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42 -不浄-

 それは、改造された煉鳥を倒したことで町の様子に変化があったかどうかを確認しに来た時だった。

私達3人全員が、薄ら寒い魔力を感じて全力の警戒態勢に入ったのだ。


「アヤメ!怪しいやつがいたら即座に斬れ!」


「は、はは、はいっす!」


 あの豪胆なアヤメからは想像もできないような、根源から来る嫌悪感や恐怖に抗えないといった様子の返答がある。

ノワールは、目を凝らして相手の位置を探ろうとしつつも膝が笑っている。

私だって、人の事を言える余裕はない。

未だ改造煉鳥から受けた攻撃で魔力が不安定だし、この薄ら寒い魔力にはあの時の電波妨害(ジャマー)に似たものを感じる。

空気は火山地帯の町だというのに、やけに冷たかった。

自分の頬を汗が伝った跡など、氷属性魔法を受けた時のように冷たい。


「そう、警戒しなさんな」


 そんな事を言いながらゆったりと町角から現れたのは、ある意味では異常な男だった。

容姿からは全くの違和感を覚えないと言うのに、魂が纏っている魔力がヘドロのように穢れたものに感じる。

服装はぶかぶかでゆったりとしていて、何か武器を隠していてもおかしくない。


「っす!」


「ああ、争いたいワケじゃあ、ねえんだ。話を聞いちゃ、くれねえか」


 私の指示に従い、死角に回って剣を振るったアヤメに対しても、まるで子供をあやすかのように剣を片手で受け止めて話し続けた。

剣の受け止められた部分には、例のヘドロのような魔力がくっついているように見えてアヤメは急いで剣を腕から切り離した。


「......何者ですか」


「お前さんと、同業者だ。冒険者だよ」


 ......?

冒険者?この恐ろしい魔力を纏った男がか?

基本的に魔力というのは、魂から生まれているというのもあってその人間の雰囲気の基になっている。

苛烈な性格のアリアンナさんなどは燃えるような魔力の雰囲気だし、アリー師匠などは普段は平静を取り繕ってはいたが、最後の試験の時は荒れ狂う嵐のような魔力を露わにしていた。

つまり、この男は先ほどあった『凶星(マレフィクス)』と同じか、それ以上に危険な存在と考えていたのだ。


「聞いた事、ねえかな、『不浄』。俺は『不浄』のアシガンだ」


 『不浄』......聞き覚えがあるような、無いような。

思い出せ、この男と敵対するのは絶対に避けなくてはならない。

そのためには、小さな情報でも命綱だ。

自分以外の冒険者の話を聞くようなことがあるとすれば......冒険者組合か。

その時、私の脳裏によぎったのはモズーに来てすぐの記憶だ。


______Aランクを遥かに上回ると判断された場合は、固有の名称が付きます。一例でいうなら、『不浄』のアシガン様などです。こういった方々を『エクソーバー』と呼びます______


「エクソーバー......」


「ああ、知ってるなら、話が早い。お前さん、最近有名な、『白肢』だろう?」


 まさか、ギルドの説明で例に出されるほど有名な冒険者が、こんな魔力を纏った男だとは。

正直、信じられない。

しかし、あの身のこなしや魔力の量を見れば只者ではない事は間違いない。


「一端のAランク冒険者を覚えていただけているとは、光栄の至りです。それで、どうしてここに?」


「いや、な。ここは俺の故郷......みてえなもん、なんだが。見ての通り、酷いもんだから、様子を見に来たんだ」


 聞くに、彼の育てられた町がこの町であるらしい。

他の任務に当たっていて、すぐに来れなかったことでこの惨状になってしまったという。


「この魔力の原因らしき存在は討伐しました。しばらくすれば元に戻ると思います」


「そう、か。世話に、なった」


 彼はゆらりと頭を下げ、付いて来いと言わんばかりに歩き出した。

当然無視したかったが、少し興味があった。

あの男にまとわりつく、魔力の源泉。

私はおもむろに歩き出した。



 彼が悪い人間ではないと分かったし、防御策の乏しい者をこの魔力に当て続けるのも酷なのでアヤメとノワールを魔石にしまって歩いていると、アシガンはこんな事を言い出した。


「お前さん、魔法使い、だよな?それも、腕利きの。よく、俺の近くにいられるな?」


 魔力を感知する能力に長けた者なら、間違いなく体調を崩すレベルの濃度の負の魔力を垂れ流しているアシガン。

そりゃもう、私だって近くにいたいと思っているわけではない。

しかし、魔力の解析をしなければ防御も出来ないわけで、仕方なく感情を殺しているのだ。


「人よりは身を守る術に長けておりますので。夢魔法・冥護の章《(ノケ)》」


 今まで対応できない魔力が無かったので、作っていなかった魔法をこの際なので実用レベルに開発することにした。

(ノケ)》は絶一門と同じように魂を切り取って防御する魔法だが、1属性を指定して防御する絶一門とは違う。

属性ごとに分けることなく、乱雑な状態の私の魂を切り離してそれをそのまま防御に当てているのだ。

こうすると、各属性ごとの防御力はかなり落ちる代わりに、攻撃でない純粋な魔力、自分の扱えない属性の魔法などにも対応が出来るようになる。


「ほう、高度な、防御魔法だ......ついたぞ。何もないが、俺の家だ」


「お邪魔します」


 家に入り、私は彼の求める事を知るために口を開いた。


「私に、どんな用が?お礼なら先ほど言っていただけましたし、私をここまで連れてくる理由も無かったかと思いますが」


「まあ、な。ただ、情報交換ついでに、何か礼になるものでもないかと、思ってな。一応、エクソーバーだからな。色々持っている」


「情報交換と言っても、私に渡せる情報なんてありませんよ」


 これは本心だ。

私達が束になっても万に一つも勝ち目がない相手に、私が渡せるものなど無いだろう。

しかし、次に彼が言った言葉が本当なら話が変わってくる。




「居ただろう、『凶星(マレフィクス)』。俺は、アレの実験で生まれた存在だ」

読んでいただき、ありがとうございます。

この度、PVが5000を突破いたしました。

読んでくださる皆さまのおかげで、ここまで執筆を続けていられます。

本当に、ありがとうございます。


そして、もしよろしければ感想やいいねや評価、ブックマークなどもしていただけると嬉しいです。

読んでいただけるだけでもうれしいですが、やはり形にのこる何かをしていただけるとモチベーションがとても上がります。

それに、今の内に応援していただければ将来自慢できるかと思います。

自慢できるような作家になるつもりですので。


改めまして、これからも小鳥遊燦をよろしくお願いいたします。

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