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87【過去と現在と未来と】

 今日は約束通りテーマパークで遊んだ一日。

 相も変わらず連れまわされる一日は、心地よい疲れと心地よい充足感をもたらした。

 そんな日常とは離れた仲でも、景色を華やかな物にし、輝きをくれた存在は、例の如くはしゃぎまわり、普段との違いから思わず微笑ましくなるほどだった。

 それを言うと拗ねてしまうので、言った事はないが。


 テーマパークでは楽しくてしょうがないと言った感じで表情豊かにしていた沙月も、今はホテルで電源が落ちている。

 ベッドで倒れるように横になり、消え入りそうな声で、膝枕を請われ頭を撫でていればそのまま寝てしまった。


 安心しきった表情はともすれば、悪戯をしたくなる。

 今日という特別な日でなければ、遠慮はしなかったかもしれない。

 今日くらいは、大切な一輪挿しから花びらが落ちないよう見守るのも良いだろう。それもこれも今日という日だから。


 思えば、出会いはジムからの帰り道。

 自分としては酔っ払いに絡まれていた時が最初と言える。

 きっと沙月に言ったら、怒られてしまいそうだ。

 鍵を拾ってあげた時の事なんて、自分は誰か解っていなかったのだから。


 それとも沙月が他のクラスメイトとジムに来ていた時のことを言われるだろうか。

 結局あれは自分も気づいていたとバレてしまった。

 正直あの時の事は、思い出すのも恥ずかしい。

 何せあの時は、沙月が気になって失敗しかしていないのだから。

 

 沙月との交流が始まってからは、見えている景色が急速に色づいたのを実感した。ただただ日々のルーティンをこなす日々から、景色の変化に伴い、感情を取り戻すように変化していった。

 

 親には散々心配を掛けた事だろう。

 それでも見守り続けてくれた事には感謝しかない。

 

 今、こうして自由にさせてくれている事を裏切るわけにはいかない。

 先の事を決め、安心させる事も孝行の一環として示すべきだろう。

 ぼんやりとではあるが、決めてないわけではない。

 それでも言葉にして伝えなければ、決めていないのと同じ事だろう。


 言葉にしていないと言えば、沙月とは一緒に暮らしたいと思っている。

 今とどれほど状況が変わるかと問われれば、そこまで変わらないのかもしれない。それでもやはり言葉にし、一つのけじめとして形をも欲しくなってしまうのも確かだ。


 そしてその最大の障害は、沙月の保護者に関して。

 今はまだ対外的にそれぞれの場所がある。そう主張する事ができる。

 それを無くす。

 沙月に対して責任を持つと、改めて示すためには避けられない。

 未だ本人には打ち明けていない決意だ。


 一番の気がかりは、沙月の反応だった。

 保護者と話すという事は、どうしても沙月を通さないといけない。

 こればっかりは沙月がどう反応するか予想すら出来ない。


 気持ちを汲んでくれるか、あるいはする必要がないと言われてしまうのか。

 話す事すら拒絶したいのは、想像に難くない。

 あれだけ苦しめられたのだ、あれだけ悲しい思いを与えられたのだ。

 出来る事なら、自分だって接触させるような事を頼みたくない。


 もしかしたら成人したという年齢的事実だけを持って、勝手をする事は出来るかもしれない。それでもそれは最後の手段だろう。

 何もせず、流されるようにしては、きっと後悔する。

 自分一人の事ではない、二人の事だ。

 だからこそ、余計に悩んでしまう。

 

 沙月のためと、おためごかして話をするわけではない。

 あくまでも自分のけじめのためだ。

 では沙月自身のために、会いたくないと言われたら。

 会わない事が沙月のためになると言われたら。


 説得して自分一人で会っても良いとさえ思っている。

 今ある幸せを特別ではなく、日常にする為なら一世一代の頑張りさえ厭う事は無かった。

  

 はたと時計を見ると沙月がいるという至福の時に、思わず物思いに耽ってしまっていたら良い時間になってしまっていた。

 沙月が寝てしまうと起きないのは過去からの経験の通り。

 せっかくのホテル、室内の風呂を楽しんで自分も寝てしまおうか。

 

 ゆっくり丁寧に頭を膝から降ろし、風呂へと向かった。


 その背中を見つめる視線が在った事に優陽は気づかなった。


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