57 -権能の力-
これから数日間は、可能な限り毎日投稿したいと思っています(必ず出来るとは言いませんが・・・)。
第二章を勢いに乗せたいので、応援お願いします。
私が目覚めてから、1週間ほどが経った。
睡眠時の回復力を増進するスキル《超睡眠》に助けられたおかげで、食事や適度な運動だけでかつての7割程の身体能力は出せるようになった。
しかし身体が5年分も成長しているので、かつての7割といっても現在の身体の全力の半分も出せていないだろう。
「おはよう、アヤメ」
「おはようっす〜。今日はどうするっすか?」
アヤメにはこの1週間、私のリハビリに付き合って貰っていた。
軽い模擬戦をしたり、体力の復活の為に基礎トレーニングをしてみたり......。
だが、今日は他にやる事がある。
「軽く話したと思うが、まつろわぬ者とかいう目玉から貰った権能が気になる。今日はそれの検証だ」
《認識》......だったか。
あの目玉の基本的な権能と言っていたが、使い方次第で頭が吹っ飛ぶらしいからな。
強力な権能なのは間違い無いだろう。
「まずはご飯っす!今日はルミさんの好物のグレートオックスの肉がメインらしいっすよ!」
好物だと面と向かって言った記憶は無いが、アヤメはいつの間にか私の食の好みを把握していた。
まあ、いろいろ食べ比べる時は残った物を処理してもらう為にアヤメと食べに行ってたからな。
食のこととなると本気を出すアヤメなら、そのくらいの事も出来るのかもしれない。
「そうか。なら冷めないうちに行くぞ」
「はいっす!」
△▼△▼△▼△▼△
食事を終え、屋敷の庭に出る。
ここで兄上2人を軽くのしてやったのは記憶に新しいが、もうそれも5年ほど前のことだ。
今回も、右腕を無くした代わりに正気に戻ったロイド兄上と対峙している。
実は、私が目覚めてから初の会話でもある。
「......あの時は、悪かった。操られてはいたが、お前に暗い感情があったのは事実だ」
「いえ、気にしていません。私の腕とお揃いになったようですし、お陰で今回正気の人間相手に実験が出来るわけですから」
私の貰った権能の《認識》は、軽く調べてみたところ対象が居て初めて機能を果たすらしい。
生憎持っていた魂や魔石は全て炎魔公に燃やされてしまったので、権能を試す対象が居なかったのだ。
「確かに僕はユースデクス家の為に、そしてルミへの贖罪の為になんでも協力するとは言った......でも、それ......大丈夫なんだろうな?」
「理論上は何の感触もない筈です。試した事がないので何とも言えませんが」
「それが不安だと......もういい、さっさとやれ」
まるで私がロイド兄上を分解でもするかのような言い草だが、本当に何の問題もない筈なのだ。
目玉の権能はただ“視る”ものだと言っていたし、調べた感触ではダメージが入るようにも見えなかった。
ただ、正体不明の能力の実験台にされると言われて、安心できないというのもよく理解できる。
「では、遠慮なく。《認識》」
ーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!
情報の奔流が、眼を伝って脳を駆け回る。
激しく落ちる滝に、脳を洗われているかのようだ。
「ぐ......ああ、なるほど......」
何となくだが、この権能について理解した。
というか、流れてきた情報を見れば理解せざるを得ない。
この権能は、今まで私が見ていた魔力というものを詳細に映し出す力だ。
今まである程度想像で弄繰り回していた魂の、産毛の一本まで見る事が出来る顕微鏡を貰ったような気分だ。
得られる情報が多すぎて全く処理しきれないが、これを有効活用できれば私の夢魔法が大幅に強化される。
「......ふう、やっと落ち着いてきました。ところで兄上、最近弓術の練習をなさっていますか?」
「な!何故それを......」
なるほど。
この《認識》で最も視やすいのは、対象のスキルに関わる情報だな。
何故なら魂に引っ付く形で独立しており、魂に比べて情報量が少ないからだ。
それを見たところ、近頃《弓術》スキルの伸びが良い。
ロイド兄上が《弓術》を持っていた事は知らなかったが、どうせ父上やライ兄上のように剣を使いたくて隠していたのだろう。
それが腕を失った事で自分の得意を伸ばす事に専念し始めたと。
......だが。
「私の得た力はそういった事が分かるようです。そこで分かったことですが、恐らく兄上は長弓ではなく短弓の才能が有ります。それに魔法を乗せるのが最も兄上の才能を活かせる戦い方かと思います。なのでそのまま長弓を扱うのはおすすめしません」
「......」
長弓を使っている事すら見透かされて呆然としている様子のロイド兄上。
しかし、少し視ただけでここまで出来るとは私も思わなかった。
これからこれを活かせるようにしなくてはな。
実験は終わったので、さっさと自分達にもこれを使おうと庭を後にしようとした時。
ロイド兄上が神妙な面持ちで私を呼び止めた。
「なあ、ルミ」
「何でしょう」
「まだ、僕はやり直せるだろうか」
彼なりに、悩んでいるのだろう。
例の件でどれだけ『凶星』と関わっていたのか、そういった事に興味はないので一切聞いてはいない。
しかし、多少ながらも領地を危険に陥れたのは事実なのだ。
自分がこれから、ユースデクス家の為に頑張っていいのか。
そういった葛藤があるといった表情だった。
「知りませんよ、私は兄上ではありませんから......ですが、それが自分のやり遂げたいことなのであれば」
私が望む、至高の睡眠のように。
本気で望む事なのであれば。
「私だったら、何を言われようとも絶対に成し遂げてみせます」
私の宣言に、ロイド兄上はしばらく黙っていた。
やがて覚悟が決まったのか、兄上は左手を強く握って言った。
「お前はそういう妹だったな。そうだったよ」
そのまま、ロイド兄上は屋敷に歩いて行った。
......柄にも無い事をした。
迷惑を掛けられた相手を諭してやるなんてな。
まあ、たまにはいいか。
週3(くらい)投稿継続中です。
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