S04 -勇なる冒険譚・中編-
「ッ!毒の霧だ!マリン!」
洞窟に入った瞬間、ゴウが普段出さないような声をあげて僕たちは咄嗟に口を手で覆った。
毒の霧を使うモンスターなんて、低ランクモンスターには居ないはずだ。
「主よ、穢れを除き、穢れに負けぬ衣を我らの肩に〜。《耐性》......もう大丈夫だよぉ、多分」
ゴウの一言で全てを察して、マリンは僕たちにこの毒の霧への耐性を付与してくれた。
ゴウはマリンの多分という言葉に眉を顰めながらも、本当に大丈夫か確かめている。
「この効果範囲を見るに、最低Cランクってところかな?」
「そうね。この霧が1番の攻撃だってんなら、Cランクの下の方じゃないかしら?」
僕はジェーナがそう言うのを聞いて、思わず笑ってしまう。
普段は人の為になる事を心掛けて冒険者をしているけど、僕だって皆がビックリするような相手を倒してみたいんだ。
......白肢のように。
ハッ、いけないいけない、僕は彼女みたいに奔放な生き方はしない。
弱きを助け、強きを挫くんだ。
間違っても、気分で相手を締めつけたりしない。
「レイン?何呆けてるの、早く行くわよ」
「あ、あぁ!行こう!」
僕は剣を強く握り、毒の出処を探して歩き始めた。
△▼△▼△▼△▼△
「「レイン」」
洞窟の探索を始めて、2時間くらいが経過した時。
ジェーナとゴウが同時に声を上げた。
僕達の様子を見たマリンも気付いたみたいだ。
この道を行った先に......。
「いる、ね。臭いで言うなら、Bランクの下の方かな」
「魔力を視てもそのくらいの魔物ね......どうするの?」
Bランクともなると、本来僕たちが挑むレベルの魔物じゃない。
仮に勝てたとしても、誰かが致命的な怪我をしてもおかしくはない。
村を救いたい気持ちは今も十二分にあるし、きっと僕1人なら行っていただろう。
でも、僕には守るべき存在がいるんだ。
「ここは、一旦ギルドに......」
「レイン君、私達のことが心配でぇ、決心がつかないんだ〜?駄目だよぉ?私達は、対等なんだから」
「......俺たちの事を“守らなくてはいけない存在”として見るのはやめてくれ」
「あのムカつく白肢も、自分の腕が無くなるくらいの相手と戦ってるんでしょ!なら、私達だって無茶しなきゃいつまでもアイツに勝てないわ!」
......確かに、僕は皆をどこか守るべき相手として戦っていた。
皆を気遣ってしていたつもりだったけど、こんなのただ皆を信じられていないだけ......本気で僕を支えようとしてくれている3人に失礼だ。
「わかった。ジェーナ、勝算が無いと思ったらすぐ言ってね。撤退する」
「ええ」
「ゴウ、今回僕は攻撃に専念する。2人の壁役は任せたよ」
「当然だ」
「マリン、毒が身体に回り切ったら君だけが頼りだ。死なないでくれよ」
「はぁい」
目を閉じ、遙か上にいる冒険者達を思い返す。
ヴェンさん、アリアンナさん......そして白肢。
あそこに並べるような存在に。
「リーダーとしての命令だ!全員、生きて勝つよ!」
「「「おお〜!」」」
△▼△▼△▼△▼△
錆血竜。
洞窟の鉱石などを主食とする、亜竜だ。
亜竜というのは、竜とついているもののそこまで危険な魔物ではなく、龍と似た特徴をもっている事からそう分類される。
この錆血竜も全長は3mほどで足が発達し、小さな羽が生えた紫色のトカゲのような姿をしている。
「Bランクとされている理由はこの毒の危険度からだ。毒さえ無効化すれば十分勝てるぞ」
後でゴウから詳しく聞いたところ、錆血竜はBランクにしてはかなり弱い魔物とされているらしい。
身体中から出続けている霧は取り込むと身体を少しずつ崩壊させていく超強力な毒で、生態系や魔物の分布を脅かす事からBランクになっているものの、毒が無い錆血竜はCランクパーティなら勝てるとされている、とのことだった。
「よし、行くぞ!」
『------!』
ゴウが僕たちには聞こえない声をあげ、錆血竜はそれに反応してこちらに向かってくる。
彼には虎の獣人の血が混じっており、通常の人間より少しだけ身体能力が高い。
「......ッシ!」
「切り裂け!《風刃》!《風刃》!」
「《突進》!」
僕たちの攻撃が一斉に錆血竜に降り注ぐ。
「グォォォ!!」
錆血竜は鬱陶しそうに身体を暴れさせ、口から黒い液体をまき散らす。
「あれ、私の《耐性》じゃ防げないよ!気を付けて!」
マリンがいつもの間延びした声じゃない、つまり触れれば真剣にマズいことになるって事だ。
僕とゴウは黒い液体に注意を払いつつ、攻撃を喰らって怒り狂っている錆血竜を見た。
「......効いてない。硬いね」
「あの皮が衝撃を吸収しているようだ」
錆血竜の皮はぶよぶよとした素材で出来ていて、僕の剣やジェーナの《風刃》では傷すらついていない。
効いているのはゴウのメイスくらいだ。
でも、仕留める為に致命的なダメージを与えるなら斬撃が必須だ。
「マリン、強化を!」
「はぁい、煉獄の炎、彼の得物に宿りし殺意を贄に燃え盛れ~、《装炎》」
僕の剣から揺らめく炎が立ち、刀身の温度が上がっていく。
少なくともさっきよりかはダメージが通る事を願い、僕は錆血竜に向かって走った。
週3(くらい)投稿継続中です。
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