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その44:一時の日常

 ひとしきりイチャイチャしてから俺たちは工房を後にして、昼食のために市場に隣接しているメインストリートに足を運んでいた。食事時とあり、海風に乗って食欲をそそる良い匂いが俺の鼻を刺激する。


 もちろん見た目を変えるアーティファクトの着用も忘れない。知らない人が俺たちを見れば、仲のいい姉妹に見えることだろう。


「ねぇごしゅ……お姉ちゃん?」

「……っ」


 黒髪ロング美少女の『お姉ちゃん』いただきました、ありがとうございます! ではなくだな、そう……これは演技なのだ。周りを欺くために必要不可欠なことなのだ。決して俺の欲望が性杯から溢れたわけでは断じてない。


 突然呻き声をあげた俺を不思議に思ってだろうか、コテンと首をかしげるそのベリーキュートな仕草が、さらに俺の理性(HP)をゴリゴリ削っていく。しかし腐っても半神である俺は、今すぐ夜のバーサーカーになりたい衝動をなんとか抑えることに成功する。


 このまま火無華を見続けるのは危険だと直感ではなく理性で判断した俺は、サッと目を反らした。その先に食堂らしき建物を発見し、いい加減歩くのにも少し疲れた(精神的に)のでそこで昼食を食べることにした。


 ◇■◇■


 私こと、しがない食堂の看板娘は今日この世の真理を垣間見た。何を言っているのかわからないだろうが、確かにこの目で見たのだ。


 いつものように昼時にも関わらずガランとした店内を見回し、今日も何度目かもわからないため息を吐いた。


「退屈だなぁ……」


 その時だった。天女が舞い降りた……そう錯覚するほどの美少女二人が、仲睦(なかむつ)まじく手を繋ぎながら店に入ってきたのだ。


 背格好が似ているので姉妹だと判断する。髪が短い方が姉で、長い方が妹だろうか?


 しばらくすると、姉(仮)が焼き魚の定食セットの大盛を注文してきたので、厨房へ伝えにもとい避難する。


 危なかった。主に理性が。脳が溶けるような、綺麗でいて少し色気のある声だった。


 料理が完成するまでの時間でなんとか冷静さを取り戻し、料理をお盆に乗せて美少女姉妹の席まで運ぶ。そして大股で受付まで戻る。せっかく冷静になった頭が再び再沸騰する。


(なぜ……なぜ、一つの座席に二人で座る?!)


 そうなのだ。姉が先に座り、その上に妹が腰掛けていた。後ろから抱きついている姉の顔は位置的に見えないが、妹の方は顔がだらしないほど蕩けている。


(ぐっ、可愛い!)


 大盛の定食を二人で分けながら食べる様子は、見ているだけなのにこちらまでドキドキしてしまう。


 会計を済ませて店を後にする美少女姉妹を忸怩(じくじ)たる思いで見送った後、店で働いている仲のいい少女と同意のもと()()だけで音があまり漏れない個室に入って溜まった欲求を解消した。


 ◇■◇■


 昼食を食べ終え、店を出た俺達は特に目的もなく町を歩き回っていた。途中からは疲れた火無華をおぶりながらの観光となったが、想像以上に楽しめたので俺としては大満足だ。


「火無華……って、寝ちゃったか」


 俺の背に身を委ねてすやすやと眠る火無華を起こさないように気をつけながら、先ほどから感じている気配に警戒を強める。


「数は……四人か」


 建物の影に一人、屋根の上に三人。

 いずれも俺達が孤立するタイミングを狙っているらしく、今すぐに襲ってくるような気配はない。


(ここはあえて相手の策に乗るか)


 日が暮れ始め、辺り一面が闇に覆われていく。俺は人通りの少ない空き地で、敵を迎え撃つことにした。


 空き地に着き辺りを見回す。一見すると誰もいないと思うが、気配を探れば例の四人がしっかりと俺達を追ってきているのがわかる。

 大きな声で『そこにいるのはわかっている!』とか言ってみたいが、それだと火無華を起こしてしまう。それはよろしくない。


 なので俺は、スピーディーでサイレントな手段で敵を排除することにした。


【武器召喚】で直接召喚した全体的に重厚で黒い曲剣を、気配のする屋根の一角に向かって投擲する。投擲する直前に火無華を起こさないように細心の注意を払いながら空中に放り出す。


 火無華が地面に接触するまで残り三秒。


「……っ?!」


 投擲した曲剣を目印にワープする。視界が一瞬で変わるので、慣れるまでかなりの特訓を要したが、今ではこの通りだ。

 一人目は声を上げる暇も与えず首と胴体を切り離した。


 残り2.3秒。


 振り抜いた曲剣をそのままの勢いで隣の建物の屋根に隠れている二人に向かって投擲し、一瞬で距離を0にする。

 先ほどと同じような動きで振り抜いた曲剣が一人の首を切り裂く。しかし、もう一人は手練れなのか耳を切られながらも初撃の回避に成功した。一瞬だけ合った目には驚愕の感情が色濃く浮かんでいる。


「甘い」

「なっ!?」


 曲剣を振り抜いた状況から遠心力をそのままに空中で縦に回転切りを繰り出す。さすがにこの追撃は予想していなかったのか、残った一人も体を真っ二に両断されて仲間の後を追った。


 残り0.5秒。


「よい……しょっと」


 衝撃を膝のクッションで完全に抑え、火無華を起こすことなく不審者の排除に成功した。


「さて、残った一人は……いた」


 脳内マップで表示された座標に、眠り薬の入ったグレネードを空間を繋げて投げ込む。付近から爆発音と同時に煙が発生する。

 しばらく間を置いてから気配のあった座標向かう。


「これは……鬼、なのか?」


 そこには薬によって眠っている、額から角を生やした少女がいた。

 黒髪黒目のショートヘアーで、全体的に汚れてはいるが磨けば光ることは間違いないような顔をしている。


 とりあえず辺りはもう真っ暗で、すっかり夜になっていた。事情聴取もあるので拠点までこの少女を運ぶことにした。


「【瞬間移動(ワープ)】」


 そう唱えた瞬間に景色が変わる。

 目を開けたらそこは、見慣れた我が拠点であり工房だった。

 ここにはいつでも戻ってこられるように一本の剣が地面に突き刺さっている。これを目印に瞬間移動するのだ。


「さて、一難さってまた一難かな」


 新たな出会いが吉と出るか凶と出るか……そんなことを考えながら俺は美少女を両手に抱き、自作の籾殻(もみがら)ベッドに倒れるように横になり眠りについた。

まいど月一更新が間に合わない、四葉です。


文字数が安定しないのと、この先の展開が思い付かないのが最近の悩みです。


ですので、自分のなかで構想が固まるまでの間、勝手ながら少し連載をお休みさせていただきます。


毎回こんな作品ですが読みに来てくださる読者の皆様には申し訳ありませんが、どうぞご理解をよろしくお願いします。


それまではリフレッシュ変わりに短編などを少し書いて投稿しようと思っていますので、よろしければ読んでみてください。


では、また。

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