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サットン先生登場!


「あー!今日は樹先生と初めてのデートだったのに!」


がその女性の第一声だった。


でも、お母さまを見るとその人は大きな笑顔を見せて


「オデット!元気そうね!」


と声を掛けた。


お母さまは「ざ・・ざっっどん・・せんせい・・・」と言いながら、滝のように涙を流している。


二人はガッと近づくとギュッとお互いを抱きしめた。


お母さまは泣きぬれてもう声も出ない。


「また会えて嬉しい。もう二度と会えないと思っていたから」


そう言うと彼女は私を振り返って


「あなたがオデットの娘さんのスザンヌ?」


と尋ねる。


「はい、そうです!スザンヌと書いてスズと呼ばれています!」


「あなたもスズなのね。会えて嬉しいわ。私はオデットの家庭教師をしていた・・・」


「サットン先生ですね!私もお会い出来てとても嬉しいです!」


「貴方の蒼い瞳はお父さん譲りね・・・」


と言いかけてサットン先生は少し心配そうに


「・・・お父さんはリュカよね?」


と訊くので、大きく頷くと、その人は太陽みたいな笑顔で周囲を照らした。


ダミアンが


「・・・神子姫、再びお会い出来て嬉しいです。積る話もあるのですが・・・しかし、今は一大事でして・・・」


焦った様子で話し出した。


「一応、神龍から事情を聞いたわ。魔王が遺した何かの残留物が人間に憑りついてそいつが魔王を復活させたんだって?」


とサットン先生は言い、周囲をキョロキョロと見回した。


そして


「あ、いた!」


と叫んで、走って行く。とても華奢で折れそうな靴を履いているのに、驚くほど足が速い。


そして、ハエを叩くような感じで軽々と魔獣を打ちのめしていく。


私たちも魔獣を追い払いながらサットン先生に近づいた。


サットン先生が屈みこんだ木の根元には一人の男が倒れていた。死んではいないようだが、ぴくりとも動かない。


その男の手には大きな剣 ― 禍々しい魔王の剣が握られていた。


「・・・こいつが魔王に憑りつかれて、魔王を復活させた奴ね」


と呟いたサットン先生は


「・・・出来るかな・・?」


と言いながら、手のひらから光の魔法を発した。


すると、男の体から真っ黒なタールのようなドロドロが溢れ出てきた。


そのドロドロが大きくなり宙に浮いた。そして、サットン先生に襲いかかる。


その瞬間、彼女の全身が発光し真っ黒いドロドロは空中で雲散霧消した。


サットン先生は手早く横たわっている男に治癒魔法をかけると、地面に落ちていた魔王の剣を手に取る。


彼女が念を込めるようにして両手で剣の柄を握りしめると、剣の先端から先ほどと同様の真っ黒いタールのようなドロドロが浮かんで来た。


「はっ!!!」


とサットン先生が気合を入れた瞬間、その黒いドロドロも空中に散らばって消えた。


「さっ!これでいいわ」


と笑顔で告げると、サットン先生は魔王の剣を持ったまま私たちに振り返った。


「オデット!前回と同じ要領よ。また魔法陣を描ける?」


「は、はい!大丈夫です!」


とお母さまが返事をすると、今度はダミアンの方を見て


「ダミアン、あなたも手伝ってあげて。特に今回は余計なものをこの世界に残しておかないように奴の吐く炎に気をつけて頂戴」


と指示する。


ダミアンは


「御意」


と頷いた。


「・・・前回の魔王復活から間もないから、神龍のエネルギーがまだ十分に溜まっていないそうなの。だから、今回は私たちだけで何とかするって神龍に伝えたから。スズたちも全員手伝って頂戴。大丈夫。絶対に死なせないから」


