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溺愛・・・ただし、猫


フランソワは私が神経毒でやられていることを理由に、頑なに私を自分と一緒に公爵邸に連れ帰ることを主張した。


内心、子猫が好きなだけじゃないのか?と疑いたくなるが、


「神経毒の解毒剤を作るのも俺が適任だろう」


と言われて、お父さまとお母さまは渋々と了承した。


お父さまはペイントボールの痕跡を辿って馬車の後を追跡すると言うが、特殊ライトが必要なので一度公爵邸に戻ることにした。


お祖父さまとお祖母さまに事情を説明するのも大変で時間がかかり、私はクタクタに疲れていた。


お父さまは、お祖父さまと話し合う必要もあるからちょうど良いと、お祖父さま達の馬車で公爵邸に移動した。


お母さまは急ぎ王宮に行き結界の修復に当たるので、信用のおける使用人らがジェラールとウィリアムと一緒に自邸に戻ることになった。


私は何とフランソワと二人っきりで、彼の懐の中に入れられて移動することになった。彼の懐の中は温かくて気持ち良い。


途中ウトウトと眠ってしまうことが多かった。


馬車が揺れる度にハッと目を開けると、フランソワが信じられないくらい優しい目をして私を見つめていた。


いやだ・・・もう。レディの寝顔を覗き込むもんじゃないわよ・・・なんて虚しいことを考えつつ、少しだけ、本当に少しだけ子猫になって良かった、なんて思ってしまいました(恥)。


公爵邸に戻りフランソワが調合してくれた薬を飲むと、徐々に身体の感覚は普通に戻った。


フランソワは楽しそうに私の相手をしてくれる。


私をずっと愛おしそうに撫でるフランソワを見て、動物好きなのは知ってたけど、こんなに猫好きだったんだな、と感心した。


お行儀が悪いけど、食事の時もテーブルの上に何枚も布を重ねて、私専用のスペースを作ってくれた。


そこでミルクをぴちゃぴちゃと舐めていると、お祖母さまが感極まったように


「こんなに愛らしい生き物が存在するのね」


とハンカチを握りしめた。


お祖父さまが窘めると


「勿論!スズは辛いだろうとは分かっているのよ。でも、でも、こんなに可愛らしい子猫をあなたは見たことがあって!」


と言う。


お祖父さまは私の頭を撫でると


「確かにこんなに可愛らしい子猫は他にいないだろうな」


と頷く。


「でしょ!スズの髪の色のような真っ白なモフモフ、フワフワ、ツヤツヤの毛並み。触ると信じられないくらい滑らかで気持ちいいのよ!そして、スズの蒼い瞳。何て可愛らしいのかしら!」


と悶えるお祖母さま。


私たちを微笑ましそうに見ながら、お祖父さまは王宮に出仕するために出発した。


お祖母さまはお祖父さまを見送りに食堂から出て行く。


私は大人たちの言動を一切無視してミルクに集中した。


夢中になって飲んでいたら、私の額にミルクがはねた。


フランソワが今まで聞いたことがないくらい甘い声で


「ほら、はねたぞ」


と言いながら、私の額を丁寧にハンカチで拭ってくれた。


ついでに私の顎の下に指を入れてくすぐる。


・・・なんですか、このご褒美は―――――!


ふ、不謹慎です。色気駄々洩れです。


この色気は凶器です!


と内心は激しく動揺したものの、フランソワの指の気持ち良さにゴロゴロと喉を鳴らしてしまった。


猫ゴロゴロ攻撃の破壊力は私も理解しているつもりだ。


だが、フランソワが私のゴロゴロ攻撃に胸を打ち抜かれている様子に、私は戸惑いを隠し切れなかった。


こんなに甘い人だったっけ・・・?



その夜、フランソワは私を自分の寝室に連れて行った。


お祖父さまが気まずそうに咳払いをして


「・・・フランソワ。未婚の令嬢を寝室に連れ込むのは・・・」


と言いかけると、お祖母さまに


「んもう!無粋なこと言わないの。スズは今猫なのよ!」


と腕を掴まれて去っていった。


フランソワは満足そうに私を抱き上げて、寝室に連れて行く。


フランソワの寝室!?


私は鼻血がブーっと噴き出しそうだったが、必死で堪える。


寝る時に


「ほら、寒いだろう。ここに来い」


と優しく言われて、私はフランソワの寝台に飛び乗る。


蕩けそうな眼差しで何度も頭や背中を撫でられる。


猫にはそんな顔するんだ。狡いな。


その後フランソワは何と懐に私を入れた。


直接フランソワの肌を感じてドキドキする。


華奢に見えるけど実は鍛えている胸板にすり寄って丸くなって眠る。


幸せだ・・・。願わくば人間の姿で経験したかったなぁ。


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