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その能力者は今となる

本編主人公の過去。主人公ともう1人しか出てきません。

タグにも書きましたが、グロ注意です。はらわたなどと言った表現が出てきます。

また、あらすじにも書きましたが、本編はまだありません。

文殊円音(もんじみね)。君の師匠になる女だ」




ぐちゃぐちゃになった自分の家を見て、呆然とする。ここで何があった?何が起こった?その答えは、一向に出ないままだった。どこにでもある二階建ての一軒家。それが自分の帰るべき家だった。リビングがあって、キッチンがあって、自分の部屋や、両親の部屋があった、ただただ普通の家。朝起きればおはようの言葉が家に響き、行ってきますの声は誰かが外出する際は必ず聞こえた。おかえりなさいと言われれば、ただいま必ず返す。普通の家庭。地震が起きた訳でもなければ、津波が来た訳でもない。火事にもなっていない。そうであると言うのに、自分の家は粉々になり、ところどころ焼き焦げている。


家にいた俺の家族は無事なのだろうか。周囲には見当たらない。でもきっと、いつもの笑顔で俺に笑いかけてくれるはずだ。


それにしても、自分の家がこんなに酷いことになっているのなら、家にあったものは軒並み使えなくなっているんだろうな。引越し、はすぐには無理だと思うから、おじいちゃんの家にでも行くのかな。でもそこにどうやって行くんだ。車も壊れてる。座席が車の外に出てるの、なんだか笑えてくる、気がした。ちっとも笑えないのに。


目を背けるな。


家の前の道路ですら少しぐちゃぐちゃになっている。うちの周りの家には全くもって被害はないというのに。おかしいな。強盗……だとしたらこんなことにはならないか。なら本当になんなんだ。


現実を見ろ。


地盤でも緩くなったかな。だとしたらうちの周りの家も壊れてるか。じゃあ違うか。なら、なんだろう。化け物でも来たかな。うちの家だけを狙って?ないな。うちには金目の物なんて全くないんだから。


目の前の赤から逃げるな。


……。違う。違う違う違う違う違う違う違う違う!!違う、これはちじゃない。父さんも母さんも生きてる。ここには居ないけど、きっとどこかで俺が来るのを待っているはずなんだ……!絶対、絶対に生きてる!


……あ、ちが、毛糸みたいに長くて、でも毛糸よりも太くて、赤くて、ぐねぐねしているそれは、はらわたでもなんでもないし、白と黒が、まみれた赤の隙間から覗いていて、何故か丸く見えてしまうあれは、目玉でもなんでもないし、どこか丸い形を残していて、今にもぐちゃりぐちゃりと聞こえてきそうなほどに無惨に潰れているそれは、心臓でもなんでもないし、ペンキをぶちまけたかのように赤い液体に染まった、色んなところから白や、肌色や、まるで肉のように見える何かがはみ出しているその大きな塊は、父さんでも母さんでもない……!!


ほら、全部、お前がやったんだろ?なぁ。


違う、違う、違う、違う。俺じゃない。生きてる、生きてるんだ。父さんも、母さんも。俺の、かえ、りを待って……。


キラキラとしている何かが、俺の目の前にあった。目の前のほとんどを赤が占めていたにも関わらず、それは赤になどまみれていなかった。その銀色を何も惜しむことがないかのように周囲に主張している。思わず、ペタリと地面に座り込んでその銀色に手を伸ばした。きっと、赤以外の色が見たかったから。でも、でも、そのひんやりとした銀色以外はもう、目に入らなくなって。カタカタと震える手を抑えようと更に手に力を入れる。


そう、それでいい。自分の本能に従え。


あ、あ、あ?な、にも、考えられなくなって。思考が何かで塗りつぶされて。違う。違う?何が違う?これであっている。これが正解なんだ。一瞬。一瞬で、終わるから。


さぁ、早く!


キィィィンッ!!その瞬間、高すぎる音が俺の耳に届いた。耳が痛くなるような高音に思わず手で耳を、同時に目をぎゅっ、と塞ぐ。そして、気づく。何かが足りないと。でも、何が足りないかなんてわからなかった。


どうしてその高音が周囲に響いたのか理解出来ずに、でも理解したくて恐る恐る目を開いていく。すると、 俺の目の前には、さっきまでそこにいなかった女性が立っていた。


「自分の能力に殺されかけるなんて、君災難だね。そのケースは初めて見たよ」


その女性は、ヒールのある靴を履いているからだろうか、身長が高く見える。ダボッとしたパーカーにジーパンのラフな格好。腰まで伸びた黒髪に、自信ありげな顔は、まるで俺のことを見透かしているかのようで、落ち着かなかった。


「誰」

「目が死んでるぜ少年。明るく明るく!」

「誰」

「ご、ごめんって、そんな目を向けないでくれ」


ごほんっと、咳払いをした女性。その手には俺がさっきまで持っていた銀色のナイフがあった。何故、どうして。それは、俺が確かに持っていたはず。手を離していないのに何故俺の手の中に無い?そうか、さっき何かが足りないと思っていたのはこれだったんだ、と自分の中で理解する。


「私の名前は文殊円音。君の師匠になる女だ。気軽に円音師匠と呼びたまえ」

「師匠?」

「そう、師匠」

「師匠……」


思わず口の中で呟く。この人は何を言ってるんだ。混乱した頭の中をどうにかして言葉の意味を考えたかったものの、冷静さなんてとうに消え失せていたせいか、いつまでも頭の中を整理することなんて出来なかった。


「そうだね、君の師匠になる身として1つ教えよう。君は一般の人間のが持っていない力を持っている。というか今発現した」

「……」

「そしてその力は君の××を殺し、さらに君自信をも殺そうとした」

「違う」


そうだ、違う。俺の××は死んでなんてない。さっきの行動は、俺自身の……選択、だろ?だから、そんな


「いいや違くない。君のその力のせいじゃなければ、一体誰が君の家を切ったんだい?」


切った?切った?切った。家を?切った?その言葉に周りの瓦礫を見てみる。すると、どれもまるで刃物で切れたかのような断面がそこにあった。


「君の力は恐らく武器の生成。それなら、このナイフにも説明がつく。使われた形跡が全くないし、君の目に入る場所に置かれていたのはこの惨状を見ればおかしいとわかるだろう?それに、ここらへんに血がついてないものなんて見当たらないぞ?君の服にも血がついてるしね」


服に、血?でも、どこも痛いところなんてないじゃないか。きっと、見間違えたんだ。血なんて、どこにも……。


「しかし、安心していい。これは君のせいじゃない。君のせいじゃないんだ」


驚きに目を見開く。まるで、包み込むかのように優しく紡がれたその言葉に、思わず手を伸ばして縋りたくなった。


「さて、改めて。君に、君の能力について教える師匠になる、円音だ。気軽に円音師匠と呼びたまえ」

「円音師匠……?」

「あっ、先生じゃなくて師匠って呼んでくれる可愛い!」

「?」

「いや、なんでもない、なんでもない」


師匠。師匠、なんて、生まれて初めて使う言葉、というくらい関わりのなかった言葉。俺は、俺は、この人について行けば、受け入れる事ができるのだろうか。


「さて、まずは君の名前を教えてくれ」

「俺の、名前は……」

本編をもし書いたとしたら、この話の中の一部で矛盾したかのように感じるかもしれませんが、理由がありますので、ご容赦願います。


また、師匠の名前である文殊は存在する苗字だそうです。

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