76 -魅せる魔法-
普段21時に投稿するようにしているのですが、前話の投稿がぶれてしまったのが未だにショックです。
「歓待を受けて行ってくれ!最高級のもてなしを用意しているんだ!」
1ミクロンたりとも興味が無いのだが、どうやって断ったものか。
ただでさえ上位貴族と関わって疲れているというのに。
......ん?待てよ。
「私の為にわざわざ最高級の歓待を用意する理由が分かりません。何が望みですか?」
「ぐ......お見通しという訳か。仕方ない、説明しよう」
聞くに、グレトン男爵の1人息子が1週間後に誕生日なのだという。
それを豪華に祝ってやりたいというのが、1つ。
そしてもう1つ......というか、これが本題だ。
「吾輩の息子なんだが、洗礼式を受けたところかなり才能があると言われたのだ。しかし、当の本人は戦争の道具になんてなりたくないと魔法の訓練をおろそかにする始末でな......」
「尤もな理由ですね。私も同じ理由で王国から逃げてきましたので」
まさか私が訓練をさぼることを肯定するとは思っていなかったのか、面食らったような表情をしている。
貴族ともなれば魔法の訓練は義務となるが、私はただの冒険者だ。
訓練を強制する筋合いなどない。
「ともかく、息子が魔法に興味を持つような魔法を誕生パーティの時に披露してほしいのだ。受けてくれるだろうか?」
ふむ、見栄えの良い魔法か。
私の得意とする魔法は闇属性、および夢魔法だ。
見栄えとは正反対に位置する魔法と言えるだろう。
正反対ともいえる概念を魔法として発動させる練習としては悪くない......か?
例のまつろわぬ者からもらった権能を試すいい機会にもなるかもしれない。
というか、アヤメの食べる口が止まらないので断る選択肢がどんどんなくなっている。
「分かりました。上手くいくかはわかりませんが、最大限努力させていただきます」
「本当か!いやあ助かる!当日まで、この屋敷に住んでもらって構わないぞ!」
男爵は私に向かって改めて握手を求める。
次は断る理由も無いので、普通に手を取る。
「ルミふぁん、アヤメはそこの女の子の面倒みたいっふ」
「食べ物を口に含んだまま話さないでください。彼女の剣の才能ですね?」
私の問いに、アヤメは頷く。
先ほどの反応速度、鍛えずにこれなら今後とんでもない逸材に化ける可能性があるからな。
恩を売っておくのも悪くは無い。
「ミナさん......でしたか?貴女が良ければアヤメから技術を盗んでください」
「わ、私ですか......?私は当主様の護衛が」
「護衛くらいならわたくしがしますわよ。ね、あるじ様?」
まあここにいる間暇だろうしな。
好きにさせてやるとするか。
「他人の厚意には甘えておけ、帝国の救世主の力を間近で見られる良い機会だぞ」
男爵も乗り気なようで、アヤメとの訓練を勧めている。
短い期間だが、どれだけ成長するか見ものだな。
「ひとまず、好きなだけ食べると良い!その為に最高級のもてなしを用意したのだからな!」
やはり悪いやつではないようだ。
さっさと食べて、披露する魔法を考えなくてはな。
△▼△▼△▼△▼△
私達3人に用意された部屋で、私は構想を練る。
男爵のご子息というのは、10歳なのだという。
その年齢なら、単純に見た目が良いだけでは興味を持ったりしないだろう。
腕まみれのアイツからもらった、《目利》は使えないだろうか。
《認識》で見てみたところ、あのまつろわぬ者が言っている効果と変わらないようだった。
となると、今回使い道はなさそうだな......いや、そう決めつけるのは時期尚早だ。
魔法というのは、そういった偏見から解き放たれるためのものだ。
「使うとしたら、まあ闇属性か夢魔法だよな......せっかくなら得意な魔法を見せたいしな」
私が魔法に興味を持ったのは何故だっただろうか。
ああ、思い出した。
手っ取り早く強くなるためだった。
手っ取り早く強くなって、最高の睡眠環境を整えるためだ。
男爵のご子息は、戦争の道具になりたくないと言っていたと聞いた。
ならば、魔法が戦争の為だけに存在するものではない事を教えてやればいい。
ふうむ、その為には私が何かを見せるだけでは物足りないな。
「参加してもらうというのも......悪くないかもしれないな」
前世で見た手品で、観客の中から無差別に選んだ相手に手伝ってもらうというパフォーマンスが盛り上がっていたのを思い出す。
自分もこのパフォーマンスに参加しているのだという、ある種の成功体験が気持ちいいのだろう。
「となると、危険は最大限排除しないといけないか」
男爵位とはいえ、帝国の貴族のご子息だ。
間違っても怪我をさせたり、精神的ダメージを負わせるわけにはいかない。
しかし、方向性は定まった。
錬金術・闇属性・夢魔法の融合を実現して見せよう。
「アヤメもノワールも忙しいだろうからな......1人で行くか」
今となっては珍しく感じる、1人の時間を楽しみながらパフォーマンスを完成させるとしよう。
週3(くらい)投稿継続中です。
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