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062 応援


(予選一回戦突破のつもりが、優勝決定戦だった)


融が参加した超能力競技は戦車引きと呼ばれている。

ルールすらわかっていない全くのド素人、しかも一年生の勝利は十数年ぶりの快挙なのだ。

幸崎たちに正式に入部しないかと勧誘されるも、融は既にほかの部に入っているからと断った。

幸崎たちに説明を受けても、いまひとつピンとこない融だった



(もう僕が参加する種目は無いって言うから一人で帰ろうとしていたら、幸崎先輩から一応これも学校行事の一環だから、集団で行動するようにと注意された)


幸崎から大会パンフレットと参加者名簿をもらった。

そこに月城晶と武東鋼の名前を見つけて、応援に行くことにした。


武東鋼が参加している競技は、短距離走だ。

ルールは普通の陸上種目とほとんど同じだ。

露出の多いユニフォームを着て、髪を結んで、真剣な表情をしていた。

(声を張り上げて応援するのは少し恥ずかしいな。見えるかどうかわからないけど、手を振っておこう)

スタート位置について、空砲を合図に一斉にスタートを切った。

非能力者の競技との最大の違いは、記録だろう。

競技場内の大画面に、バイクで疾走したみたいな記録が並んでいた。

融の戦車引きとは違い、予選もある。鋼はそれを無事通過した。全速力で走った後、汗をタオルで拭っていた。

最後のレースは、僅差でゴールしたように見えたけれど、結局は五位入賞という結果だった。




月城晶の応援にも向かう。

(後で、僕が参加していたのに応援にも来なかったなんてバレたら、好感度が下がりそうな気がする。将来の不安を少しでも減らしておきたい!)


月城晶が出場している競技は、障害物競走の一種だった。

スタートして五メートルの場所で発射されるゴム弾丸を避けて、四メートルの壁を乗り越え、網をくぐり、パンに齧り付いて、二択の壁を破った(間違えたら泥沼)その先にあるゴールを目指す。

念力、第六感、重力操作などの超能力をバランスよく使えなければゴールできない競技なのだ。

(なんでパン食い競争が混ざっているんだ?)


応援席には、檻宮三日月をはじめとした月城晶のお友達たちが勢ぞろいしていた。

(こんなにいるのなら、誰か武東鋼の応援にも行ってやれよ)

武東鋼と月城晶の競技時間は若干かぶっていた。

融が身に来た頃には決勝戦が始まるところだった。


参加選手たちがそれぞれのレーンに並んでいる。月城晶は何か特別なことをしているわけではない。他の選手と同じように黙って立っているだけなのに会場の注目を集めていた

空砲の音が鳴り響く。

他の選手がゴム弾の避ける中、晶はそのまま走っていた。

ゴム弾に当たってもいいと判断したからではない。普通に走りながら弾丸を止めたのだ。弾丸を止めるための集中する時間も、避ける動作も無い。

一つ目の障害で晶が一歩リードした。


次の障害、四メートルの壁には複数の突起が付いている。

晶はその突起を三つ軽く蹴っただけで、壁を登りきった。晶は重力操作で自身の体を軽くしていた。

他の選手は、手と足を使い壁を登っているそのスピードも十分早いのだけれど、何も無い地面を走るように乗り越えた晶と比べると遅い。

超能力を使って、通りやすいように網を持ち上げて、すばやく網をくぐった晶との差はさらに広がる。


(メロンパンに、あんパン、カスタードコロネ、コッペパン、きな粉パン、食パン。コロッケパンに焼きそばパンまであるぞ!)

融は競技とはあまり関係ない所に感動していた。

月城晶は一瞬迷って、メロンパンを選択した。糸で吊るされたメロンパンを、超能力を使って口へと運ぶ。

(確かに、人気のパンならば焼きそばパンやカスタードコロネの方がいいだろう。おいしそうだ。

しかし、これはあくまでも競技。とった後はくわえたまま走らなければならない。でも、食パンやコッペパンでは味気ないからメロンパンという理由の選択で間違いない。

なぜなら、僕だったら絶対そうやって選ぶ)


最後の二択も問題無く選んで、一位でゴールした。


(よし、これで一応の義理は果たしたぞ)

晶は走り終えた後、観客席で応援してくれていたお友達へあいさつしに来た。その時チラッと融と目があった。融も応援しに来ていたことを把握しただろう。




融が次に応援にやってきた人物は月城結梨亜だ。

その会場は室内で、融が入ってきた時場内は静まり返っていた。

この競技は重量挙げに似ている。

テニスみたいに二つのコートに分かれていて、それぞれのコートに様々な重りが配置されている。

スタートの合図とともに、それぞれのコートの重りを重力操作で互いに浮かせる。一定時間が立った後、より多く重りを浮かばせておけた方の勝ちだ。

相手側の重力を逆に高めて、邪魔をすることも可能だけれど、その分自分のコートの重りを浮かすために配分していた重力操作の力を、相手側に割くことになる。

単なるパワー勝負だけではなく、心理的な駆け引きも重要になる競技だ。


浮かび上がっていた重りが床に落ちる瞬間の衝撃がすごい。

会場が震えて、その重量を支えていた超能力のパワーを感じる


(月城結梨亜の強さは、すばやい能力の切り替えらしい。

自分のコートを支えていたすべての力を、ほんの一瞬だけ相手側のコートを重くするために注ぐ。

そして、自分の浮かび上がっていた重りが床に落ちる前に、自分の側の重りを再び支える。

一瞬の判断を誤れば自滅しかねない危険な戦法だ。

この重力の細かい波を繰り返し繰り返しぶつけられた相手は、耐えきれずにつぶれてしまう)



彼女は最後まで勝ち上がり、融は応援席にて最後までばっちり応援していましたよと友好のアピールをした

生徒会長は忙しいらしく、その日融は月城結梨亜に会うことは無かった。




(次から月城結梨亜の頼み事は、よく話を聞いて引き受けるかどうか決めよう)



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