第二章妖怪悪夢 その1
新しい章、ぼちぼち頑張ります
妖怪悪夢 その1
俺は、子どもの頃、船で暮らしていた。やがて、ペア(ふたつ)の羽根になるはずのまだ肉塊が両肩の近くに生じ始めた頃だ。その頃、俺の見かけの姿は、全体として平凡なありふれた子猫のような姿をしていた。
俺は、エサにありつこうと、いつものように漁船の帰りを港の埠頭で待っていると、誰かが俺を捕らえて、籠に入れて、俺はドデカい船に乗せられた。それからの俺の暮らしは、そのドデカい船の中で行われることになった。
船には、たくさんのネコが暮らしていた。このネコたちというのは、船の中のネズミを捕らえる仕事をしていた。俺には、船の仲間の同僚たちのネコたちのような俊敏な動きができなかった。他のネコたちは、捕らえたネズミを船員たちが集まってのんびりと時を過ごしているそんな中、持ってくると、船員たちは、そのネコを大いに褒めて、褒美に上等のエサを与えていた。
ネズミを捕らえることのできない俺は、船員から、ネズミの屍体と交換にありついた美味そうに食うネコたちの姿をぼんやりと眺めていた。俺は、そのネコたちのことをうらやましいと思ったことはなかった。俺は、船でネズミを捕るのが俺の仕事ではないということを分かっていた。
俺の大海を進む船の中での俺の仕事というものは、一日中、船室に屯して、船室に集う船員たちの大声の馬鹿っ話を黙って聞いてやることであった。俺の仕事というのは、よほど大切な仕事であったらしく、ネズミを捕るのが仕事のネコたちより、俺は上等のエサにありつけていた。
もちろん、俺は、他のネコたちと一緒にも長い時間を過ごしていた。俺たちが船員たちと離れて過ごすための決まった場所というのが船の中にはあった。ネコたちは、その日にあった出来事を誰からともなく、ほかの仲間に報告した。
そんなネコたちの集合場所に、ヤツはいた。ヤツは、海中のクラゲのように、船の一角のネコたちの集合場所の空間に浮いて、漂っていた。そう、ヤツは、ネコたちとは少し離れた天井の梁あたりの空間から、無言で、ネコたちの話し合いを見守っていた。
ほかのネコたちは、俺からみると知覚が優れており、敏感なネコばかりであるのだが、不思議なことに、ヤツの存在に気づくネコは1匹もいなかった。
俺は、あるときに、ヤツに話しかけた。ヤツは、俺がヤツの存在に他のネコとは違い気づいていることに驚く様子はなかった。それどころか、ヤツは俺が話しかけるのを待っていたという。
俺は、ヤツに「妖怪飛脚、ドラゴンちび太」であると名乗った。そして、俺はヤツに名前を聞いた。
ヤツも、名乗った。ヤツの名前は「妖怪悪夢、ヤッホー」という。




