第49話
ご飯も食べ終わったし、鎖をどうにかしよう。
磔のまま、寝るのも大変だろうし。
「じゃあ、腕の鎖からいくよ」
「うん…」
「ストーンドリル!」
カラムは、腕の前に大きなドリルを出現させ、高速で回転させた。
「!? きゃ!」
ギュワーン!!!! ガリガリガリガリ!
ドリルが鎖に接触し、激しい音をたてる!
1分以上、ドリルと鎖は、激しい音をたてていた。
ガリガリガリガリ! ガリガリガリガリ!
ガリガリガリガリ! ガリガリガリガリ!
ガリガリガリガリ! ガリガリガリガリ!
そして、唐突に音が止んだ。
「…………………」
「さてと、どうなったかな?」
カラムは、ドリルを鎖に当てるのを止め、鎖を見る。
「…………………」
傷跡ひとつ付いてない…
「ストーンドリルじゃ、鎖に傷ひとつ付けられないみたいだ」
「そう…」
「もうちょっと、試したい。今度は、ドリルを丸ノコにしてやってみる!」
「まるのこ?」
「まぁ、見ててよ」
「えぇ、いいけど…」
耳を塞ぐ仕草をしながら答えるフィー
ストーンバレットを改造し、石の礫を、ドリル状にして、
エアカッターの回転を与えたのが、ストーンドリル。
それに対して、石の礫を、回転するノコギリに見立てたのが
ストーンソー。
石のチェーンソーって感じだ。
次は、こいつで勝負!
「ストーンソー!」
カラムは、両腕でストーンソーを構え、高速で回転させた。
「!? きゃ!」
またしても、激しい音が鳴る!
ギュワーン!!!! ガリガリガリガリ!
ストーンソーが鎖に接触し、激しい音をたてる!
たて続ける!
ガリガリガリガリ! ガリガリガリガリ!
ガリガリガリガリ! ガリガリガリガリ!
ガリガリガリガリ! ガリガリガリガリ!
耳が痛くなった頃、唐突に静寂が訪れた。
「さてと、今度はどうかな?」
またしても、傷跡ひとつ付いてない…
「ストーンソーでも、鎖に傷ひとつ付けられない…」
「…………………」
現状、俺の持ってる攻撃力? じゃあ、鎖を切る事は出来ないみたいだな。
どうする?
「硬いなーいったい、なんで出来てるんだ? この鎖」
「確か、アダマンタイトとか言ってた様な…」
「へーそうなんだ、アダマンタイトか…
ちなみに、なんで知ってるの?」
「えーとね、わたしが鎖に繋がれる時に、アダマンタイトの鎖は
絶対に切れねーとかなんとか言ってたから」
悲しそうな顔をしながら、答えるフィー
ふむ。
そういえば、この鎖、どうやって付けたんだろ?
切っちゃえばいいやって思ってたから、疑問に思わなかったな。
鍵とか無いみたいだけど。
「フィー、ちょっと聞いていい?」
「うん」
「この鎖、鍵が無いみたいだけど、どうやって、付けたの?」
「魔道具みたいで、呪文を唱えたら、鎖に繋がれてた」
なるほど。鎖自体が魔道具だったか。
まてよ、魔道具も鑑定出来るんじゃないかな?
やってみよう。
鑑定!
鎖
武器種類 : 分銅鎖
武器名 : チェインメイデン
品質ランク : A
・耐久値 : A
・魔力値 : A
・切れ味 : ー
攻撃力 : 50
属性 : 無
特殊能力 : 巫女を拘束する力を持つ
説明 : ー
武器だった!
しかも、特殊能力が、巫女を拘束する力を持つだって。
なんてものがあるんだ!
ぐぬぬ
でも、武器なら武器で対抗しよう!
アダマンタイトの武器で、切ってやる!
斧とかあればいいな!
一応、フィーに、鑑定してる所を見せた方がいいか…
知らない間に、鑑定し終わってるとなると、
自分もされてるかもって、思うからな。
「フィー、魔道具なら、鑑定出来るかもしれないから、やってみるよ。」
「え? 鑑定するの? 鎖を?」
「うん」
「鑑定!」
「出来た?」
「うん、出来た」
「なんか、この鎖、武器みたいだよ」
「武器?」
「分銅鎖っていう種類だって。」
「分銅鎖?」
「鎖鎌とかってわかる?」
「あー忍者が使うやつ?」
うっ!
