26話 喜々快々
夏休みに入るまでわたしたち支援部に次なる依頼もなく、活動は花壇の手入れだとか備品の点検だとか、そういう無味なものだった。そして今日は終業式。学校という空間のアトモスフィアは多くの生徒の感情に左右されるもの。今日の学校は歓喜の歌が流れているようで、ドキドキする。「きっと何かが起こる」「なにが?」「なにかだよ」「たとえば?」「夢のように楽しいことが起こる」「どうかな」「渡り鳥が一斉に何処かへ行く」「それが自然」「ベテルギウスが爆発する」「それはもう済んでるかも」「うん」「もう終わり?」「素敵な出会いをする」「恋愛の話?」「違うよ」「それに関しちゃもう済んでるもんね」「からかわないで」「焦っちゃって。どうせバレないよ、彼鈍感そうだし」「そんなの分からないじゃない」
整列、ずらずらと移動後、点呼、体育座り。体育館のフロアに熱を奪われる。しばらくの時間待機、物々しい空間をステージの国旗と校章、花、見上げると見える交差する鉄骨、硬く重い扉、そして公務員の大人達が組み上げていく。
校歌の伴奏に六斗が起用されていたことには驚いた。起用といってもそれが重要な役割かは分からないが、ピアノも弾けるとは奴は音楽に造詣が深いのやもしれぬ。短いこの国の歌を終え終業式の終了。侘寂。
濃い影を落とす入道雲、不可視の蝉、いつも遠いところからわたしを呼ぶ花火の音、道の先の陽炎、蛙の合唱、悪魔的なクーラーの効いた部屋、イヤフォンから漏れるAlice in 冷蔵庫、真新しいタオルケット、冷やかさを保つフローリングに触れても変わらないわたしの体温、力強い深緑、ラクトじゃないアイスクリーム、南の空に赤く光るサソリの心臓が奔逸、自由自在な日々草。噓をつく進藤。ケイオスなわたしの世界。夏!夏!夏だ!ギターでもかき鳴らしたい気分だ。ギターといえば音楽、音楽といえば楽器、楽器といえばトランペット、ちとせと遊びたいな。バレリーも誘おう。どこへ行こう、どこへ行こう!レンタカーで北の彼方まで行こう。オレンジチョコレートハウスまでの道のりを流しながら。ハイウェイにのってどこまでもゆくんだ。わたしたちの行方はどこだ、どこでもいいじゃないか。今だけ、今だけだよ、こんなに自由を感じれる時は。一日丸ごとの記憶がないことも、時々幽霊に絡まれることも、謎のメッセージを見つけることも、今はすべてどうでもいいの。色んなことが勝手に起こってわたしにメリットとデメリットを与え続けるけれど、そんな自己中心的なワンダーワールドだけれど、こんなに自由で青春なわたしを制御することなんてできない。生きていることが心地良い。ねえ、そうでしょう、チャーリーブラウン。




