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11/11

Season 3, Episode 11: Colden (コールデン)

登場人物


 アラン・ゼンズバーグ/詩人、シンディの叔父

 ※アレン・ギンズバーグではありません

 ジェイク・ケンドリック/作家、詩人、アランの親友

 ※ジャック・ケルアックではありません

 田所トシキ/東大休学中、シンディの恋人、マザコン好青年

 シンディ・ゴールドバーグ/アランの姪、カヨの弟子


 ステラ・サリンジャー/ジェイクの元妻、お菓子屋経営

 コールデン・サリンジャー/ステラの甥 ※ホールデン・コールフィールドではありません

 ファビー・サリンジャー/ステラの姪 ※フィービーではありません


☆なんちゃって参考文献

 アレン・ギンズバーグ「HOWL」

 ジャック・ケルアック「路上」

 JDサリンジャー「ライ麦畑でつかまえて」

 ※読んでなくても大丈夫!

シーン1 ステラの家、キッチン


朝。

ステラが手際よくパンケーキを焼き上げている。

大きな木のテーブルにはジェイク、アラン、トシキ、シンディが腰を下ろし、湯気の立つコーヒーを手にしていた。窓からは温かな朝日が差し込んでいる。

ステラ

「Sleep well?(よく眠れた?)」

ジェイク

「Yes. Thank you for letting us stay.(ああ、泊めてくれてありがとう)」

ステラ

「Of course! I have plenty of room.(どういたしまして、部屋はいっぱいあるしね)」

アラン

「Your house is beautiful, Stella.(広い家だな、驚く事だらけだ)」

ステラ

「Thank you. I bought it 10 years ago. With cookie money.(ありがとう!10年前に買ったの。クッキーマネーでね!)」

シンディ

「Cookie money? That’s amazing!(クッキーマネー?すごいですね!)」

ステラは楽しげに声を立てて笑った。

ステラ

「I never thought I’d say that.(でしょ?ワタシもビックリよ!)」


階段から重く不機嫌な足音が響く。

コールデンがリビングへと降りてきた。

黒いTシャツにジーンズ姿、背中にはリュックサックを背負ったままだ。その顔に表情はない。

彼はそのままキッチンへ足を踏み入れ、テーブルを囲む全員を冷ややかに見渡した。

コールデン

「Morning.(おはよう)」

ステラ

「Good morning, Colden. Pancakes?(おはよう、コールデン。パンケーキ?)」

コールデン

「Sure.(よろしく)」

彼は短くそう言うと、ジェイクの真正面の席に無造作に腰を下ろした。


数秒間の重苦しい静寂が流れる。

コールデンは目をそらさず、ジェイクをじっと見据えていた。ジェイクは居心地の悪そうに視線を少し泳がせる。

ジェイク

「…Good morning, Colden.(おはよう、コールデン)」

コールデン

「Morning.(おはよう)」

再び訪れた静寂を破るように、コールデンが冷ややかに言葉を継いだ。

コールデン

「You’re still here.(まだいたんだ)」

ジェイク

「…Yes. Stella invited us for breakfast.(ああ、ステラが誘ってくれたんでね)」

コールデン

「How generous of her.(おばさんは優しいからね)」

その声にはあからさまな皮肉が滲んでいる。

ステラ

「Colden…(コールデン…)」

コールデン

「What? I’m just stating facts.(何?おばさん優しいだろ?そのまんま言っただけじゃん)」


シーン2 朝食時のコールデン

ステラが焼き立てのパンケーキをそれぞれの皿に配っていく。

全員がナイフとフォークを手に取り、食べ始めた。コールデンは黙々とパンケーキを口に運んでいるが、その鋭い視線は時折、ジェイクたちの方をチラチラと探っている。

アラン

「So, Colden. Stella said you’re in high school?(コールデン、高校生?学校はどう?)」

コールデン

「Senior year. Graduating in a few months.(最終学年。数ヶ月で卒業)」

アラン

「College plans?(卒業した後は?進学?)」

コールデン

「Maybe. If I find one that’s not full of phonies.(さあね、考え中。マトモな大学があればね)」

アラン

「Phonies?(マトモな大学?)」

コールデン

「Yeah. Most colleges are just businesses. They don’t care about students.(そう。ほとんどの大学はインチキだ。金儲けだけ、学生の事なんて二の次)」