これに安易に答えると、俺が転生者ってのがバレるな。
「にんじゃ?」
「そう、しのびとも言う」
「しのび…」
んーこんな会話、地球からの転生者じゃないと、しない気がする…
一般的な知識なのか? 判断がつかない。
やっぱり知らないフリしかないな。
「くさりがまなら、わかるよ。ぐるぐる回して投げて、腕にからませて
引き寄せて、鎌でざっくり! しちゃう奴でしょ」
「そうそう、そんな感じの武器を、分銅鎖っていうみたいだよ」
「ふーん。それで、この鎖が分銅鎖なの?」
「うん。鑑定でそう出てる」
「へー」
「ただ、特殊能力があるみたいで…」
「特殊能力?」
「巫女を拘束する力を持つだって」
「うっ!? 嫌な能力だね…」
「ほんとに…」
「ただ、武器っていうなら、武器で対抗出来るんじゃないかな?」
「こっちも、アダマンタイトの武器を持ってきて、それで、
ぶっ叩くってこと?」
「そう、それ! ギルドとか、武器屋を探して、アダマンタイトの武器を
見つけてくるよ!」
「いいかも………」
そう言ったきり、黙ってしまったフィー
「ん? どうした?」
「また、行っちゃうって事だよね…」
「まぁ、探しに行かないと、鎖を切れないからね」
「…………………」
「鎖は切って貰いたいんだけど…
なるべく、早く帰って来て欲しい…んだ…」
フィーの目が真剣だった。
切実な願いを込めている感じが、伝わってきた。
「わかった。なるべく早く帰ってくるよ」
「絶対だよ! さっきは遅かったからね!
早く帰ってくるって言ったのに、超遅くて!
待ってる間に、お婆さんになっちゃうかと、思ったんだからね!」
うっすら涙目になってるフィー
「ごめん…」
「今度は早く帰ってくるから。」
「お願いね。それと、今日は、もう、出かけちゃダメだから!」
「え?」
「もう、夜だし、出かけちゃダメ!」
有無を言わさぬ迫力があった。
「わかった。今日は、ここで寝る事にするよ」
「よかったー! 今日はカラムと一緒だ。嬉しいな♪」
そうだ、毛布を持ってきてたんだ。
「そんな格好のままじゃ、寒いよね? 毛布をかけてあげる」
「あ…、ありがと」
壁を背に磔になってるフィーに、毛布を巻き付けていく。
うん、なんとか巻き付いたな。
「どうかな?」
「うん、あったかい。ありがとう、カラム。
カラムの分は?」
「ボクのは、これ」
シーツを取り出して、見せる。
「シーツなんじゃない?」
「そうだけど、ボクはこれで十分」
「そう? ごめんね。とっちゃったかな」
「そんな事ないよ、これで大丈夫だから。」
「うん、ありがとう」
こんなやり取りがあり、濃かった一日が終わっていく。
俺はフィーの足元に横になり、夜空を見上げた。
満天の星が、そこにはあった。
「カラム、星、見てる?」
「うん、凄いね。こんな星空、初めて見たよ」
「そうだね…」
うーん…
異世界なはずなんだけどな…
北斗七星がある…
むむぅ
北斗七星の北の方に、北極星。
北極星の東の方に、ベガだったかな?
北極星の更に北の方に、カシオペアの M が…
あれれれ
「二人で天体観測しちゃったね」
「そうだね」
「カラム、真ん中にある星、見て!」
「どれ?」
「ひしゃくみたいなの」
「ひしゃく?」
この世界でもひしゃくってあるよな?
地球の? 日本の? 記憶?
転生者バレしそうな会話は難しいな。
まぁ、ひしゃくくらいあるだろう。
「お水を掬う道具だよ。棒が付いてて、その先にお椀みたいなのが
あって、それで、水を掬うの」
「あぁ、なるほど。あの真ん中の奴かな?」
「そうそう! 7つの星を繋げて、ひしゃくになるんだけど、
わたしのとこでは、”北斗七星”って、言われてたよ」
「ほくとしちせい?」
やばいやばい、これ知ってたら、完全に転生者バレする!
ん? でも、この世界でもこう呼ばれてるのかも?
いやーどうなんだろ。
生粋のこの世界の人の考えというものを聞かないとなー、
催眠状態の子の言動だけでは、危うい。
とはいえ、この街には、2人きりだし…
転生者ホイホイ的な会話を、仕掛けて来てるんじゃないよな?
むむぅ…
困り顔でそんな事を考えていたのだが、
暗い場所で、横になった、という状況…
カラムの身体は、疲れていたのか、いつの間にか、意識を手放していた。
気が付かずに、フィーは話しかけていた。
「昔の人が、星を繋げて、夜空に絵を書いたのかな?
どうして、ひしゃくの形に繋げたのかは、知らないけど…」
「ねぇ、カラム…」
すぅすぅ
「寝ちゃったか…」
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