表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
42/88

S05 -勇なる冒険譚・後編-

「はァ!!」


「グォォ!!」


 僕が錆血竜の足に一撃を喰らわせて、離れるタイミングの隙を突く錆血竜の攻撃をゴウが止める。

防御を崩そうと重い一撃を放とうとする錆血竜に、横から僕が剣を叩き込んで攻撃をやめさせる。

......よし、僕にもゴウにも余裕がある。


「ゴオオオオ!!」


 また黒い液体を撒き散らす錆血竜。

足場が減ってきたけど、この調子なら足の踏み場が無くなる前に倒し切れる。


「水よ〜、うねり波打ち、今ここに〜。《水波(ウォーター・ウェーブ)》」


 そんな事を考えていたら、余裕の出来たマリンが地面にこびりついた黒い液体を水で洗い流した。


「突き刺せ!《風槍(ウインド・スピア)》!」


 そこにジェーナの《風槍(ウインド・スピア)》が突き刺さり、錆血竜が苦しげに唸った。

風刃(ウインド・カッター)》と違って、一点集中型の魔法ならダメージが入るようだ。

ゴウも余裕が出てきたみたいで、錆血竜の攻撃を受けつつ腹にメイスを叩き込んでいる。

さっきから振り回してる尻尾も、力がなくなってきているように見える。

僕は確信する。ここが攻め時だ。


「ゴウ!アレを使え!」


「......分かった。《血族の記憶(めざめよ)》!」


 僕がゴウに指示したのは、『後先考えなくていい時にだけ』使えるゴウのとっておきだ。

彼の身体はみるみるうちに筋肉が隆起し、牙と爪が伸び、茶色の毛が身体中を覆った。

すなわち、獣人の血を呼び起こす種族特有のスキルだ。

こうなったゴウは、スキルを使わないヴェンさんといい勝負が出来るくらいには強い。


「グルァァァ!!!」


 ゴウが吠え、鋭い爪を振るうと錆血竜の皮に深い傷が刻まれた。

一度、二度、三度と次々刻んでいく。


「グギャアアアア!!!」


 そんな攻撃を受けて流石の錆血竜も、自分の身の危険に暴れようが一気に加速した。

黒い液体をまき散らし、ドタバタと足を地面にたたきつけ、誰も近づけまいと力強く尻尾を振り回した。

こうなると僕は近づけなくなるが、ゴウは全てをいなしつつ錆血竜を切り刻んでいった。

このままいけば、誰も犠牲にせず錆血竜を倒せる......そう思った時だった。


「......ッグ、グボエエエエエエ!!!」


 錆血竜は突然立ち止まり、真上に向かって黒い液体を吐き出し始めた。

強化されたゴウとはいえ、あの液体は危険だと一度距離を取った。

黒い液体はどんどん錆血竜の身体に降り注ぎ、紫色だった身体をどす黒く染めていった。

しばらく僕達は呆然としていたけど、錆血竜の身体が全て黒くなった頃にあいつの狙いを悟った。


「まさか、あの皮あの黒いのを吸収するんじゃない!?だから......アイツにはもう触れられないかも!」


「じゃあ、こうしましょ~。水の壁よ、我らを守れ~。《水壁(ウォーター・ウォール)》」


 ジェーナが言った事が本当なら僕とゴウはもう錆血竜に触れられないけど、マリンが機転を利かせて錆血竜の周りを水の壁で覆った。

これなら、この壁を越える時に否が応でも黒い液体を洗い流せる。


「グギャオオオオ!!!」


 水の壁に突進した錆血竜の身体は、未だ黒いままだった。

恐らく、一度吸収したあの皮はしばらくあのままなんだろう。


「どうするの!?私達の魔法じゃとどめを刺すほどの火力は出ないわよ!」


「......オレが無理矢理とどめを刺す」


 ゴウが自分の身を犠牲にした攻撃をすると言う。

確かに、彼が本気で特攻すればとどめを刺せるかもしれない。

でも、刺せなかったら?そのまま殺されて終わりだ。


 ______そんなのはダメだ。


「いや、僕がやるよ」


「無茶よ!」


「流石にぃ、無理な事はさせられないよぉ?」


「レイン、信じてくれ。オレがやってみせる」


 今まで、僕はずっと思っていた。

僕が一番、役に立ってない。

ゴウは持ち前のフィジカルに、魔物の知識でいつも助けてくれる。

ジェーナは危険に対する判断が誰よりも上手くて、僕たちは何度もそれに救われている。

マリンはCランクの中では異例なほど支援系の魔法に習熟していて、彼女がいなかったら錆血竜との戦いはスタートラインにすら立てていない。


 僕と言えばどうだ。

魔物の強さを匂いで感じるけど、それはジェーナの魔力感知の劣化だ。

突進(チャージ)》は使えるけど、強化されたゴウには遠く及ばない。

皆を助けたい気持ちはあるけど、マリンの方がよっぽど救う力にあふれてる。

僕は、何もないんだ。




 なら、どうすればいい。




 必死こいて、限界も振り切って、全力の一撃だけを。



「大丈夫」


 僕の言葉に、不思議と皆反論しなかった。


「ギャアアアアアア!!!」


 錆血竜がこちらに走ってくる。口から滴る液体一粒一粒が、僕の致命傷足り得る。

でも、そんなことは関係ない。


「《光たれ(ラストホープ)》」


 僕は剣を握り、思い切り踏み込んで駆けた。

剣を振るった回数は、1回。

錆血竜は、動きを止めた。

僕はそれを見届けて、大地に思い切り倒れ込んだ。




 後に聞いた話では、僕は3日間も寝ていたらしい。

アリアンナさんに無茶したことをこっぴどく怒られたけど、何故だかスッキリした気持ちだった。

週3(くらい)投稿継続中です。

読んでいただき、ありがとうございます。

ブックマーク、いいね、評価、感想、レビューなどなんでも励みになりますので気が向いたときにお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