ジェイクは半分呆れたように息を吐いた。

ジェイク

「That’s… cynical.(そういう一面もあるかもしれないな)」

コールデン

「It’s realistic.(そういう一面じゃなくて殆どそれが目的だよ)」

ジェイク

「Maybe. But thinking it through is important.(まあ、ちゃんと考えるのはいい事だ)」

コールデンは冷ややかにジェイクを見据えた。

コールデン

「Did you go to college?(あなたは?大学いったの?)」

ジェイク

「…For a while. I dropped out.(中退だ)」

コールデン

「Of course you did. I read it in your book, right?(そうだったね、あなたの本に経歴出てるだろ?)」

ジェイク

「…Yes. But you must have some schools in mind, right?(まいったな…だけどどこか目星は付いてるんだろ?)」

コールデン

「Columbia. Maybe.(コロンビア、とりあえず…)」

アラン

「Columbia’s a good school. We went there too.(いい選択だ。俺たちもコロンビアだ)」

コールデンは冷ややかに鼻で笑った。

コールデン

「I know. That’s the problem.(知ってるよ、だからイヤなんだよ)」


コールデンは視線を移し、トシキとシンディを交互に見据えた。

コールデン

「And you two? What school?(それで?君たちは大学生?どこの学校?)」

トシキ

「University of Tokyo. But I’m on leave.(東京大学。でも休学中)」

コールデン

「University of Tokyo? That’s… impressive.(東京大学?それは…すごいね)」

コールデンはすぐに冷ややかな笑みを浮かべ、皮肉な口調に変えた。

コールデン

「Elite students on ‘leave’. Taking time to ‘find themselves’. Must be nice.(それでエリート学生が休学して自分探しか。いいご身分だ)」

トシキ

「It’s not like that.(そういう事じゃない)」

コールデン

「No? Looks like it from here.(違うの?だけどそういう風に見えるけど?そして君は?)」

シンディ

「I’m at UCLA. I was on exchange at University of Tokyo. I’m back in the fall.(UCLAよ、東京大学に交換留学にいってたの。秋から戻るわ)」

ステラ

「Oh, didn't you apply to Columbia, Colden?(そうなの?コールデンも願書出してたじゃない)」

シンディ

「Oh, really? Maybe you'll end up in LA! Don't worry, UCLA is probably even phonier than Columbia!(そうなんだ、もしかしたらLAにくるかもしれないのね!大丈夫よ、UCLAは!コロンビアよりインチキかもしれないけど!)」

アラン

「My sister is a professor at UCLA. And she’s Cindy’s mother.(妹がUCLAの教授だ、シンディの母親な)」

コールデンは言い返す言葉を失い、ただ口をつぐんだ。

コールデン

「………」


ステラ

「Colden.(コールデン)」

しかしステラが注意するより早く、シンディが先に口を開いた。

シンディ

「That’s enough, don’t you think?(もういいじゃない、そんなに突っかからなくても)」

コールデン

「I’m not picking a fight.(突っかかってるつもりはないよ)」

シンディ

「It came across as rude. Right, Jake? Allan?(失礼だったわ。ねえ、ジェイク、アラン?)」

ジェイク

「Nah. We don’t mind.(いや、オレ達は気にしてないよ。なあ)」

アラン

「He was just saying what he wanted to say.(ああ、彼は自分の言いたい事を言ってただけだ)」

コールデンはわずかに間を置き、それ以上は何も言い返さなかった。

ただ気まずそうに目を逸らすと、黙々とパンケーキを食べ続けた。


シーン3 ファビー登場

その時、玄関のドアが勢いよく開き、軽やかな足音が廊下を響いてきた。

Phoebe “Fabi” Salinger(ファビー)が帰ってきたのだ。17歳。明るい髪を揺らし、カジュアルな服にリュックサックを背負った彼女は、満面の笑みを浮かべてリビングに飛び込んできた。

