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65 -謁見?-

 千剣城。

石造りの巨大な城だが、確かに何か異様な雰囲気を感じる。

これがミェンの言っていた、意思を持っているとかいう事なのだろうか。


「ミェン、戻ったら真面目に仕事するんですよ?」


「は、はい。もちろんです」


 別れ際、彼女に釘を刺しておく。

いじめる為だけに連れて行ったとギルドマスターに勘違いされたく無いからな。

業務態度に改善が見られれば、少しは印象が良いだろう。


 馬車を降りると、給仕のような女性が出迎えた。

キチっと固められた銀髪に、同じく銀色の鋭い目つき。

給仕長でもやっていなければ詐欺だと言わんばかりの格式を感じる。

......いや、服装こそメイド服だが、身のこなしや魔力の質が一線を画している。

少し警戒しておこう。


「お待ちしておりました。ルミ様ですね?」


「はい。皇帝陛下の召集に馳せ参じました、ルミでございます」


 王国式のカーテシー______あの数日で改めて母上に叩き込まれたもの______を披露し、城内へ案内してもらう。

非常に高級感がある内装だが、嫌らしさを感じない落ち着いた雰囲気だ。

知らない者が見たら、こういった内装の1つ1つにかかっている値段の桁にひっくり返ることだろう。


「美しい城でしょう?」


 私が物珍しそうに見ていたのに気づいたのか、案内をしてくれていた給仕が嬉しそうに言う。

やはりここに勤めて長いのだろうか、自分の事のような笑顔をしている。


「ええ。内装もそうですが、この城は今まで見たどの建物より素敵だと思います。人ならざる力も感じますし......」


 私が最後まで言い終わらない内に、彼女は私の方に振り向いた。

それも、目にも止まらない速さで。


「人ならざる力......やはり、皇帝が目をつけるだけはありますね。どこまで分かっているのですか?」


 彼女はこちらを向いたまま、前に進み続けている。

少し怖いのでその歩き方はやめてほしいのだが、そんなことお構いなしだ。

それほどまでに気になることのようだな。


「そこまで詳しい事は分かっていませんが......強いていうなら、まつろわぬ者が関わっている可能性が高いことでしょうか」


 あの目玉や、私を焼いた炎から感じたような重厚感のある力ではないが、間違いなくまつろわぬ者の力を感じる。

そして、建てられてから時間が経っていることが力の弱い理由だと思っていたのだがどうやら違うようだ。

皇帝のいるであろう場所に近付くほど、まつろわぬ者の力を強く感じるようになっている。


「城に入ってすぐ気付いたのは、貴女が初めてかもしれません。5年前、まだ幼かった貴方が炎魔公と戦って生き延びたというのにも頷けます」


 あいつに焼かれたからこそ気付けたようなところはあるのだが、余計な事は言わないでおこう。

だが、この給仕の言葉で本当にまつろわぬ者が関わっていることが分かった。

第一目標である城の秘密に近づけたのは、思わぬ収穫だ。


「この部屋に皇帝がいらっしゃいます。貴方は冒険者ですのである程度は目を瞑りますが、目に余ると感じれば制圧させていただきますのでご注意を」


 彼女の言葉に、アヤメもノワールも......当然私も警戒する。

彼女1人に負ける事は無いだろうが、この城にどれだけの戦力がいるのかを私は把握しきれていない。

間違いなくジリ貧になるだろう。


「心得ています」


 私の言葉を聞いて、給仕は頷いてドアをノックする。


「陛下、件の冒険者が参りました」


「通せ」


 扉が開かれる。


△▼△▼△▼△▼△


 そこは、皇帝の私室のようだった。

てっきり謁見の為に玉座の間にでも通されると思っていたのだが、思わず少し呆けてしまう。

後ろからアヤメにつつかれ、思い出したように跪く。


「面を上げよ。口を開いて良いぞ」


 まだ皇帝と呼ばれるには若い声、紅い髪。

想像していたより優しさを感じる赤い眼に、鍛えられた肉体。

あれがローザル帝国現皇帝......30代くらいか。


「冒険者組合モズー第一支部に所属しております、『静夜の狂姫(サイレント・プリンセス)』ルミと申します」


 懐かしい流れだ。

何かの拍子に王族に会う事になった時に備えて、母上が教えてくれた礼儀作法がどうにか通じているようだ。


「王国の貴族だったというのは間違いないようだな。それも、帝国軍が攻め入ろうとしたユースデクス家の」


 そこまで知っているのなら、私がユースデクス家をどうやって降伏させようとしたかくらいは分かりそうなものだ。

であるとすれば、今回呼ばれたのはまた別の理由だ。


「仰る通りでございます。ですので今回の戦に勝ち目がないことを説明し、降伏を勧めた次第でございます」


「故郷の為に動いた貴様も、それを受け入れたユースデクス家も良い判断だ。余も不要な殺生はしたくない」


 聞いていた通り、兵や民を無闇に失うような事はしない皇帝のようだ。

私が頭を下げると、手を横に振りそのような礼儀は要らないと言った。


「貴様は冒険者で、余は貴様に敬われるようなことは1つもしていない。普通にしてもらって構わん」


 と、言われても先ほど銀髪のメイドに脅されたばかりだ。

彼女の方を見ると、小さく頷いたので許可が出たのだと判断する。


「感謝します。ところで、私をお呼びになったのはどういったご用件でしょう?帝国が新たに手に入れた戦力の確認でしょうか?」


「それもある。しかし、セキヨウと戦って相打ちになったというのが今回わざわざ呼んだ理由だ」




 ______相打ち?

毎日投稿挑戦中です。

読んでいただき、ありがとうございます。

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