第1部 序章 誰が為に
みなさん、おはようございます、こんにちは、こんばんは、お疲れ様です。
エルキア公国北部地方の某市。
「同志指導者。ソ連極東軍からの、情報です」
薄暗い部屋で、1人の女性の元に、男が報告のために現れた。
「ついに、来たわね・・・」
彼女たちは、エルキア公国の地下に潜伏する共産主義者勢力の、エルキア革命政府を支持するグループに所属している。
同志指導者と呼ばれた女性は、エルキア革命政府の首班である、オリガー・バジョーフである。
オリガーは、眼鏡をかけ直す。
「ソ連軍は、何て?」
「はい、ソ連軍極東軍エルキア攻略軍は、近日中にエルキア山脈を越えて、地上軍を南下させる、エルキア革命政府は麾下の革命軍を使って、反政府活動を実施せよ。との事です」
「同志。現在の軍備は・・・?」
軍事を担当する同志たちに、オリガーが顔を向ける。
「北部地方では、革命軍に参加する兵員5万人を確保しています。ソ連の裏ルートで、武器・兵器は充実しています。さらに、正規軍、義勇軍、郷土防衛隊から武器、兵器の横流しがあり、武器、弾薬は充実しています。後方攪乱及び国境の村や小さな町であれば、占拠は可能です」
「革命軍の兵力は、20万人に膨れ上がっています」
「老人や子供を入れて・・・でしょう?」
「ですが、老人も子供も革命軍の一員としての意識は高いです。彼らを外す事は、出来ません!それに正規軍の一部にも、革命軍に参加する意向を示す部隊もあります」
軍事担当の同志からの報告に、オリガーは糧食担当の同志に顔を向けた。
「同志。糧食の状況はどうかしら?ソ連軍が侵攻すれば、彼らに提供する糧食も必要です。私たちが満足な反政府活動やソ連軍の攻勢に備えた支援が出来るだけの糧食は、あるのかしら?」
「はい、十分とは言えませんが、いくつかの農村部も掌握済みです。さらに、傘下に加入する市町村の備蓄食料を分けてくれる手筈になっています。とりあえず3ヶ月間は満足に戦う事が出来ます」
「3ヵ月・・・大公や公国首脳部は、大日本帝国と手を組んでいます。ソ連軍が侵攻すれば軍、糧食、武器、兵器、弾薬が供給されるでしょう・・・3ヵ月では、とても足りないわ」
「それは問題ありません。中国共産党軍、朝鮮人部隊、ソ連軍が大日本帝国本土に攻勢をかけます。とてもエルキア公国に、支援の手を伸ばす余裕はありません!指導者同志!」
同志たちの言葉に、オリガーは迷う。
「同志指導者!貴女がそのような態度で、どうするのです!お忘れですか!?公国内には、家が無く、仕事が無く、毎日の腹を満たす食糧も無い群衆が多くいます。推定でも30万人以上がいると言われています。この革命は、彼らのために行われる革命なのです!所詮、ロマノフ王朝の末裔は、自分たちと自分たちに従う者たちが、腹を満たせばいいと考えているのです。この体制を変えるには、武力革命以外に方法はありません!ソ連は、私たちに手を差し伸べました。彼らのような人の良い人種はいません!」
「・・・・・・」
オリガーは、黙る。
「私は・・・」
彼女が、口を開く。
「私は同志たちのように、無条件でソ連を信じる事は出来ないわ。ソ連がロシア革命の時に、私たちの父祖に何をしたのか。それを忘れてはいけないわ」
「それは昔の事です!指導者同志!今は違います!」
「同志指導者!苦しめられている群衆の事を、お考え下さい!」
「同志指導者!」
同志たちの言葉に、オリガーは決断した。
「わかったわ。計画を実行します。速やかに準備をして下さい」
革命。
その言葉には、ある意味で抗い難い魅力があることは否めない。
だが・・・
その魅力に憑りつかれた者たちによって、成されたそれは、それを望んだ者、望まない者、双方に深い傷と絶望をもたらす可能性を多分に孕んでいるという事が、これまでの歴史に記されているという事を決して忘れてはならない。
第1部 序章をお読みいただきありがとうございます。
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