薄暮と漣、交わらぬ時代の揺籠・レン編
*過去編『○○年前』の裏話*
第二葉:三日間の約束、数千年の孤独のプロローグ
しかし、神と人間の混血であるレンが「20歳前後」の全盛期の姿で成長を止めた頃、人間の血を引く母親の肉体は、世界の理によって静かに限界を迎えようとしていた。
「レン、お母さんの魂を救うために、俺は彼女を連れて、一度彼女の元の世界へ還らなければならない」
ある日、親父は真剣な「管理者の顔」で、レンの肩に手を置いた。
「神の力を引き継いだお前は、あっちの世界へは連れて行けない。だから、この世界を少しだけお前に託す。……大丈夫、あっちの世界で引っ越しの手続きを済ませて、彼女の魂を新しいシステムに定着させたら、『三日』で戻ってくるからさ」
「三日ね。了解、親父。お袋のことは任せたよ」
20歳の姿のレンは、刀を肩に担ぎ、いつもの飄々とした笑みで二人を送り出した。
お袋は涙を流しながら、「留守番中、寂しくなったらこのレシピでお菓子を作ってね」と、一冊の異世界の料理データをレンの脳内へと転送してくれた。
「いってらっしゃい、親父、お袋。三日くらい、いくらでも待っててあげるよ」
それが、世界で一番長い『お留守番』の始まりだった。
両親にとっての「たった三日の外出」が、この世界の時間軸へと変換された瞬間、数千年の果てしない孤独のワンオペ管理へと変貌することなど、その時のレンはまだ知る由もなかった。




