43 -決起-
「俺の生まれは、もう滅んだ、村らしい。奴隷に捕まり、俺を買ったのが、『凶星』だ」
魂から滲み出るこの穢れた魔力は、『凶星』の実験による結果だったのか。
ノワールや改造煉鳥を鑑みれば、そういう事をやりそうな奴らだと納得もできる。
「魔力だけは多い、少年だった、らしいな。お前の価値は、そこにしか無いのだと、よく言われていた」
魔力を多く持つ人間の魂を改造し、望む魔力の質を作り出す。
その実験により、属性の適性すら変えられるのなら偉大な実験になる可能性もある。
問題は、あいつらがそんな事を一切考えてなさそうだという事だ。
「アイツらは、俺の身体を、改造する時、必ず羊皮紙から発動していた。それを色々調べた結果、『凶星』には、スキルを紙に写す能力が、ある事がわかった」
「な、なんですって?」
スキルを紙に写す!?
そんなことが可能なら、世界の勢力図は大きく変わる。
ひたすら強力なスキルを写し続け、魔力の多い人間に際限なく撃たせ続ける。
魔力の多い人間を集めるため、沢山子を産ませ魔力の貯蔵庫のように扱う。
そうして、人数こそが争いの勝敗を分けるようになる。
「一度だけ、『凶星』の、幹部らしき男と、話した。宝瓶宮と名乗ったそいつは、世界を正したいのだと、言っていた」
私が会った白羊宮より、かなり具体的に話していたようだな。
宝瓶宮曰く、この世界には大きな歪みがあるのだという。
それを正す事こそが正義であり、邪魔をする者は全て理解の及ばぬ愚か者なのだと。
「魔力を暴走させて、実験場を抜け出したのは、17の時、だった。その時の影響で、魔力を隠すのが、苦手になっちまった......後悔は、ねえさ」
「......何の為に、戦うのです?正義感ですか?」
この魔力を持っていて、まともな生活が送れる筈がない。
至る所で迫害され、死ぬ思いだって何度もしてきただろう。
人間社会というものが、嫌にならないのだろうか?
これほどの力を持っているのであれば、どこかの辺境でゆったりと生きる事だってできただろうに。
今でも彼は、世界を脅かさんとする『凶星』を追っている。
「く、は、は......正義感?お前さんは、大きな思い違いを、しているな」
アシガンは掠れた声で笑い終わった後、ハッキリと言った。
「コレは、ただの復讐だ。俺の人生を、滅茶苦茶にしてくれやがった、アイツらの目的を、滅茶苦茶にしてやりたい」
アシガンの目は、黒く濁っていた。
それが特殊な魔力のせいでそう見えていたのか、彼が何か思っていたのか、そこまでは分からない。
しかし、深い憎しみと執念だけは伝わってきた。
「分かりました。私が会った『凶星』についてお教えします。白羊宮と名乗り、声は女性ですが体躯は3m以上はあるように見えました。関節の数や位置も歪で、何かしらの改造を受けていることは間違いないかと思います」
「その特徴は、初めて聞いたな。名前の、特徴を考えると、幹部クラスか。自分の身体に、改造を施す、幹部は珍しい。他に、何か分からないか?」
「天に身を捧げるとかなんとか、言ってましたね」
身を捧げるという言葉に聞き覚えがないかと思ったのだが、反応を見るにそんなことはなさそうだ。
ところで、ずっと『凶星』を追うアシガンすらあった事がないらしい白羊宮は、何故今になって表に出てくるような事をしているんだ?
あのようなイカレた奴の思考を読むことなどできないが、一般的な思考に当てはめるならこう考えられる。
「彼らの作戦に、進展があった......?」
「ん?どういう、ことだ」
私は思った事をアシガンに伝える。
これが本当なら、間違いなく世界は一歩混沌に近づいている。
「確かに。戦わずに逃げた事も、気がかりだ。作戦の邪魔になる、冒険者を放置し、”今はまだ”戦わない、と」
......考える事が多すぎる。
私は眠っていたいだけだというのに、面倒事が空から絶えず降ってくるのだ。
______ええい!ままよ!
「アシガンさん、私に訓練をつけてくれませんか?」
有事の際、私の立ち位置が上位であればあるほど有利になる。
独断で『凶星』を止めに行ったりできるからな。
で、あるならエクソーバーになることは急務になった。
そして、私の隣にはエクソーバーが一人。
「......確かに、今のお前さんじゃ、アイツらには、勝てねえな。分かった、しばらく面倒見てやる」
「あ、睡眠環境は最高のものでお願いしますね」
「馬鹿言っちゃ、いけねえ。余計な休息は、全て訓練に、あてる。従魔も、出せ。俺を負かせりゃ、好きなだけ寝かしてやる」
早まっただろうか。
私の人生の唯一の楽しみを犠牲にしてしまったかもしれない。
こうなれば、あいつらも道連れだ。
「アヤメ、ノワール。起きろ。あの男をボコボコにするまで私は満足いくまで眠れない。つまりアヤメの夕飯は1人前だし、ノワールのボディタッチは1日1回までだ」
「......なんすか、藪から棒にってぇえ!?うおお、俄然やる気が湧いてきたっす!ぼこぼこっす!」
「わたくしも、あるじ様の慎ましい胸に飛び込めないだなんて耐えられませんわ!」
卑怯とは言わせない。
この力も、私の力だからな。
「来い。冒険者の頂を、みせてやる」
週3(くらい)投稿継続中です。
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