59 -機巧族-
いつもより少し短いです。
区切りが良いのがここだったのでお許しを・・・。
「身体が軽いっすね~......ルミさん?」
そこにいたのは、マネキンのように無機質な体つきをした人間だった。
白色に紫色のメッシュが入った髪が胸まで伸び、少し伸びた前髪からは金色の目が覗いている。
身体は本当にマネキンのようで、球体関節すらあるようだ。
魔物だから当然なのだが、服を着ていないように見えるのが良くないな。
「アヤメで良いんだよな?......とりあえず服を持って来てもらおう」
服を着てもらい、少し落ち着いてから話を再開する。
まず、気になるのは脱げなかった鎧が無くなっている事だ。
「どうなんだ?もろくなっているのか?」
私の問いに、コツコツと自分の肌を拳で小突いて確認するアヤメ。
「あの鎧より硬くも出来るし、人間の肌くらいにも出来るっぽいっす!便利っす!」
確かに便利だ。
今までは抱きつかれる時に鎧が当たって痛かったからな。
と、それよりもう1つ大切な事がある。
「剣はどうした?」
そう、籠手から生えていた剣が無いのだ。
というか、籠手がないのだ。
まさか剣が出せなくなったのだろうか?
「う~ん......ほっ!」
アヤメが何かを念じると、突然剣と盾が現れた。
どちらもかつての鎧の色合いに似た、至極色を基調としたものだ。
彼女は右手に剣、左手に盾を持つと自慢気にポーズをとってみせた。
「どうっすか?かっこいいっすか?」
「似合ってるんじゃないか?盾を持っているお前は新鮮だがな」
今までは双剣タイプだったからな。
念じれば前のスタイルにも戻せるのだろうか?
「イケそうっすね。なんなら剣の種類も変えれそうっすよ」
そう言って念じると、右手に持っていた直剣が細剣のように変化する。
ついでと言わんばかりに、ラウンドシールドのようだった盾もバックラーほどの小ささになる。
かなり柔軟性が上がったな。
攻撃に防御に、どちらの能力も格段に上がったように思う。
「......で、お前はなんて種族なんだ?」
「さあ?新種かもしれないっすよ?」
まあありえなくはないな。
喰んだ個体の進化など、滅多に起こるわけではないだろうから。
しかし、私も知らないまま命名して後から『実は新種ではありませんでした』だと気分がよくない。
「母上と父上に聞いてみるか」
かつては騎士だった父上と、有名な魔法使いだった母上。
2人が知らないのなら、帝国に行って調べるまでは分からないとみていいだろう。
「行くぞ」
「待ってくださいっすルミさん」
2人のもとに向かおうとした時、アヤメが私を呼び止めた。
振り向くと、かなり真剣な面持ちでこちらを見つめていた。
「絶対に前みたいなことにはさせないっす。アヤメが守るっすよ」
「......なんだ、改まって。もう進化したんだから面と向かって言う必要は無いぞ」
なんだか気恥ずかしくなり、私は目をそらす。
しかし、アヤメは私の顔に両手を添えてまっすぐ目を見た。
「アヤメが言いたいんす。ルミさんとの生活、とっても楽しいっす。だから、絶対に失いたくないっす」
進化を経て、歯の浮くような事を言うのが好きになってしまったのだろうか。
少しは真面目に答えてやらねば、私の為に進化したアヤメに対して不義理というものか。
「......期待してる。早くいくぞ」
「はいっす!」
私はそそくさと、母上達のもとへ向かった。
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「ふうん......初めて見たわ、喰んだ個体の進化なんて」
「そうだね」
私は、部屋に着くや否やアヤメについて説明した。
しかし、やはり2人も知らないか。
「でも、似たものなら見たことあるわよ」
「本当ですか?」
似たもの、というのが気になるが、それが本当ならアヤメの種族に近づくことも出来るだろう。
「機巧族。魔物じゃなくて、身体的特徴に何か人工的に見える物体を持つ人族の総称よ」
「人族......つまり亜人ですか」
確かに、魔石さえなければアヤメのマネキンのような姿は機巧族と考えられる。
魔石が目視できない以上、機巧族を名乗っても問題ない気もするが正式な種族とは言い難いな。
「仮に、亜機巧とでも呼んでおこう。種族名が無いと不便だからね」
魔石以外は機巧族で、亜機巧か。
悪くない仮称かもしれないな。
仮に新種でこのまま命名されても文句はなさそうだ。
「亜機巧っすか!かっこいいっす!」
アヤメも気に入っているようだし、それで良いか。
こうして私のパーティの頼れる前衛であるアヤメが、グラフェノス改め亜機巧となった。
次に《認識》で視るのは私の魂だ。
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