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77 -貴族リターンズ-

 ついにお披露目の日、私は貴族のような恰好で誕生パーティに参加していた。

周囲の雰囲気から浮かないようにする為、それと私自身はまだ男爵のご子息には会っていないので脅かしてやろうという悪戯心から冒険者の恰好は封印している。

まずは、いたって普通な立食パーティが始まる。

当然ながらアヤメやノワールは一旦魔石に格納している。

貴族の多くいるここで無闇に魔物を出すわけにはいかないからな。


「失礼します、マドモアゼル。ボクは______」


 気障な台詞が聞こえ、そちらには関わらないようにしようと思っていた矢先。

その男が話しかけていたのは、私だった事に気付く。

身体的に言えば私と近い年齢であろう少年だが......まずいな、名乗りを聞き損ねた。

今の私は貴族、今の私は貴族。


「......はい、何でしょう?」


「夜空のような美しい髪ですね。ボクと一緒に星を見ながらディナーなんて如何でしょう?」


 なるほど、ナンパか。

同い年くらいの貴族と話す経験がほとんどないからか、こんな経験も初めてだ。

どう対応してやればいいのか。


「あー......私では、貴方のような素敵な方に釣り合いませんわ」


「なんと、美しい女性は心まで清らかなようだ!やはり、後日2人で食事などいかがかな?......ああ浅学で申し訳ない、キミは何処の貴族家の令嬢なんだい?」


 そういえば、私はもうユースデクス家を所有しているわけだし、ユースデクスの名を名乗っても問題ないはずだ。

一応帝国の領地として公式に認められているわけだしな。

これ以上こんな話をしているのも面倒だし、仕方ない。


「ユースデクス子爵領所有者の、ルミと申します。以後お見知りおきを」


 私の名乗りに、近くで聞き耳を立てていた数人の貴族もギョッとする。

当然、目の前にいる気障ボーイは固まっている。


「ユースデクス子爵領と言えば、最近冒険者が1人で占領し、皇帝からその領地を下賜されたという......?」


 なるほど、意外と私の話は広まっているんだな。

冒険者だとバレる予定はなかったのだが。

自分が思った以上に、単独で子爵領を占領するというのは目立つようだ。

......炎魔公(アイツ)だって出来るだろう、そのくらい。

私は人差し指を口元に当て、可能な限り可愛らしく気障ボーイを見た。


「今はただ、グレトン男爵のご子息をお祝いしたく。内緒にしていただけますか?」


「......え、ええ!当然ですとも。ボクはユースデクス子爵家の繁栄を祈っていますよ」


 彼はただの貴族令嬢だと思っていた少女が遥か上の位にいる事を知ったからか、かなり焦っているが気障なキャラクターは崩れていない。

実際、男爵家のパーティに来ているような人間が子爵クラスの人間だと思わないだろう。

それも、こんなか弱そうな令嬢のような私が。

可哀想な事をしたかもしれない。

......まあ、いいか。




「では、我が息子より一言。オレン、こちらへ」


 パーティは進み、現在男爵のご子息であるオレンの挨拶が始まろうとしている。

出てきた少年は、10歳かそこらだろうか。

容姿で言えば、武術を嗜んでいるようには見えない。文官か魔法使いに良くいる体型だ。

魔法の素質は......権能(リヤ・エレ)を使っているわけではないから詳しくは分からないが、確かに悪くない。

私の妹であるイリスと比べてしまうとどうしても劣ってしまうが、少なくとも2流以上の魔法使いにはなれるだろう。


「オレン・グレトンです。私の誕生パーティに集まってくれて、嬉しく思います」


 年齢の割に、随分落ち着いた話し方だ。

周りの大人______当然グレトン男爵の事だ______が奔放だと、息子はこうなってしまうのかもしれない。


「父上は、私に優秀な魔法使いになれとおっしゃいます。ですが、私はそれを聞くたびに優秀な人殺しになれと言われているような気分になるのです」


 間違ってはいない。

国にとって魔法使いとは、殲滅力の高い兵士でしかない。

それになれと言われているのだから、嫌悪感を覚えても仕方がない。


「ですから、私は文官として帝国の為に尽くそうと思います」


 オレンは頭を下げ、そそくさと壇上から降りた。

自分を持っている素敵な少年じゃないか。

だが、魔法使いとして有用出来るかもしれない人材を放っておきたくない気持ちも分かる。

だからこそ、私が呼ばれたのだからな。

彼には、人を傷つけない魔法の世界を魅せてやることにする。


「ありがとう、我が息子よ。では次に、先の戦争で大活躍した冒険者による祝いの魔法を披露していただこう」


 さて、時間だ。

私は立ち上がった。

週3(くらい)投稿継続中です。

読んでいただき、ありがとうございます。

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