とウインクする。


「はい!何をしたらいいですか?」


と元気よくパトリックが答える。


ジェレミー、クラリス、ジゼルも全員泥だらけだが、目は生き生きと輝いている。


「オデットたちが大きな魔法陣を描くから、そこに魔王を追い込んで封印するの。私が魔王と一緒にそこに飛び込むから。追い込むまでを手伝って頂戴」


「・・・魔王と一緒に?」


とジェレミーが眉を顰める。


「大丈夫よ!前回も同じことをやったから。頼りにしているわよ」


とサットン先生はカラカラと笑う。


この人の元気と明るさは伝染する。私たち全員に活力が戻って来た。


「・・・ジルベール」


とサットン先生がしみじみとした声で私の後ろに控えていたジルベールを見つめた。


「神子姫。再びお会いでき感無量です」


と真っ直ぐに彼女の瞳を見つめるジルベールから強い想いが伝わって来る。


「私もよ」


サットン先生はそう言って頷いただけだったが、そこには他人が関与できない二人の強い絆が確かに存在した。


「じゃあ、オデット。魔法陣は任せたわよ!」


「はい!」


それを合図に私たちは一斉に魔王に向かって走り出した。


一番動きにくそうな服装なのにサットン先生は飛ぶように走って行く。魔王の剣を握りしめたままだ。


す、凄すぎる・・・。


男たちが苦戦していた魔王に向かって一直線に走って行ったサットン先生は、一気に高く飛び上がり、持っていた剣を魔王の目の真ん中に突き刺した。


その剣は真っ白い光を放ち、魔王は苦悶の表情を浮かべる。


そうか・・・あの剣はセルジュの血を吸ったから、今では神龍の力も帯びているんだ。


神龍から発せられるのと同様の光を感じて、そう納得した。


その場で戦っていたお父さまとフランソワが


「「サットン先生!?」」


と叫び、精霊王が嬉しそうに


「神子姫!」


と呼びかけた。


サットン先生はニッと笑い


「いいか!オデットが今魔王を再び封じ込めるための魔法陣を描いている!そこに奴を追い込むぞ!」


と檄を飛ばす。


「「「「「「「っおう!」」」」」」」


と全員で檄に答え、それぞれが魔王に対する攻撃体勢を取る。


魔王はまだ苦しんでいる。地団太を踏むたびにズシンズシンと地響きを立てて地面が揺れる。


しかし、再び大きな咆哮を放つと、口から大きな炎を辺り一帯にまき散らした。


サットン先生は冷静に水魔法で炎を消し、再び攻撃を開始した。


私たちは周囲から襲い掛かって来る魔獣と戦いながら、隙をみて魔王にも攻撃を加える。


サットン先生は全て計算済みなんだろうが、彼女が攻撃するたびに徐々に魔王が異空間との扉に近づいていく。


魔王が炎を吐くたびにフランソワとパトリックが水でそれを抑え、お父さまとクラリスが風を使って、魔王を少しずつお母さまたちの方向に押していく。


・・・土は・・・出番がないか・・・と思いながらも、だったら私は魔獣退治に全力を注ぐ!とナイフを魔獣に投げつけた。


マーリンや精霊王たちも魔法を繰り出して魔王を攻めるが、魔王はしぶとく抵抗する。


サットン先生が


「前より手強いわね。よっぽど強い悪意を吸収したのかしら?」


と呟くのが聞こえて、私がそちらを見るとサットン先生がそれでも余裕たっぷりの表情でウィンクした。


その時、


「サットン先生!魔法陣が出来ました!」


というお母さまの声がした。


それを聞いたサットン先生の表情が緊張する。


「行くわよ!」


とサットン先生が高くジャンプをして、魔王のもう一つの目や鼻など弱そうなところに攻撃を開始すると、魔王は魔法陣の方向に後ずさっていく。


他の面々もサットン先生を後押しして、少しずつ魔法陣との距離が縮まってきた。


そして、魔法陣のすぐ目の前に魔王の背中が近づいた瞬間、私はサットン先生と目が合った。


不思議と彼女が何を求めているかが分かった気がして、私は土魔法を使い思いっ切り魔王の足元の土を高く盛り上げた。足の爪先が高く持ち上げられると同時に魔王が後ろ向きにバランスを崩す。


サットン先生は満面の笑顔で私に向かってサムズアップして、魔王の首根っこを掴むと一緒に魔法陣の中に消えていった。


・・・一瞬の出来事だった。


魔王は再び口を開けて炎を吐く仕草をしたので、ダミアンとフランソワとマーリンが即座に大量の水を魔王の口に流し込んだ。


一瞬炎を飲み込んだ魔王の間隙を縫って、お母さまがすかさず扉を閉じて封印を完成させた。


その場が完全な静寂になる。


聞こえるのは私たち全員の荒い息だけだ。


「・・・サットン先生は?」


と私が尋ねると


「大丈夫だ。前回と同じようにしたから、ちゃんと元の世界に戻れるだろう」


とダミアンがゼイゼイ言いながら答えた。


「・・・サットン先生・・・もっと話がしたかったのに・・」


とお母さまの頬には涙が伝う。


フランソワが地面に仰向けに倒れて


「でも・・・終わったんだよな?」


と呟くと、全員の口から歓声が上がった。


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