨嗟のペンダント』はTUダンジョンで手に入る特殊なアイテム。

 TUダンジョンはTU、つまり『ターンアンデッド』の練習場として使われる、これまた幽霊とスケルトンのたくさん出るダンジョンだ。ここで手に入る『恨みの欠片』を集めて神殿へ持っていくと、『鎮魂の印』というアイテムと交換してもらえる。これがTUの成功率を上げる、TU神官には必須のアイテムとなるのだ。

 そして『恨みの欠片』を更に集めて今度はBOSS部屋へ安置すると、『怨嗟のペンダント』というアイテムが手に入る。これはアンデッド系に対して被ダメが増える代わりに、レアドロップ率が上昇するアイテムである。

 今は人気のアンデッド系狩り場ってないから『怨嗟のペンダント』はマケボでお安く出品されていて、猫はいくつか入手した。これを後衛の従魔たちに装備してもらえば、プチレアもそれなりに増えるというわけだ。

 もし幽霊のLVが高ければ出来ない方法だけど、LV的にはだいぶ余裕のある場所だったしね。

 まあ、だからこそ羅生門は人気がないともいう。通うには経験値的にしょっぱすぎるし、プチレア狙うにも時間がかかる。姫は金持ちなので、ヅラは金で解決するものなのである。

 それなら初心者の金策としてオススメされてもいいところなんだけど、まず神官にならねばならないため、初心者向きじゃないのだ。TU出来ないと荷が重いし、なんとも微妙な立ち位置にあるダンジョンなのだった。


「はい清算~。ちょっと見ない間にずいぶん値上がったし、これだけ集めるとかなり金額いくねえ」

「ありがとうにゃ~ん! 前髪は初心者錬金アイテムで再発見されて、錬金できない別のタイプが流行してるみたいにゃんね」

「あ~、古参の姫はみんな持ってるけど、新規の姫にまた人気が出たわけね。よくそんな情報見つけたねえ」

「猫は今、金策に必死にゃん。日々儲かる素材を探してるにゃんよ~」

「さてはまた散財しましたね?」

「にゃふん……」

「あら。思いがけない出費だった感じ?」

「にゃあ……、猫、実は牧場主になったにゃん」

「牧場!?」


 フーテンさんが猫を見て驚いたあと、頭上に『牧場!?』と赤い書き文字が表示された。そういうアクションらしい。


「え……、どうしてそんなことに。牧場には手を出さないんじゃなかったっけ? マンドラコラ?」

「あ、そうそう、マンドラコラも無事誕生したにゃんよ」

「誕生したんだ!?」


 今度は『おめでとう!』と赤文字が出る。芸が細かい。


「でもマンドラコラとはまた話が違うにゃ。いや、マンドラコラも牧場は必要みたいなんだけども」

「畑じゃないんだ?」

「畑だと一匹しか生まれないみたいにゃん。量産するなら牧場みたいにゃんね」

「え、量産するの?」

「そこは悩んでるところにゃんね~~」

「あ、ごめん、話の腰折ったねえ。マンドラコラ以外に牧場がいるほど育てるやついたっけ? スライム増えたとか?」

「にゃあ、実は卵が生まれたにゃん」

「あ~~、ドゥドゥーかぁ。そういえば猫ちゃんとこの文鳥は飛ばないんだったね」


 イエス、飛ばない鳥はだいたいドゥドゥー。その法則に則って、猫の文鳥ことルビーも見た目はともかくドゥドゥーである。


 ドゥドゥーといえば、覚えているだろうか。

 そう、妄想卵こと『魔法のタマゴ』である。


「妄想卵生んじゃったか~」

「いや、猫が気づいてなかっただけで、だいぶ前から生んでたみたいで」

「そうなの!?」

「ドゥドゥーって連れていると、荷物の中に卵を生むらしいにゃん。ちょっと荷物整理をサボっていたら、荷物の中に卵が120個もあったにゃん……」

「120!?」

「うち15個が『魔法のタマゴ』だったにゃ」

「多いな!?」


 うん。びっくりしちゃうよね。

 後で調べたところ、ドゥドゥーの産卵は従主やその他の従魔との相性によるらしくて、つまり好感度が高ければ生む頻度が早まるらしい。ルビーはそこそこ好感度が高い、つまり卵もよく生んでくれたということで……。


「猫ちゃん『運搬』持ちだし、ロバいるし、荷物には余裕があるもんねえ。卵のひとつやふたつ増えても気づかないか……いや、やっぱり多くない!?」

「最近は荷運び依頼を受けてなかったし、荷物の重量が多い分にはルイのレベル上げになるしで、全然気にしてなかったにゃんね……」


 いや、たしかにサボりすぎたなとは思っているのだ。

 でもほら、荷物が勝手に増えてるなんて思わないじゃない? ドゥドゥーがタマゴを生むって話は見てたけど、すっからかんに忘れてたし。


「さすがに捨てるには忍びないし、かといって全部孵化させるにはちょっと増えすぎちゃったし、これはもう牧場を借りるしかないと思ったにゃん」

「『魔法のタマゴ』て、何が生まれるかわからないんだっけか」

「そうにゃん。テイマーギルドで希に販売されるっていうから売れるかと思ったんだけど、売れないアイテムだったにゃんよ」

「あれ、そうなんだ?」


 猫も意外だったんだけど、『魔法のタマゴ』ってマケボで販売できない特殊なアイテムだったのだ。突然15個も抱えて困ってしまった。

 重量は大したことのないアイテムだし、抱えていても問題はないんだけど、気づいてしまうとなんとなく気になって放置できない。時間経過しないのはわかっているけど、タマゴだしさ。


