その24:絶望の中で俺は 前編
「うっ……こ、此処は……」
目覚めた場所は、薄暗い地下室の様な場所だった。
俺は拉致されたのか……今俺は、アルファベットのXみたいな形をした鉄板に手足を拘束されていた。
魔法でどうにかしようと試みたが、駄目だった。どうやら、首に付けられた首輪が魔力の流れを乱しているらしい。
まったく……普通はチートで楽々解決!!ーーーと、いった場面なんだけど。
一見、落ち着いている様に聞こえるが……こうやって色々考えてないと恐怖で今にも発狂してしまいそうだ。
するとガチャン、と鉄製の扉が鈍い音を立てて開く。
中に入って来たのは、生理的嫌悪感を抱く様な小太りした中年男だった。
「おお、目が覚めた様だな」
ゲスい笑みを浮かべながら俺の方に歩いてくる。
「ここは何処ですか……?早く拘束を解いてキュウを返して下さい」
睨みつけながら言い放つ。
「ハッ!自分の立場が理解できていない様だな〜!!」
腹を思い切り殴られた。体は鍛えてはいるが、それでも大人の力で殴られれば激痛が走る。
「がはぁッ!!いっ……ギィ!があああぁぁぁぁぁぁぁぁあああ!!?」
鈍く、鋭い痛みが全身を駆け巡る。
男の拳にはギザギザとした『メリケン』がはめられていた。
殴られた場所には、4つの小さな穴が空いていた。ドバドバと血が溢れ出てくる。
此処で死ぬのか……、そう思った瞬間、足元から緑の光が俺を覆った。すると、みるみると傷が塞がっていく。
どうやら足元には回復用の魔方陣が描かれている様だ。
助かった……と思ったが束の間。
ヒュパン、と風切り音が聞こえた瞬間、
「いぎゃああああぁぁぁぁぁああああ!!!!」
今度は鞭で打たれた。
叩かれた所が裂けて血飛沫が飛ぶ。皮膚を破り、肉と血管を裂き、骨に当たり止まる。
すると、すかさず魔方陣が発動し、傷が癒る。さらに5回ほど叩かれる。
「お……お願いじまず!許してくだざい……!」
必死に懇願した。
早くこの苦痛から逃れたい、解放されたい。
そんな思いで一杯だった。それしか考えられなかった。
「さっきまでの威勢はどうした?簡単に折れてくれやがって……
じゃあ---」
そんな俺の気持ちを嘲笑うが如く悲劇は訪れた……。
「これなんだと思う?」
男が持っているもの……|キュウは衰弱していたが、生きている。
「キュゥ〜」
弱々しい鳴き声で俺に助けを求めている。
「や、止めて下さい!!お願いします!」
最悪の展開が頭を巡る。
「クックック、これが大事か?大切か?じゃあ…….」
ベキッバッキ、とキュウの首の骨が折れる音が、生々しく聞こえる。ピクリと大きく痙攣した後、キュウは動かなくなった。男が手を離すと、ポトリと床に落ちる。
最悪は現実となった……。
「あ、あぁ、き、キュウ?あぁ、あああああああぁぁぁぁぁぁぁぁああああああ!!!!!」
喉が張り裂けんばかりに叫ぶ。
キュウが死んだ……いや、殺された。この男のせいで。今までの旅でのキュウとの思い出が、走馬灯のように頭に流れる。
「よくも、キュウを……よくも、よくもおおおおおおぉぉぉぉぉぉおおおお!!!!」
「フハハハハハハ!!!!耳に心地いいな〜!こんな苦痛や理不尽を何故自分が……そう思うだろう?
教えてやる、すべてはお前が弱いせいだ。力が無かったからだ!恨むなら自分の無力を呪うんだな!!」
「くそおおぉぉぉおお!!!殺す!殺してやる!!!」
「威勢が良い雌猫だな〜!!!」
ガツッ……。
「つぅぅううう!!が、があああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああ!!!!!」
一瞬で鋭い痛みが体を突き抜けた。と、思ったらじわじわと激痛が俺を襲う。
右の手の平を太い釘が貫いている。
しかも、回復しても刺さったままの為に痛みが引かない。
左も同じ様な事をされた。
そんな暴力と回復のやり取りを数時間、もっと長かったか。
喘ぎ、悲鳴が続いたーーー。
◇◼◇◼◇
一体、いくら時間が経っただろうか?
12時間?1日?3日?分からない……。
あの拷問以来、男は此処に来ていない。
疑問を持ったが、来ないに越したことはない。
俺の心は折れてしまった。完膚なきまでに粉砕されてしまったのだ。度重なる激痛と苦しみで、体も心もに磨り減った。意識を失えば楽だったが、回復魔法陣がそれを許さない。
空腹も酷い……俺は此処に来て何も食べていない。きっと、空腹で苦しむ俺を想像して優越感を味わってるに違いない。
現在、俺は極度の飢餓状態に陥っていた。
(どうして……どうしてこんな事に……?)
そんな疑問が何度も頭を巡る。
眠ろうとしても、まともに寝付けず。眠れたとしても、刺さったままの釘の痛みと、飢餓で目が覚めるーーーその繰り返し。
それを何度も繰り返している。
何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、
(こんな苦痛が続くぐらいなら……早く……死にたい)
(死にたい……いっそ一息に殺して……いや、生きたい……)
(死にたくない、まだ死にたくない、死にたくない、死にたくない、)
(キュウが殺された……キュウ……)
(あいつが殺した……)
絶望で歪んだ心を徐々に、ドス黒い感情が蝕んでいく。純白な和紙に墨汁を垂らしたように、エリスの感情と思考を黒く黒く染めていく。
(誰が悪い?)
(あの男……いや、あの忍者も……全てだ)
(俺に害なす者、不条理、理不尽を強いる全て)
極度の飢餓状況、激痛、憤怒、憎悪、悲しみ、絶望、孤独感、生への渇望
それら全てがエリスの心を崩壊させ、新たなエリスを再構築した。
(敵はどうする?)
(殺す、この世から消し去る)
その価値観に容赦など無い。
敵と認識したら殺す。生きる為に、もう失わない為に。
不純物のない玉鋼で鍛えられた刀の様な、鋭く、強く、それでいて美しさすら思わせる程の鋭利な殺意。
自分の存在を脅かす者は、どこのどんな奴でも、たとえどんな手段を用いても、確実に、冷静に殺す、
(殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、)
今、この瞬間に明るく、無邪気な少女は崩壊した。そして、生きる為ならば手段を問わない冷静で冷徹な少女が生まれた。
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ブクマ、感想、評価をありがとうございます!
まいど、四葉であります!
なんか......あれですね、書いていて凄い罪悪感が......
一応「鞭」は物にもよりますが、プロが使うと先端の速度が音速級の速さになるらしいですよ。備考です、はい。
主人公を悲劇のヒロインみたく豹変させるにはどうすればいいか?結果がこれです。
すいません......二次創作物感が全開ですね......作者の国語力の無さをお許しください。
それでは、また。




