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その40:奴隷少女との生活-1

短めです

商会を出た俺は、とりあえず個室に風呂が備え付けられた宿を借りることにした。

もちろんそんな宿が安いわけがなく、見た目に合わない大金を支払ったことで受付のお姉さんには怪しむような目で見られたが、目を反らすことで受け流した。


足早に宛がわれた部屋にまるで逃げ込むように入ると、溜まっていた疲れがドッと出てくる。


身体的な疲労はそこまでない……どちらかと言うと精神的な疲労の方が大きい。床にそのままへたりこみたい衝動をなんとかこらえ、ベットに腰を下ろす。


「はぁ……疲れた」


ため息と共に疲れも吐き出せたらと、ありえない馬鹿げた考えが真面目に思い浮かぶほどには疲れている。

しかし、このまま欲望に負けて眠るわけにはいかない。少なくともそれは、腕に抱き抱えているこの少女が完全に回復してからだ。それまで俺は一睡もしないつもりだ。


「とりあえず綺麗にするか」


やることは山のようにあるが、まずは身を清めなければ話にならない……とは言え、困ったことにこの宿の浴室はお湯は出るには出るのだが、温度が少々低い。

だがしかし、ここには俺という神様公式のチーターがいる。


「必要なものが無いなら造ればいいじゃない」とは我が親父殿の話である。


浴槽に手を向け『水魔法』と『火魔法』を合わせて造った温水を注ぎ込む。張ったお湯に手を入れて適温であることを確認し、満足気に頷く。


「服を脱がせるから手を上に上げてくれるか?」

「……はい」


掠れるようなか細い声で指示に従う少女の、ぼろ布同然の服などを脱がせていく。


そこに興奮が入り込む余裕は俺にはなかった……傷だらけの体は見ているだけで痛々しく、ただ早くどうにかしなければという使命感が俺の胸の内に渦巻く。


「それじゃあ洗うよ」


そう言って洗おうと手を伸ばし、肌に触れた瞬間だった。


「っ!?」


少女の肩がビクリと震えた。すると先程よりも青白く血の気の引いた顔で、ガクガクと震えながら俺の方を向きーー、


「ご、ごめんなさいッ! ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!」


俺の感に触ったと思ったのか、必死で「ごめんなさい」と精一杯の声量で謝罪を繰り返す少女。

主人の命令に逆らった奴隷の末路は……たぶん俺の予想は合っている。


すなわち絶対的な"死"だ。


奴隷……それは主人の気分次第で生死を決められる存在。

けれど俺は、


「大丈夫……俺は君を捨てたりしないから」


落ち着かせるように、なるべく優しく語りかける。

あの人はきっと見捨てたりなんてしないはずだ……どこの馬の骨とも知らない俺を『愛してる』とまで言ってくれたあの、お人好しの姉ならきっとーー。


「ご、ご主人……様?」


始めて聞いた少女の声はとても儚くて可愛らしい声だった。しかしそんなことを気にする余裕は俺にはなかった。


「え?」


気がつけば頬を涙が伝っていた。

視界がぼやけて目の前の少女の輪郭が曖昧になる……手で何度も拭いても止めどなく溢れてくる。


「はっ、ははは……弱いなぁ」


手でごしごしと、やや乱暴に目に溜まった涙を拭い、ぎこちなくも強引に笑顔を顔に張り付ける。


「ごめんな、心配させて……もう大丈夫だ」

「……?」


そうだ。あの人が俺にしてくれたことを、今度は俺がこの少女にする番だ。

そして今まで付けっぱなしで忘れていた見た目を変えるピアスを取り外す。


「ッ?!!?」


いきなり変わった外見に驚いてか、片目を白黒させている姿が何とも可愛らしい。

気がつけば涙は止まっていた。


「とりあえず俺は君と同じ『獣人』だ」


猫耳と尻尾を動かして言葉に信憑性を付ける。


「信じて……貰えたかな?」


やや困ったような顔で少女の顔を覗きこむと、ぎこちなくも頷いてくれた。どうやら信じて貰えたらしい。

その事にほっと安堵のため息を吐く。


「今すぐ信頼しろとは言わない……でもその前に洗おうか。できるなら怖がらないでくれると嬉しいな」


ふと、俺は前世の学校で授業の一環としてやった幼稚園児との交流授業を思い出した。


(あの時もこんな感じでずっと敬語だったけ)


懐かしき今となっては尊い過去の思い出を振り返りながら、今度は先程よりも落ち着いた少女の体を、俺は洗っていくのであった。


そして浴槽のお湯を入れ換えること3回。


体をバスタオルで念入りに拭き、髪はお得意の【合成魔法】でドライヤーのような温風をつくり綺麗に乾かした。


元々疲れていたのであろう、今はベットで安らかに寝息をたてている。

汚れて色がわからなかった髪色は、砂金のようなプラチナブロンドに輝き、虚ろな隻眼の瞳は曇った表情とは真逆の透き通るようなスカイブルーで、少女の整った容姿に拍車をかけていた。


「これから……か」


明日もやることが山積みだ。

とりあえず栄養のあるものを食べさせて体力を付けさせるのと、服などの日用品を買いに行かなければならない。


「ふふふ」


気が付けば口元には自然と笑みが浮かんでいた。

予定は少し狂ったが、これから先の事も考えれば悪くはないのかもしれない。


「早く仲良くなれるといいな」


規則正しい呼吸音で寝息をたてる少女の髪を優しく手で撫でると、くすぐったそうに身をよじる光景を愛しく思いながら、ちらりと窓に目を向ける。


「あっ」


水平線から明るい陽の光が溢れだしていて、ちょうど夜が明ける所だった。

まいど、四葉です。


この度は作品の投稿が遅れて、たいへん申し訳ありませんでした。

活動報告でも述べましたが、大雨でスマホがおしゃかになりました。

替えのスマホが届いたので急いで書き上げたしだいでございます。


作品ですが、しばらくはロリ×ロリの百合でほのぼのする日常を書きたいと思っています(少しバトルがあるかも)。


それとお気づきの読者様もいるかもしれませんが、作風を少し変えてみました。


『・・・・・・→……』


みたいな感じでこれから書いていこうと思い、少しでも読みやすい作品になることを祈っております。

※過去の作品の編集がまだまだなので随時変更していきます。


では、また。

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