 かといって露店で販売するのも悩ましいし、フレに押しつけるわけにもいかない。

 そんなこんなで悩んだ結果、猫も牧場デビューをすることになったのであった。

 いやはや、散財である。なにせ15個の卵を孵化させなきゃいけない。孵卵器がいるし、15匹ともなれば敷地もそこそこ必要だし、お高かった……!

 冷静になればいらない買い物だった気もしなくもない。ないんだけど、そう、買えない価格ではなかったところがまた。

 うん、はい。

 やらかしてしまったんだよねえ。


「でも『魔法のタマゴ』って、引き取ってくれるNPCがいたはずよ~」

「そうにゃん?」

「たしかルイネアの好事家で、珍品を高値で引き取ってくれるとかいう」

「にゃあ、ポエムおじさんにゃんね」

「あ、サンドワームのとこか」


 ポエムおじさんはもちろんニックネームである。本名は知らない。

 なんで金策といえばサンドワームになってるかというと、このポエムおじさんに由来する。

 好事家のルイネアであるポエムおじさんは、サンドワームから出る『砂漠のバラ』を高額で買ってくれるのだ。

 サンドワームはほどよく湧き、『砂漠のバラ』はプチレアながら出やすく、短時間での収入が期待できる。またLV帯も中間層にぴったりで、LV上げとお金稼ぎの両方が出来るすごい狩り場だ。

 問題は砂漠のド真ん中にあり背景が真っ白(空もなぜか白い)空間にあるのと、サンドワームしか出てこないためひたすら単調で、更にフィールドが街から離れているため補給がめんどくさい点にある。

 そのうちのこの、真っ白い空間というのが想像以上に人のやる気を奪ってですね……。猫はかなり早い段階で脱落した。サンドワーム退治が思ったより大変だったのもあるけど、全然続きませんでしたね。

 効率のいい狩り場ながら、めちゃくちゃ人を選ぶというのがサンドワームだ。猫も選ばれし者にはなれなかったよ。


 ちなみになんでポエムおじさんと呼ばれるのかというと、『砂漠のバラ』を渡すと即興でポエムを読んでくれるからだそうだ。

 猫はポエムに至れなかったので、あまり詳しくはないのだけども。


「にゃあ、ポエムおじさんは猫も気になってたにゃん。1個くらい売ってみてもいいかもしれないにゃ」

「結構いい値がつくって話よ~」


 それは楽しみ。

 牧場には孵卵器があるんだけど、10個しか入らなかったから、あと5個は荷物の中にまだ入ってる。

 ルビーは生むだけ生んだらもうタマゴには興味がまったくないようだから、売ってしまっても大丈夫だろう。抱卵することもないし、気にする様子が微塵もない。ドゥドゥーってそういう生態みたい。


「あ、そうそう、ドゥドゥーが生んだ普通の卵は『白タマゴ』『赤タマゴ』?」

「半々にゃんね~」

「おお、どっちも生まれるんだねえ。『赤タマゴ』ならヤマビコが買い取ると思うけど、売ってく?」

「売っちゃうにゃん~!」


 だいたい半々で生んだようなので、『赤タマゴ』は50個強ある。ざっくりと『白タマゴ』は調薬、『赤タマゴ』は料理に適しているという違いがあるみたいだ。とはいえ、『調薬』には卵を使うレシピが少ないため、需要は断然『赤タマゴ』に偏っている。

 フーテンさんのPTのヤマビコさんは、料理人だ。きっとおいしい料理に化けることだろう。


「『白タマゴ』はダブついちゃってるみたいね~」

「にゃあ~、マケボでも安いし、仕方ないにゃ。使う日がくるまでタンスの肥やしにゃんね」



大変お待たせしました、更新再開いたします!

お休み中も評価、ブクマ、リアクション、感想、誤字報告ありがとうございました。


まずは6章幕間、まったりおつきあいください~

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― 新着の感想 ―
牧場使用権?牧場契約?の話ありませんでしたっけ?てっきり既に牧場主だと思ってました…! 魔法の卵の孵化楽しみにゃんね〜
お待ちしてましたにゃん〜 待ってる間に猫ちゃんはでかい散財をしてた! 妄想卵なかなか産まないものなのねーって思っていたら 既に大量だったとはw 猫ちゃんは交流が広いからどんな組み合わせになったのかド…
更新にゃーん 猫ちゃん金策再び、そして乙女のかつら再登場とは思わなかったな。なにが金になるかわからんのがMMOの醍醐味
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