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023 人型ロボット

長い移動の末、早朝に輸送機が垂直着陸した場所は廃墟の町だった。

朽ちた高層ビル群と廃車などのスクラップの山。

融と母親とその部下三名が降りると、輸送機は再び飛び立ってしまった。


「甘やかすのはココまで。今日、ここに連れてきた目的は、おまえを鍛え直すためだー!」


(急にリンリンのキャラが変わった!何この鬼軍曹ごっこ?)


「能力訓練の自主練習、よくサボっているみたいね。

母さんが命令して、部下に学校のデータをこっそり調べさせたんだから、誤魔化しても無駄無駄。

ほかにも良くない噂がいろいろとあるみたいだし。

あなたは転法輪家を継ぐ義務があるのです!

次期当主ともあろうものが、そんなことで許されると、思っているのですか!」

倫は手に持ったカンペを見ながら話し始めた。棒読みを叫んで誤魔化している。


「いや、それにはちゃんとした理由が…」

「言い訳無用!獅子はわが子を千尋の谷に突き落とす、と言います。

私たちはあのビルの屋上であなたを待ちます。

まずは自力で登って来なさい。特訓はそれからです」


(えー、高いー、ムリー)


母親と、その部下たちは階段を上るかのような気軽さで、垂直のビルの壁面をひょいひょい登っていく。五十階を越える屋上まであっさりと登り終えた。

融は誰もいない廃墟で独りぼっちにされてしまった。


「嘘やん」

母親にも、急展開な事態にも置いてきぼりにされた。




ビルなのだから内部から一段一段登っていけば、やがてはたどり着ける。

そう考えた融は、まずビルの中へと入った。


階段は、スクラップでバリケードが作られて塞がれている。エレベーターも同じだ。

融が超能力で、扉をこじ開けると中から大量の廃材がわき出てきた。廃材に押しつぶされそうになって慌てて跳び退いた。


(これは、リンリンと同じように壁面を登ってこいってことか?)




廃ビルの外に出る。

先ほど、母親と部下たちが登っていった映像を分析する。

(拡大とスロー再生してみたら、重力操作で体を軽くして、強化された脚力で壁を駆け上げっているだけじゃないな。

ブーツの底に金属のスパイクがあって、それを物体操作で動かし、壁面に食い込ませて上手く登っているみたいだ)


融は自分が機内で身に付けさせられた戦闘訓練用プロテクターの足の裏を確認する。

「スパイクついてないよな。あれは軍の装備にしかないのかな。

まあ、もし有ったとしても細かい重力操作と鍛え上げられた脚力がないと無理だ。真似できっこない」


メガネ型情報端末で試しに母親に連絡してみた。

「応答がない。やっぱりダメか。出来るまでこのままなのか?」

ギブアップの選択肢は用意されていなかった。


「別に登りさえすれば、どんな方法でも問題ないはずだよな」

融はスクラップの中から、錆びの少ない金属パイプを集めた。

超能力でグニャリと曲げて、組み合わせ、梯子を作る。

「お、結構行けそうじゃないか」

十階分ぐらいまで組み上げると、辺りに丈夫で手頃なサイズのパイプは無くなってしまった。

錆ついた鉄パイプはあるけれど、曲げると折れてしまいそうだ。

「十階分梯子で登って、梯子を引き上げて、また登ることを繰り返せはたどり着けるかな?ちょっと危険な感じがする。何かほかに道具は無いのか」


融はスクラップの山を超能力でひっくり返す。

「お、これは使えそうだ」

ワイヤーの束を見つけた。それから似たようなワイヤーがスクラップの中で次々と見つかった。



「うわ、人型ロボット!

……。動かない、壊れているのか」



融がワイヤーを探していて、スクラップの中で見つけた人型ロボットは、敵対している自由連合の量産兵器である。

この時代の戦争は人間対人間の戦争ではない。

人工知能を搭載したロボット兵器同士、またはロボットと超能力者が戦うのが主な戦争だ。

人型をしている理由は、敵への心理的威圧や装備する武器を人間と共用できるというのが主な理由だ。市街地を戦場とする場合にも利点が多い。


それに、超能力者に対抗するためとも言われる。

この世界の超能力は、人から物へは能力が伝わりやすいけれど、人から人へは能力が伝わりにくいとされている。

なぜか、ロボット兵器も人工知能の疑似人格を搭載した人型は、超能力に対する抵抗力が、ほんのわずかに上がる。

また、大型のロボットでは、遠隔操作のロボットよりも、直接搭乗したロボットの方が超能力者との戦闘でより成果を出している。どちらも理由は不明だ。

魂の差であるとも言われるが、証明はされていない。




ロボットを無視して、融がワイヤーを回収する。

「全部つなげれば、屋上まで届くかな」



融が梯子を立てかけていた場所へ歩いていた時。

ロボットの電源ランプに赤い光が灯った。



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