ファビー

「I’m home!(ただいま!)」

ステラ

「Fabi! Good morning!(ファビー!おはよう!)」

ファビー

「Morning, Aunt Stella!(おはよう、ステラおばさん!)」

そのままキッチンへと入ってきたファビーは、テーブルを囲む全員の姿に気づいて目を丸くした。

ファビー

「Oh. Guests.(あら。お客さん)」


かかった。

コールデン

「Where were you?(どこにいってた?)」

ファビー

「Kaylee’s house. We had a sleepover.(ケイリーの家よお泊まりしてきたの)」

コールデン

「Kaylee’s?(ケイリー?)」

ファビー

「Yeah. My friend.(そ、クラスメイト)」

コールデン

「Just Kaylee?(ケイリーだけ?)」

ファビー

「…And some other people.(他の友達も一緒よ、何人かね)」

コールデン

「What other people?(どんな?何人?)」

ファビー

「Give me a break.(もういいでしょ!)」

ファビーはあきれ果てたように息を吐き出した。

コールデン

「You're getting defensive.(ムキになってる……)」

ファビー

「OK, fine. Oliver was there.(オリバーもいたわ!これでいいの?)」


コールデンはピタリと動きを止め、険しい顔をした。

コールデン

「Oliver?(あのインチキ野郎?)」

ファビー

「Yes. Oliver.(インチキじゃないでしょ!だから言いたくないのよ)」

コールデン

「He IS a phony! He pretends to be smart. He pretends to be nice. But he’s just manipulating you!(いいや、インチキだ、頭が良さそうで優しいフリをしてるだけだ。そんなのも見抜けないのか!)」

ファビーはあきれ果てたように天井を仰いだ。

ファビー

「Colden. You think EVERYONE is a phony.(コールデン…あなたに言わせれば、みんなインチキになっちゃうわ)」

コールデン

「Because they ARE!(みんなじゃない、インチキだからそう言ってるだけだ)」

ファビー

「He’s my friend!(彼は友達なの)」

コールデン

「He’s your BOYFRIEND. There’s a difference.(いいや、恋人だろ?明らかに違う)」

ファビーは顔を少し赤らめながら、慌てて否定した。

ファビー

「He’s… we’re just friends.(ただの…友達よ)」

コールデン

「Sure you are.(分かったよ、そうなんだろうね)」


ステラ

「Colden. Leave her alone.(コールデン、放っておいてあげて)」

コールデン

「Aunt Stella, he’s a bad influence!(ステラおばさん、彼はダメだ、わかるんだ。二面性がある、きっと傷つく)」

ステラ

「You say that about everyone she meets.(だってあなた、みんな批判するじゃない)」

コールデン

「Because I’m RIGHT!(本当にそうだからだ、ファビーは人を見る目がない!)」

ファビー

「You’re being overprotective!(もうやめて!干渉しすぎ!)」

コールデン

「I’m being REALISTIC!(まあいいさ、ただ忠告しただけだ)」

ファビーは深く溜息をつくと、ヒートアップした兄を無視してステラに向き直った。

ファビー

「Can I have pancakes?(パンケーキもらえる?)」

ステラ

「Of course, sweetheart.(もちろんよ、どうぞ)」


シーン4 ファビー、LA組にフレンドリー

ファビーは席につき、それまで険しかった表情をパッと明るい笑顔に変えて、テーブルの向こうにいるジェイクたちを見回した。

ファビー

「So, you’re Aunt Stella’s guests?(それで、ステラおばさんのお客さん?)」

ステラ

「Yes. This is Jake, Allan, Cindy, and Toshiki.(ええ。こちらはジェイク、アラン、シンディ、それとトシキ)」

ファビー

「Nice to meet you!(はじめまして!)」

先ほどのコールデンとは打って変わって、実に人懐こくフレンドリーな雰囲気だ。


ファビーはジェイクの顔をじっと見つめ、数秒間の沈黙のあと、突然目を見開いた。

ファビー

「Wait. Jake? Jake Kendrick?(待って、もしかして、ジェイク・ケンドリック?)」

ジェイク

「…Yes.(ああ)」

ファビーは興奮気味に続ける。

ファビー

「THE Jake Kendrick? ‘The Naked Dinner’ Jake Kendrick?(ホンモノ?裸の晩御飯の?あのジェイク?)」

ジェイク

「…Yes.(そう)」

ファビー

「Oh my god! You’re famous! Well, in New York literary circles, anyway. Or underground ones, at least!(すごい!有名人じゃん!地下文学のバイブル!)」

ジェイクは予想外のリアクションに、思わず苦笑いを浮かべた。

ジェイク

「You know the book?(知ってるんだ…)」

ファビー

「Of course! We read it in my English class last year.(もちろん!英語の授業でもあったよ!)」

ジェイク

「They teach it in high school?(俺の本が授業で使われてるのか?)」

ファビー

「Yeah! Beat Generation literature. It’s on the curriculum.(そうよ、ビートジェネレーション、カウンターカルチャーもカリキュラムにあるの!)」


ファビーは目を輝かせたまま、さらに勢いよくまくし立てた。

ファビー

「Aunt Stella told me about you. She said you were selfish. Reckless. Shot her in the face with a toy gun.(そもそもこの辺りの人はみんな知ってるわ、おばさんがモデルで出てる作品って!ステラおばさんにも聞いたしね!自分勝手な男だったって!頭を銃で撃たれたって)」

