67 -銀龍-
「物騒ですね。私は本気で憂いているのですよ」
「雰囲気が変わったな。そちらが貴様の本性か?」
アヤメがメイドの剣を弾き、私の前に立つ。
左手に盾を持ち、完全に戦闘態勢に入っている。
私達は一歩も動かず、話を続ける。
「前皇帝との能力の差を世間が不安視していることは知っています。見たところ、この護衛の方も皇帝も私1人にすら勝てません。そんな現状をどうにかしたいと思っております」
「普通にしていいとは言ったが、そこまでずけずけと余の力の無さを語るとは。よっぽど自信があるようだな?」
正直、《認識》が上手くいかなければそれ以上何か出来る事は無い。
しかし、魔公と戦える前皇帝の息子が、Aランク程度の器に収まるはずがないのだ。
何かがあると思っている。
「私の持っている力に、他人の才能を見出すというものがあります。それを使いたいと思っております」
「興味深い力だ。それが本当なのであれば、願っても無いことだ」
自分の非力を認め、舐めた事を言う少女に怒ることなく話を聞く。
帝国の強さの理由が分かる気がするな。
王国なら9割9分打ち首だ。
「その力、今ここで見せてみろ。ゼツラン」
「御意に」
皇帝が名を呼び、先ほど私に攻撃してきたメイドが膝をつく。
つまり、このゼツランというメイドに《認識》を使えば良いのか。
言われてみれば、皇帝に未知の魔法を使うというのはまずいか。
私は言われたとおり、彼女に手を向ける。
「《認識》」
当然、出力を最大限落としている。
ふむふむ......ほう?
これは、面白いな。
「銀龍ゼツラン......『人化』というスキルを用いてメイドとして皇帝に仕えているわけですね」
「......!?」
私の言った事が全て当たっていたようで、驚いて思わず立ち上がるゼツラン。
皇帝にもお気に召していただけたようで、顎に手を置いて目を見開いている。
「人化していることで力がかなり制限されているみたいですね。解除した上で銀龍の魔法を上手く使うのが一番才能を活かせるかと」
「銀龍の魔法までお見通し、という訳だな。貴様のいう事が本当なのは分かった。それについては今後、追って使いを向かわせる」
よし、気に入ってもらう事には成功した。
あとは、1つ目にお願いした方の話がしたい。
私がそう言うと、ゼツランはまた元の場所に立った。
あくまで給仕に徹するようだ。
「初代皇帝がまつろわぬ者と共にこの城を建てたのが、帝国の始まりだと聞いている」
初代皇帝はまつろわぬ者と交流があったのか。
しかも、建国の手伝いまでしてもらっているという事は、帝国の建国においてかなり深くまで関わっている。
しかし、今でも感じるこの雰囲気の理由にはならない。
「この城を建てたまつろわぬ者は、とある部屋に仕掛けをした。力を持つ者が自分に問いかけた時、何かを授けられるように」
「人間と交流する窓のようなモノをこの城に作った、という事ですか」
私に力をくれた目玉はあくまで傍観を目的としているが、考えてみれば人間世界に積極的にかかわる奴がいてもおかしな話ではない。
故にそんなものを作ったのだろう。
「行ってみると良い。何か貰えるだろう」
「良いのですか?」
こういう秘密や力の源泉というものは、秘匿され使用を禁止されるものだ。
みなが知れば、知らないものと知った者の差が生まれないから。
しかしやはり、帝国は使えるものは全て使うというのが信条。
私のやり方にも合っている。
「褒賞だからな、気にせず行ってくると良い。先ほども言ったように余の件についてはまた別の日に時間を作る」
至れり尽くせりで、心が躍ってしまうな。
「ありがとうございます。いただいた御恩は帝国の役に立つことで返したいと思います」
『凶星』の件をどうにかするだけでも、充分恩返しになると思っている。
そのためにも、必ずここのまつろわぬ者を一目見たい。
「ゼツラン、案内を」
「御意に」
私が立ち上がると、皇帝はゼツランに案内を命じた。
先ほど剣を向けられた相手だが、彼女は初めから失礼が過ぎれば攻撃すると言っていたからな。
それを無視して舐めた発言をした私が悪かったので、正直気にしていない。
部屋を後にし、ゼツランについていく。
しばらく歩いていると、彼女が小さな声で言った。
「......先ほどの件、他言無用でお願いいたします」
先ほど......?
ああ、銀龍の件か。
秘密にしているという事すら知らなかったが、誰に話す必要も無い。
「口が軽く見えますか?敵でないのなら私が貴方の秘密を話す事はありませんから安心してください」
「ルミさん、人と関わるの嫌いっすもんね~ってイタタタ!」
余計な事を言うアヤメの手首を糸で縛る。
「ありがとう、ございます......ここです」
話している間に、部屋についたようだ。
確かに、一番まつろわぬ者の雰囲気を感じるのはこの部屋からで間違いない。
「待っておりますので、終わりましたらご自分で出てきてください」
「ありがとうございます。では行ってきますね」
鬼が出るか、蛇が出るか。
楽しみだ。
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