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Fighters  作者: 秋本そら
Conceal
22/33

22.信じること

「——なんで!犠牲者は私たちだけにしようって言ったばかりなのに!」

その頃、小百合とその創造主は言い合いをしていた。

「犠牲者は私たちだけで済む。()()()()()()()()()()()()()()()ね。全員で楽器を壊して、貴方を殺せば、はい、おしまい。どう?」

小百合はあっけらかんとして言う。

創造主は、唇を噛みしめる。

「……やっぱり嫌。そんなこと、できない。それに、中野小百合、あんたを倒さない限り、学校戦争は続くでしょう?戦いが好きな中野小百合なら……他のことを火種にしてまた戦争を起こすだろうね。

——ねえ、中野小百合。教えてよ。なんで音楽を嫌うんだい?特に吹奏楽を」

小百合は小馬鹿にしたように笑った。

「そんなの、あんたなら分かり切ってるでしょ。今更答える意味なんて——」

「私が決めた以外にも理由はあるでしょう?私が決めた『音楽のような癒しとなるものは戦いにはいらないから』という理由以外の、理由が……」

「……」

図星だったのか、小百合が俯き、黙り込む。

「私が……憎いんでしょ」

「!」

小百合が弾かれたかのように顔をあげる。

「……そうでしょ?」

「……」

小百合は何も言わない。

「もしそうなら、憎むのは私だけにして。他の関係ない人たちまで……巻き込まないで……!」

「……」

小百合はただ、創造主を、憎い相手を睨みつけるだけだ。

「私は……もう見たくないの。みんなが戦うところを……大切な人が敵に回っているところを……そして、ここの惨状を……!」

「……そのために私を殺す、と言うの?」

「……そう。中野小百合と、私を。

……結局、解決法はシナリオ通りにするしかないの。そうしなければ……本当の意味でこの戦争が終わることはない」

創造主はきっと小百合を睨んだ。

「呪いはかけさせない。絶対に」

「消せると思うの?」

小百合は嘲笑う。

「消せる。消してみせる」

創造主は、確信に満ちた声で言い放った。


「——伏せて!」

音楽室で、文香は叫んでいた。

「伏せて!危ない!」

全員が伏せた瞬間、空間にほとばしる、光。

それは眩しすぎて、全員が反射的に目を閉じた。

ただ、動きを封じられている2人、佳苗と大翔は光を直視してしまい、目の前が真っ白になった。

2人はその光になにかを削ぎ落とされているような、そんな感覚に陥った。

しばらくして、鈴が目を開けると光は消えていた。いや、光だけではない。

「——霧が、消えてる!」

その言葉を聞いた皆が目を開け、起き上がった。

「本当だ!」

「あの霧が……呪いの霧が、消えた!」

佳苗と大翔もようやく視力を取り戻した。

2人から黒い霧が抜けて、消える。

2人を縛っていたガムテープは、忽然と消えていた。


小百合の前で、創造主が崩折れた。息が荒い。

「——そんなに体力使っちゃって。それで呪いが消えるかどうかも分からないのに」

創造主は荒く息をつく。

「本当に良かったの?その異能を使って」

揺さぶりをかけるように小百合は言う。

「大丈夫。だって——」

創造主は笑った。

「私は信じてるから。きっと……きっと皆の中にまだ、光が残っていると」

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