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その48:サーチ&キル

少女達を転移させ牢屋を出た後は、戦闘の連続だった。


この施設(恐らく地下にある)は大昔の遺跡を再利用しているのか、迷路のように複雑な構造をしている。


壁、天井、床にはトラップも仕掛けられていて、地球で最も有名なアクティブすぎる某考古学者も顔負けな大冒険をしている気分になる。けれど残念なことに俺にダメージを与えうるものは存在しなかった。


矢が飛び出す罠は反射神経で避けれたし、転がって来た岩はヤクザキックで蹴り壊した。


トラップよりも厄介だったのが、この施設の職員だか組合員だかわからないような奴らと、薬や魔法などで人為的に強化された化け物だ。


前者に関しては負けると分かるや否や自爆するし、後者は中途半端なダメージではすぐに傷が塞がるしで、面倒くさいことこの上なかった。


某バイオなハザードのように頭部を破壊したり、高温の炎で焼却するとうまく死んでくれるので、できることなら炎魔法で一気に焼却処分したいところではあるが……狭い場所で炎魔法を連続して使うと酸欠になる可能性があるので、なるべくなら使いたくない。


そして奴ら……いくら殺そうが、一匹見つけたら百匹はいるがスローガンの某Gのように、無尽蔵かと言いたくなるほどわんさか出てくる。


「チッ……切りがない」


襲いかかってくる異形の化け物共の首を剣で切り飛ばしながら、周囲の状況を冷静に分析する。


(相手が物量で攻めて来るなら……その全てを呑み込んでやる)


バックステップで距離をとる。眼前に広がるのはおびただしい数の敵……イメージは全て呑み込む津波のような大量の水。


「発動範囲決定完了……『水ノ監獄(ウォータープリズン)』」


魔法発動と同時に、目の前の敵は全て通路を埋め尽くす程の大量の水に捕らえられた。

あらかじめ範囲を決めておいたので、俺の目の前で水が止まっていて壁のようになっている。


前世の沖縄県にある某水族館の大水槽にも引けを取らない大きさだ。残念ながら泳いでいるのは、美しい魚ではなく魑魅魍魎の化け物だが……。


「まだだ……『絶対零度』」


先ほどまで水塊だったものが一瞬で凍てつき、意味は違うが氷山の一角のようだ。囚われた敵は細胞の芯まで氷付けにされ、活動を完全に停止させている。

一斉掃討が終わり、ほっと一息ついた矢先だった。


「ガアァァァァァァァア"ア"ア"アアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」


氷に亀裂が入り、次の瞬間には砕け散った。崩れた氷塊を踏み砕きながら現れたソレは、鼓膜が破れんばかりの咆哮を上げた。


物理的な衝撃を体に伝えてきて、服越しにもかかわらず肌がビリビリする。


見るからに他とは明らかに異なる強化種。


そいつは一見巨大なイノシシのようだが、全体に黒い触手がウネウネと生えていて大変気持ち悪い。ジ○リのも○のけ姫に出てくる祟り神みたいだ。


これが薄い本ならばこの後俺は……いや、この話はやめよう。うん。俺の精神衛生上、非常によろしくない。


通路は全体的に広く作られているが、その巨体のせいで小さく思えるほどそいつは巨大だった。味方であろう氷付けの怪物達をその巨体で踏み潰しながらこちらに突進してくる。

迫り来る巨体から繰り出される触手の刺突を、剣で切り落とし、いなし、時には回避しながら、タイミングを図り、


「はああああぁぁぁあああ!!」


直剣やベレッタでは効果が薄いと直感で判断し、武器を『アイテムボックス』から出した大剣に持ち替えて隙のできた片方の脚に斬りかかる。が、


「マジか……」


片脚にダメージを負い体勢を崩したものの、切ったそばから回復していく。このような輩は自動再生が標準装備されているのがデフォルトなのだろうかと、ついつい思ってしまう。


