75 -グレトン男爵-
お待たせいたしました。
読んでくださっている方、本当にありがとうございます。
これからしばらくは、2日に1本......つまり、以前と同じように週3くらいの投稿になると思います。
「ん......アヤメ?ノワール?」
目を覚ますと、2人の魔力が近くに感じられない。
普段であれば、仮に二人が寝ていても少しは魔力の動きがあるはずだ。
特に、ノワールの魔力は膨大だからな。
......つまり、2人が返ってこないほどの短時間しか経っていないか、何故か2人がなかなか帰ってこないかだ。
そして、窓から差し込む陽の光を見るに日は跨いでいるはず。
前者の線はなくなった。
ふと扉の方を見ると、扉の下の隙間から紙のようなものが顔を出している。
寝転がったまま、それを浮かび上がらせて手元に引き寄せる。
「......下衆が。そこまでやるのか」
そこには、長ったらしい文章でアヤメとノワールを捕えている事をつづっていた。
アイツらが戻ってきていないという事は、暴力が通用しない相手という事だ。
......貴族か。
私は身支度をさっさと済ませ、最悪の場合を考えながら部屋を後にした。
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豪華な調度品、上品な食事の数々、そして最高級のもてなしが用意されている。
あの冒険者も、流石に驚いてひっくり返るに違いない。
彼女の従魔はあらかじめ、こちらの手に置いてある。
これで来ないという事態も避けられるはずだ。
ふはは、吾輩の作戦は完璧である!
「センバス、茶を」
「は......」
執事が淹れた紅茶を飲みながら、きたるその時を待つ。
この吾輩、______の威光に触れられる事に感謝するがいいぞ!
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帝都から1時間ほど馬車を走らせ、帝都の中枢と比べれば大分栄えていない地域に差し掛かってきた。
そんなところに、その屋敷は存在していた。
上位貴族の屋敷や千剣城を見てきて目が肥えたのか、それとも実際に大したことがないのかは分からないが......。
正直、かなりみすぼらしい屋敷だ。
男爵家でもなければ、もっと屋敷の手入れに力を入れろと言われるようなレベルだ。
「この程度の屋敷であれば、丸ごと吹き飛んでも痛くないと考えたか?あの嫌味そうなオロー侯爵なら考えそうだ」
しかし、どうしようもなくなったら建物を丸ごと吹き飛ばせるのはこちらも同じだ。
まあどんなに質が高かろうといざとなれば吹き飛ばすが。
「失礼します、従魔を返していただきに参りました。今のところ争う気はありませんので話を聞かせていただけますか」
すんなり返してくれるのであれば、わざわざ争う必要は無い。
ただでさえ、いつ『凶星』が襲ってくるのか分からないのだから魔力を消耗するような事は避けたい。
だが、ここまでした人間がすんなり返してくれるとも思えない。
「開けていただけないのであれば、まずは扉から吹き飛ばすつもりですが......」
私の声に反応したのか、はたまた全く違う理由なのかはわからないが扉が開く。
そこから出てきたのは、いかにもな敏腕執事だった。
きっと名前はセバスチャンだろう。
「お待ちしておりました。当主様がお待ちですのでこちらへどうぞ」
話が早いな。
まさか、戦う気はないのか?
しかし、だとしたらあの長ったらしい手紙は何だったんだ。
疑問を解消できないまま、執事について歩く。
しばらく歩き、執事が部屋の扉を開いた。
そこには、屋敷の雰囲気からは想像もできないほど豪華な部屋が広がっている。
「ようこそ、我が屋敷へ。吾輩が当主の、グレトン男爵であ~る!」
そして、少々うるさい青年が私の従魔と共に食卓を囲んでいた。
......妙な魔力は感じない。
男の隣に立っている若い女は、戦いの心得があるようだが。
「お招きいただき、ありがとうございます。ルミと申します」
冒険者用の外套ではカーテシーも出来ないので、軽く頭を下げる。
男は嬉しそうにこちらに近付き、握手を求めるように手をだした。
私は咄嗟に距離を取り、糸を辺りに張る。
「お、お、なんだ!?」
「当主様!」
私の糸に、護衛らしき女は即座に反応した。
この反応速度、アヤメやノワールにも匹敵するかもしれない。
彼女は男爵の前に飛び出し、私の糸を剣で受ける。
「何のつもりだ!当主様は友好の証として握手を求めたのだぞ!」
何を頓珍漢な事を言っているんだこいつは。
敵陣で、はいそうですかと握手をするはずが無いだろうに。
「では初めに、私の従魔を返していただきたいのですが。貴族の名を使って拉致まがいの事をされては友好も何もないでしょう」
私の言葉に、男爵は心底理解できないといった表情で言った。
「拉致?手紙にも、丁重に扱っているから会いに来いと書いただろう?」
......こいつ、言葉通りの意味で言っているのか?
貴族の言葉遣いというモノを知らないという事があり得るのだろうか。
「あれでは、従魔を監禁しているから無事に返してほしければ早く来いという捉え方しかできません」
「何ィ!?おいミナ!あれでいいと言っていたではないか!」
「私に言われても!センバス様に秘密で出すっていうから必死に考えたのに!」
うだうだと喧嘩している男女に、興が削がれて溜息を吐く。
まあなんだ、ウチの従魔が馬鹿2人に絡まれただけで良かったと考えておくか。
「では、さっさと返してください」
「待ってくれ!歓待を受けてくれないというのか!?」
ふぅむ。
馬鹿2人といっても、特別面倒な馬鹿2人なわけだ。
私はアヤメ達を2人だけで行かせたことを心底後悔しながら、彼等の話を聞くことになった。
読んでいただき、ありがとうございます。
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