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9/16

P20~P22 約3200文字 悲劇はどこに隠れてる? の巻

いつも読んでくれてありがとね。


どこまでこれを続けるか考えていたんだけど、金閣寺の一章の終わりで完結にしようと思います。


いったん区切って、模写して気がついたことを武器に小説を書こうと思いました。


書き方に悩んだりして必要性を感じたら、またこんな風に、みなさんと一緒に小説技術の向上を目指したいです。


では、本編をお楽しみください。

今回は前回の事件の結末が描かれてるよ。その結末に対する溝口がどう感じたかっていうところまでね。


で、冒頭にこんな記述がある。


「・・・・・・事件というものは、われわれの記憶の中から、或る地点で失墜する。百五段の苔蒸した石段をのぼってゆく有為子はまだ眼前にある。彼女は永久にその石段を昇ってゆくように思われる。」←引用


この空行から空行までの部分で溝口が伝えたいことを最初の一行で伝えてるんだよね。これ。で、そのあとはその失墜ぶりを伝えるために、まずは有為子が石段を登ってる、永久に昇っているように思われるって言ってるわけだけどこれは、そのあと墜ちますよっていう前振りだよね。


読み進めていくと明らかになるんだけど、実際にこの階段から転げ落ちるわけではないだよね。ただ、前回扱った部分の終盤に有為子の男へ対する裏切りの美しさが溝口を酔わせたっていう描写があったんだよね。俺、あまり注目できてなくて触れてなかったんだけどさ。


ごめんね。そんでね、まあ、その描写があるからこそのこれから失墜するっていう言葉が効いてくるんだろうね。酔わせるほどの美しさを放つ有為子の裏切りがどうなるかってことを想像させる。


実際、有為子は、匿っている脱走兵の下へ行くために、石段を登ったんだけど、その脱走兵が有為子を殺した。


有為子は脱走兵に憲兵の手が迫っていることを伝えたようで、脱走兵と憲兵の銃撃戦が起きる。そのなかで、脱走兵は有為子を撃ち、その後、自らのこめかみ(小説は漢字表記、変換できないのでひらがな)を撃つ。


そして、証人たちこと野次馬たちは倒れた二人に駆けつけるんだけど溝口はじっと身をひそめていたんだって。


「鈍感な人たちは、血が流れなければ狼狽しない。が血が流れたときは、悲劇は終わってしまったあとなのである。」←引用


これは逆に言うと溝口は血が流れる前に悲劇を味わっていた、っていうことだよね? でね、ここまででてきた事実のどこを悲劇ととらえるか? ってことがその人それぞれの個性が出るよっていうことも考えられるかなって思ったんだ。


溝口としては有為子が証人たちを裏切って男を助けようとしたことを悲劇として感じてるんだろうなって思うんだけどさ。多数の人は無理心中を悲劇だと感じるんじゃないかな。他に二人の命を助ける方法があったんじゃないか?って。


で、じゃあなんで溝口は男を助けようとしたことを悲劇だと思ったか? というと有為子の男に対する裏切り

は美しかったのに、男を助けようとしたことでそれが失われてしまった。


あと、溝口は言っていないんだけど、もしかしたら、有為子は最初から男を裏切った振りをして隙を見て逃がそうとしていたの可能性も考えられるよね。そうすると溝口が、有為子、君の裏切りは美しい、なんて思ってたのは滑稽だよね。


喜劇じゃん。溝口のことを他人事として見てたら。


そして、溝口は死んでしまった二人には駆け寄ることもなく紅葉のかげに身を潜めてそのまま、寝ちゃった。もう、自分からは遠い出来事みたいに思えたから。で、小鳥の囀りで目を覚ましたら寒かったんだって。


「寒さだけが身内に残っていた。残っているのは寒さだけであった。」←引用


みんな大好き倒置法、もっと大好き、大事なことだから二回言う、を使ってまでの、寒さだけ、の強調。


もう、溝口、心も頭も空っぽだよ。寒さしか感じられないほどに。


みたいなことを伝えたいんだと思った。


このことを、そのまま、もう、有為子たちには興味がなくなった、という書き方もあるだろうけど、こんな風に表現しているんだろうなと思うとやっぱり心への染み込み方が違うよね。少なくとも俺はそう感じた。


この有為子の話は金閣寺という小説全体の中でどんな役割を担っているんだろう。

美しさの発生からその消滅までを、溝口は見た。ということなのかな?


美しさってなんじゃらほい? 

それは永遠の拒絶なのさ。ってことなのかなぁっていう予感みたいなものを抱きながら次へ進もう。


それじゃ、今日はこのへんで。


またね。


追記


有為子が実際に何をしたかは本文では書かれていないんだ。有為子が証人たちを裏切ったってのは溝口の推測として書かれていたんだ。脱走兵に有為子が語りかけたのは見てるけど何を言ったかまでは聞こえていないんだ。


これも一人称っていう書き方だからこそだよね?


これ、きっと重要だよね? 溝口は事実を確認することなく有為子のことをこう言ってる。


「一人の男のための女に身を落してしまった。」←引用


有為子が証人たちみんなのための裏切り者から一人の女になってしまうこと。


これも溝口に言わせたら悲劇なんだろうか?


唯一無二である有為子自身よりも、裏切り者などの何らかの一要素に殉じた方が、人は美しいという考えなのだろうか?


溝口こと三島は。


やっぱり、奥が深いね。文学作品は。

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