傷が完全に塞がり体勢を立て直した化け物は、先ほどよりも大きな敵意と殺意をこちらに向けてくる……つまり、こちらが手を抜けば相手は一切の躊躇無く俺を殺す。


「おもしれぇ……一度と言わず何度でも斬ってやる!!」


本体を守るように追撃してくる触手を剣で片手間に処理しながら接近し、武器召喚で呼び出した無数の飛び回る剣と並行して攻撃を仕掛けていく。


脚を回復する前に重点的に攻撃して、体勢を建て直せないようにするのと、敵の弱点や特徴を観察をすることも忘れない。


観察してわかったことは、この怪物は触手による物量攻撃と異常な回復が強味で、その代わり目からビームを出したりするような特殊攻撃は持ち合わせていないということだ。


ちなみにやろうと思えば俺もできるぞ、目からビーム。真の英雄は目で殺す! いや……やらんけどさ。


「そろそろ(しま)いにしよーや」


右手を前に突き出し魔力を集中させると、舞のように動いていた無数の剣がピタリと止まり、剣先を怪物に向けーーそして握り潰すと同時に剣が四方八方から怪物に突き刺さる。それはさながら、光るハリネズミのようだ。


「内側は守れないだろ!」


俺と剣とを繋いでいる回路(パス)を通して魔力を送る。


「唸れ赤雷せきらい……『クリムゾンサンダー』!!」


魔法発動させると、赤黒い雷が凄まじい轟音を上げながら化け物の内側を焼き付くしていく。至るところから血を吹き出しながら激しく痙攣(アババ)する様は、見る者が見れば滑稽な道化のように写っただろう。


内側から直接高圧電流を流し込まれ細胞を破壊されたら、さすがの化け物も耐えられるわけがなく、あっさりと絶命していた。


周囲の空間が思わず鼻を覆いたくなるような悪臭に満ちている。


「終わったか……ッ!?」


牢屋を出てから鬼っ娘を探し出す為に常時発動させていた探知系の魔法に反応があった。平面ばかりを探しても見つからないはず……灯台もと暗しとは正にこの事だ。


「地下か……」


足元に目をやる。この下に鬼っ娘がいる……一目見た時、彼女に火無華と同じものを感じた。


この世界は……いや、()()()()()弱者に優しくなんてない。だから俺は変わった。


けれど、それではいつか限界が来る予感があった。火無華や囚われていた少女達を助けたのは俺の偽善だが、そうでもしないと俺の中の何かが壊れてしまう……そう思った。理由はそれだけだ。


「まさか()()を使う日が来ようとは……」


こんな状況だが、口元がニヤけてしまうのは仕方がない。


鬼っ娘を感知した座標から約百メートル離れた床に向かって、魔法を組み上げる。


空中に浮かぶのは、無骨で光すら呑み込む漆黒の杭だ。だが、その大きさは十メートル近くある。


「全てを穿てーーー」


知る人ぞ知る物理攻撃力特化のロマン兵器を……俺はこの世界でソレを魔法で再現する。


ーーーその名は、


「『パイルバンカー』!!!!」


ドォゴオオオオオオオオン!!!!


轟音と共に地面が文字通り吹き飛び、それでも杭の威力を殺すことができずに遂には崩落する。


二層、三層と、下にあった階層を容赦なく穿ち、吹き飛ばし、やがて一際大きな空間に出た。何十層分もの巨大な空間だ。


崩壊した階層の一部と共に自由落下しながら下を見ると、探していた彼女と目が合った。


「見つけた」

まいど、どうも。四葉でございます。


『あけおめことよろ』は活動報告として出したので、この場では割愛します。


あと数話書いたら、いい加減別の場所に行きたいと考えています。数々の回収しきれてない話もあるので、その対応もしないといけないのですがね……がんばります。


それでは、また次回のエピソードで会いましょう。さいなら。

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