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管理者のシナリオ、孤独の裏のバグ

*平和な日々編『心理の奥底』の話*

世界樹の梢から降り注ぐ、静かな星明かり。

玉座の間のテラスで、アルヴィスは先ほどレンから聞いた『世界樹の双子果の真実』の余韻に浸りながら、隣で夜風に吹かれているレンに、もう一つの、より深い問い(視線)を投げかけた。


「……アルヴ。お前が世界樹の奇跡なら、俺の『裏』も全部引きずり出したいって顔してるね」


レンは刀を壁に立てかけ、いつもの軽薄な笑みを浮かべた。

だが、その金色の月光に照らされた瞳には、一切の隙がない「管理者の裏の顔」が覗いている。


「ええ」


アルヴィスはレンを真っ向から見据えた。


「俺は世界樹に創られた配役だった。だがレン、お前はどうなんだ。お前はどうやって生まれ、なぜ……両親がいながら、数千年もたった一人でこの箱庭(世界)に置いていかれた。一歩間違えれば、お前だってアニマと同じように、孤独に狂って世界を滅ぼす『第二のバグ』になっていたはずだ」


静まり返る玉座の間。

レンはふっと、いつものチャラい調子を消し、頭の後ろで両手を組んで夜空を見上げた。数千年の孤独の深淵が、その横顔に淡く滲む。


「……そっか。お前、アニマの中に『俺の可能性』を見てたんだな。御名答。お前の言う通り、俺は一歩間違えれば、この世界をいつでも真っ白な灰にできる破壊神(最悪のバグ)だったよ」


レンは短く笑い、自身の胸元――かつて神と人が愛し合った証拠の血が流れる場所を、トントンと指先で叩いた。


「俺はさ、この世界を創った創造神の『親父』と、異世界から転移してきた『お袋』の間に生まれた、世界で唯一の混血(ハイブリッド)なんだわ。お袋の寿命が尽きかける寸前、親父はお袋の魂を救うために、彼女の元の世界へ一緒に連れて還るしかなかった。時間枠が違って、お袋は若返るんだと。だから、俺はこの世界に置いていかれたんだよ」


「……恨まなかったのか。親を、その血を」


アルヴィスの問いに、レンは首を横に振った。

その瞳には、恨みではなく、数千年の時を経ても色褪せない『確かな愛』の記憶が灯っていた。


「まさか。親父たちは、俺を置いていく時に謝っていたよ。『お前は神の力を引いているから、異世界へは連れて行けない。けれど、半分は人間の血が流れているお前なら、いつかこの退屈な箱庭(世界)のシナリオを引っ繰り返す、最高に面白い“バグ”に出会えるはずだ』ってさ」


レンはアルヴィスの方を振り返り、ニヤリと不敵に笑ってみせた。


「アニマはただの自動プログラムだからさ、神(親父)が去った寂しさに耐えかねてシステムエラーを起こした。でも俺には、お袋から貰った『人間の心』と、親父から貰った『お前っていうバグに出会える希望(シナリオ)』があったんだよ。だから、数千年の孤独も『いつか現れる相棒を待つための、ちょっと長い前座ゲーム』として、笑って耐えられたんだわ」


アニマとレンを分けたもの。

それは、肉体に流れる「人間の血」と、かつて親から注がれた「絶対の愛」の有無であった。


「で、数千年待ってたらさ、光と闇を混ぜ合わせて、俺の呪い無効化の範囲に笑顔で槍を持って突っ込んできた、最高に腹黒くて面白いお前が現れたわけ。……親父の残したシナリオ、完璧だろ?」


アルヴィスは驚愕に目をみ張り、それから、レンのどこまでも真っ直ぐで不敵な優しさに、観念したように小さくため息を吐いた。

ふいと顔を背ける。


「……本当に、お前という男の背景(システム)は、俺の想像を超えて傲慢で、そして……温かいな」


「あはは! 照れるなって、王様! ほら、感動の裏話の後は、夜食の『ドーナツ』の時間だぜ!」


「……っ、当たり前だ。てめえのその数千年の退屈、俺がこれからいくらでも埋め尽くしてやるからな、レン」


夜の玉座の間、二人の不敵な笑い声が静かに響き渡る。


かつて孤独を抱えて生まれた二人の神話(シナリオ)は、今、お互いの存在という最高の修復(パッチ)を得て、世界のどんな聖典よりも眩しく、輝かしい真の楽園(ハッピーエンド)を歩み続けるのだった。


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