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後編
「いい話じゃない」
私は呆れ顔でため息をついた。
「怖い話というより、のろけ話だね」と嫌味っぽく言うと、凛子さんの表情は見る見るうちに曇っていった。
「実は…」
後に知ったことだが、そのピアスは学校の近くにある骨董屋からタダで譲り受けたものだった。
「君の彼女にぴったりだ」と背の高い不気味な店主が、スーツの胸ポケットから差し出してきた。
「気持ち悪い奴だったけれど、お金がなかったから受け取ってしまった」と日記に書いてあったそうだ。
次第に、凛子さんはガタガタと震え出した。
最近、また「天罰」が始まったのだという。
パワハラ上司に、噛みついてきた犬、近所の騒がしい子どもたち。
「最近、あの不安の意味がようやく分かってきた。夫じゃない。誰か別の人間の視線を感じるの。ずっと」
「あなたを守る」
凛子さんのことを考えると、その言葉だけが頭の中で鈍く木霊する。
日向にいる彼女を、今も日陰の誰かが見つめているのだろう。