ジェイクは決まり悪そうに小さく身を縮こまらせた。

ジェイク

「…Yes. I did.(そうだな、モデルガンってのは分かってるんだよな…)」

ファビー

「But she also said you were talented. A good writer. Even if you were a terrible person back then.(知ってるよ、だけど才能があったって。当時は酷い男だったけど、いい作家になったって)」

コールデン

「Fabi…(ファビー…)」

ファビー

「What? I’m just repeating what Aunt Stella said!(何?おばさんに聞いた話よ?結局すごい才能があった、って話でしょ?)」

ステラはクスリと小さく笑った。

ステラ

「I did say that.(まあそんな話したわね)」

ジェイクは気恥ずかしそうに苦笑いを浮かべた。

ジェイク

「It’s… accurate.(まあその通りだよ、才能があったかどうかは分からないがね)」


ファビーはパッと視線を移し、今度はシンディとトシキに目を向けた。

ファビー

「And you two? Are you writers too?(それで2人は?作家仲間?)」

シンディ

「No. We’re students.(いいえ、私たちは学生よ)」

ファビー

「Students? Where?(そうなんだ。どこの学校?)」

トシキ

「University of Tokyo. But I’m on leave.(東京大学。今は休学中だけど)」

ファビー、興味深々で質問を続ける。

ファビー

「University of Tokyo? That’s SO cool! I want to go to Japan someday!(東京大学?すごいカッコいいんですけど!私も日本に行ってみたい!)」

それを聞いたコールデンが、不機嫌そうに鼻を鳴らした。

コールデン

「Japan is overrated.(日本を過大評価しすぎだぞ)」

ファビー

「You’ve never been there!(何よ、お兄ちゃんも行ったことないのに、偉そうに)」

コールデン

「I don’t need to. I can read about it.(いく必要はない。だいたい分かるだろ?)」

ファビーは呆れ果てたように目を白黒させた。

ファビー

「Reading about it is not the same as experiencing it.(読んだり動画見るとの直接体験するのは違うわ)」

コールデン

「Experience is overrated too.(経験だって過大評価だ。経験したって理解しないヤツが大部分だ)」

ファビーは大きくため息をつき、これ以上相手をするのをやめた。


ファビーは呆れ顔を切り替えると、トシキとシンディに向かって気さくに微笑んだ。

ファビー

「Sorry about my brother. He’s… difficult.(兄のことはごめんなさい。彼は…めんどくさいの)」

シンディはクスリと笑った。

シンディ

「It’s OK. We noticed.(大丈夫。気づいてる)」

ファビー

「He thinks everyone is a phony. It’s exhausting.(みんながインチキだと思ってるの。疲れるわ)」

コールデン

「I’m sitting right here.(ここに座ってるんだぞ)」

ファビー

「I know.(分かってる)」


ファビーは続いてアランに視線を向け、目を輝かせた。

ファビー

「And you’re Allan, right? Aunt Stella mentioned you.(あなたがアランね、ステラおばさんに聞いたことあるわ)」

アラン

「Yes. Allan Zensberg.(ああ、アラン・ゼンズバーグだ。よろしく)」

ファビー

「You’re a poet too?(よろしく!詩人なのよね?)」

アラン

「Yes.(そうだよ)」

ファビー

「That’s so cool! Do you still write?(カッコいい!今も書いてるの?)」

アラン

「Yes. Every day.(ああ、ずっと続けてるよ)」

ファビーは嬉しそうに微笑んだ。

ファビー

「I love that. Writing every day. That’s dedication.(ずっと続けてるんだ。素敵ね、2人とも!)」

すると、またしてもコールデンが冷ややかな口調で割って入った。

コールデン

「Writing every day doesn’t make you a good writer. If you write well but everything else is a mess, you’re just a phony at the end of the day.(続けてるからってすごいわけじゃない。文章が上手く書けてもそれ以外がダメなヤツは結局のところインチキだ)」

ファビー

「Colden!(コールデン!)」

コールデン

「What? It’s true. If someone has one strength and a million flaws, that’s how it works.(なんだよ、間違ってないだろ?一つ長所があっても短所だらけなら当然そういう評価になる)」

ファビーは呆れ果てたように盛大な溜息をついた。

ファビー

「Ignore him. He’s always like this.(無視して。いつもこうなの)」


そのやり取りを横目に、ステラとジェイクの視線がふと重なった。

二人はやれやれと言い合うように顔を見合わせると、どちらからともなく小さく苦笑いを浮かべるのだった。


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