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30 -情報屋-

「獣人......」


「おぉ、獣人を見るのは初めてか?あんちゃん」


鬼梟(キキョウ)の紹介で来ました。Aランク冒険者のルミです。以後お見知りおきを」


 いつまでも失礼な勘違いをさせておくのは不快なので、婆に貰った紙を見せる。

『鬼梟』というワードを聞いた男は、すぐに私から紙をひったくった。


「なぁんだ、オニババの紹介ね......あぁ!最近Aランクになった謎の冒険者か!」


 何と説明すればいいのかわからないが、彼の会話のテンポ、そして雰囲気には何か独特なものがある。

それを感じ、少々調子を狂わされる感覚を覚える。


「誰も彼も、説明もせず口の利き方に気を付けろだとか、胸はないだとか......あなた方、結局何なんです?」


「何ってそりゃ、情報屋さ。オニババは情報屋がついでだけどね。ボクは世界一新鮮な情報を取り扱う、コルボってんだ。よろしく、あんちゃ......ルミ」


 一度名乗ったというのに、『あんちゃん』と呼ぼうとするので思い切り睨んでやるとすぐに訂正した。

それより、情報屋か。

法に触れるような情報も集めているからこういう場所に居を構えているのだろうが......彼の風貌とこの街の雰囲気は合っていない。

そう感じるほどに、彼の雰囲気は柔和かつ不思議だ。


 気を取り直して、私の求めるものの所在を聞こうとすると、コルボは先に口を開いた。


「さて、オニババから聞いてるだろうけど、ボクは金だけじゃ動かない。基本的にボクが求めるものは......知識だ」


 知識ときたか。

貧民街でそんな言葉を聞くことになるとは思わなかった。

しかし、彼の表情を見るに本気なのだろう。

心なしか、私と似た眼をしているように感じる。


「ボクは特殊なスキルを持ってて、世間一般に出回る情報なら容易く集めることが出来る。そんなボクが求めているのは、普通の手段では手に入らない情報だよ。分かるかい?」


「つまり、私に危険な場所の取材でもして来いと?」


 Aランク冒険者の提供できる情報など、それ以外にない。

未開の地や、未知のモンスターと戦うのが私達の仕事なのだから。

しかし、彼はそれを笑って否定した。


「ハハ、それもいいんだけどね。ボクの今の興味は、Aランクモンスターより君に向いている」


 彼は屈託のない笑顔でそう言ったが、字面のインパクトに思わず後退りしてしまった。

私の事を知りたい......まあ、謎の魔法を使う少女がいれば、好奇心が強いであろうコルボは気になるだろうな。


「こうしよう。ボクは君に情報を与える。代わりにその後、君はボクのインタビューを受けてくれ。どうしても外に出されると困る質問は、外部に流さないと約束もしよう」


 インタビューか。私の自由で口止めも出来るようだし、何より先に情報がもらえるのは大きい。

契約魔法で嘘を禁じることも出来るので、お互いに気持ち良く情報交換が出来る。

以上の事をわずか数秒で考慮し、私はインタビューを受ける事にした。


「わかりま......」


______ドォオン!!


 肯定の言葉が出かけたその時、外で爆発音が響いた。

少し部屋が揺れている事、そして魔力反応がある所を見ると目標はこの場所、敵は魔法使いであることは間違いないだろう。

ここで恩を売っておくか。


「ひとまず制圧します。後始末は任せますよ」


「まだ敵かもわから......いや、十中八九敵だね。分かった、辺りの被害を抑えてくれるなら好きに戦ってくれて構わない」


 ここのボスに許可を貰ったんだ。遠慮なくやらせてもらおう。

納屋を飛び出し、魔石を放ってアヤメを呼び起こす。


「行くぞアヤメ。壊しすぎず、殺さず、敵全員を無力化だ」


「了解っす......って、この人たち弱すぎるっすよ。ルミさん1人の方が良かったんじゃないっすか?」


 無論、相手のレベルは分かっている。

実際にアヤメが居なくとも制圧自体は出来るだろう。

しかし、私の奥の手兼隠しておきたい魔法である、相手を眠りに誘う魔法を使わなくては逃げられてしまう可能性が高まる。


「大体、無力化ならルミさんの魔イタタ!分かったっす!モンスター使いが荒いっすよもう......」


 ここに来るまでの道中、街道を多く通ってきた。

当然私を含め移動は馬車なので、馬を刺激しないようアヤメを魔石にしまっていた。

故にかなり機嫌が悪そうだ。


「しっかり働いたら、ここのボスが美味いものを奢ってくれるかもしれないぞ」


「うおお!アヤメは忠実な(しもべ)っす!」


 扱いやすくて本当に助かる魔物だ。


△▼△▼△▼△▼△


 私の命令通り、アヤメは殺しも破壊も無しで制圧を完了させた。

飯を与えなければ今から破壊が始まるだろうが、コルボに集れば少しくらい食べるモノがあるだろう。


「私の靴をこのままぶち込まれたくなければ、依頼主を教えてください」


 寝そべったリーダーらしき男の口に足をねじ込みながら、適当に情報を要求する。


「も、もごがが......」


 ああ、喋れないんだったな。

糸で動けない程度に縛り、足を口から放してやる。


「依頼主も何も、隣の国で賞金首だよお前は!」


 ......?

男の言葉を理解するのに時間がかかり、少しの間反芻していた。

隣の国......普通に考えれば、アーコスト王国だろう。

賞金首というのは、つまり私は王国に帰ることが出来ないという事か。

元々帰るつもりがあったわけではないが、少し面食らってしまった。


「コルボさん、この方は必要な人間ですか?」


「いや、芥の類だ。好きにしてくれ」


 彼が言葉を紡ぐや否や、私は男の頭を掴んだ。

そして、適当な詠唱を気持ーち大きな声でしてやった。


「闇の神よ、かの命を御身に召し上げよ。滅びに向かう愚かな子羊を御身の傍に。《滅却》」


 無詠唱で《睡眠(スリープ)》を発動し、瞬時に魂を抜き取る。

ここの人間は生きようが死のうが誰も探さないはぐれ者の集まりだ。

そういった、殺しても罪悪感の湧かない相手から魂を集める事にしている。

......決して、乱された精神を八つ当たりで解消しているわけではない。


「ふうん、聞いたことない詠唱だ」


「そんなことより、インタビューを受けるのでさっさと布の場所を教えてください」


「......布?」


 まだ言ってなかったか?

面倒事に巻き込まれるとどこまで話したかが曖昧になっていけないな。


「ご飯もっす!」


「......ああ、コルボさん。私の従魔のお腹がすいたようです。命と建物が惜しいなら美味しい物をお願いしますね」


「ふふ、ハハハ!任せてくれ!今の恩も返したいしね!」


 何か、彼のおかしなスイッチを押してしまったようだ。

彼の案内に流されるまま、私達は歩き始めた。

週3(くらい)投稿継続中です。

読んでいただき、ありがとうございます。

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