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序章~何回転生させれば気が済むんだ~

「………………んあ?」


ーー目が醒めた“青年”は気の抜けた声を発すると鍛え上げられた腹筋を用いて半身を起こした。


「………………ん~~~……あん?」


ーー寝惚け眼を擦りつつ周囲を見渡すが見覚えのある景色ではない事に気付くと彼は頭をガリガリと掻き出す。


「………えっと……向こうでアイツ等と飲み会やってて……野郎と戦史談義していたのは覚えてる………」


ーー確か日本の戦国時代に関する戦史だった筈だ、と彼の記憶は告げている。


「……………まさかとは…思うんだが……」


立ち上がって袖を通している黒い着物の袂を漁ってみればカサリという乾いた音が鳴った。


彼の脳裏には嫌な想像ばかりが駆け巡るが意を決して、それを引き摺り出す。


思った通り、それはメモ。


『ヤッホー♪オレだよ~~♪気持ちよく起きれた?涎とか垂れてなぁい?』


ーー彼が口元を拭ってみると寝ている間に垂れ落ちたのだろう涎があった。


『まぁそれは置いといて……なーんかお前が地球の日本の中世(戦国時代だっけ?)にキョーミあるみたいだから送ってあげるね~~♥感謝してよ~?』


ーーそれを読んだ瞬間“青年”のこめかみに青筋がくっきりと浮かび上がった。


「…………“また”か畜生…!!」


ドカリと地面に胡座を掻きながら何故か傍らに置いてあった煙管キセルに刻んだ煙草を詰め込み、携帯の火入れで火を点けて燻らせ始める。


「…フー……おや、良い煙草だな……ふむ…美味い」


吸い口を銜え、プカプカと紫煙を燻らせる“青年”は煙草の味で幾分か機嫌を良くした。


「…まぁ紙巻きの方が好みなんだがなっと」


傍らの小石に煙管の雁首を軽く叩き付けて吸い終わった刻み煙草を捨てると、彼は煙管等の喫煙道具を腰の帯に挟み込んだ。


「さぁてと……どうするか………というか俺、67で死んだのにまた転生って……生と死の定義が分からなくなって来たぞ……」


思案顔で顎に手を遣ってぶつぶつと独語を言う彼は、次いで手のひらに感じる無精髭の感触に顔を綻ばせる。


(……娘達と孫達に“髭は嫌”と言われるから一日二回剃ってたが……今生は大丈夫そうだな…)


伸ばして整えてみよう、と考えていると馬の蹄の音が彼の耳朶を打った。


どうやら一騎のようだ、と彼は判断するとおもむろに腰へ手を遣りーー気付いた。


「ーーあ、刀……」


かつての愛刀二振りは既に自身の弟子へ譲り渡してしまい手元には当然ながら無い。


うーん、と唸りつつ仕方なく其処らに転がっていた木の枝を持ってみるーーが、全く手に馴染まなかった。


ついでに言えば格好もつかなかった。


そうこうしてる間に馬の蹄の音は側まで近付いて来ている。


僅かに体を緊張させ、即応出来るようにした瞬間ーーそれが顔を出す。


「ーーーーーーブルル」


「ーー…………あん?」


繁みの奥から文字通り顔を出した馬は全身の毛並みが黒い青毛。


(……随分と良い馬だが……何処かで見た覚えが……いや、まさかとは思うんだが……)


脳裏によぎったのは在りし日の愛馬の姿。


それは彼と最も苦楽を共にし、彼が最も愛情を注いだ同胞にして戦友の軍馬。


「…人違いならぬ馬違いであったら申し訳ないんだが……お前…まさか“黒馗こっき”か?」


そう名前を呼んだ瞬間、青毛の馬が高らかに嘶き、足早に彼へ近付くと鼻先を押し付け始める。


「あぁ……お前か黒馗…久しいな。…お前が死んだ後は、お前の仔らが励んでくれたぞ…」


甘えて押し付けられる鼻先を求めに応じて撫で上げているとーー彼はある事に気付く。


「ところで黒馗よ……お前、背中に何を乗せておるのだ?そして目下これを知りたいんだが……ここは何処だろう?」


「…………………ブルル…」


分かりません、とでも言うように軍馬は申し訳なさげに小さく嘶いた。

軽くスランプ気味なので、気分転換に書いてみます。


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