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40話 ウサギと狼



「今日は小部隊を作ってウサギ狩りだ。」

「「うおぉぉっぉぉぉおお!!」」


 朝礼で発せられたおやっさんの一言に、広場の野郎どもは沸き立った。

王都の外の村々では、畑で野菜を作ったり、牧場で牛や羊や豚を飼ったりしてこの国を支えているのだそうだ。

え~と、確か俺らの国は一年中穏やかな気候だから、作物や畜産物を特産として他の国と貿易をしているってのが、おやっさんとキースの話だ。


 んで、たまにウサギが大量発生して畑の作物を食い荒らしてしまうことがある。

そんなときに農家から王都に被害届けが出される。


 傭兵団ができる前は王宮直属の兵士が駆除に行っていた。

しかし王宮ってのは手続きがいろいろとあるようで、依頼を受理してから人数はどのくらいかとか、どの部隊で行くかとか、食料をどんだけ持っていくかとかその他もろもろ検討しているうちに、駆除に行った頃にはもう手遅れってなことばっかりだったそうだ。


 傭兵団の設立後、王宮から正式に依頼があり、それ以後は俺たちの仕事となっている。



 もうそんな時期になるのかぁと俺は、我こそは!といきまく連中をぼんやり眺めていた。

俺も付いていきたいが、どうせ留守番だろうな…。

壇上のキースと目が合ったが、静かに首を振られた。ちぇっ。


 俺が沈んだ顔をしていると、最年長のデルトが声をかけてきた。


「クラン坊、ウサギを狩るってのは可哀想と思うだろうが、そうしないと農家の人が頑張って作った野菜がだめになっちまうんだ。そうなると農家の人はお金が無くなって、その日の生活にも困るようになるんだ。」

デルトは諭すように優しく言うと、そのまま俺の頭を撫でる。


「小さなお前さんに今すぐに分かれなんて言わない。だが、傭兵団の連中を嫌いにならないでおくれ…」

「……そうじゃないよ。」

「んん?」


「駆除に行けば焼いてよし、煮てもよしの旨いウサギ料理にありつけるし! 皮も高く売れて小遣い稼ぎになるし! くぅ~、俺も行きたいっ!!」

「…あぁ、お前クラン坊だったな……」


 心なしかデルトが俺から距離をとったような気がしたが、気にしない。

駆除に行った者の特権として、狩ったウサギの一部を村に寄付した後は、その肉や皮を好きにしていいことになっている。

そんな理由からウサギ駆除は傭兵団でも人気の仕事だった。




「いいか、詳しいことは地元の猟師の指示に従うように。わかったな!」

「「了解っ!!」」


 10人ほどの小部隊が組まれ、デルトが部隊長として率いていく。

幼女になる前なら、小部隊を率いるのは副団長である俺の仕事だったのになぁ…。

傭兵団の本部を出発する連中を、俺はため息をつきながら見送った。




 そして、ウサギ狩りの小部隊が出発してから2日目の朝礼のことだった。

おやっさんとキースが深刻な顔で壇上にいる。

広間に整列する俺たちは、お互いに顔を見合わせて何が起きたかのかと囁きあっていた。


「静まれ、ウサギ狩り部隊のことは関係ない。」

おやっさんのひとことに、そこらで安堵のため息が出る。

極たまにだが、移動中に野盗に襲われたり、ウサギ狩りの最中に森で熊にバッタリ遭遇とかもありえるのだ。


そんな時には、兵隊と違って集団行動に慣れていない俺たちはけっこう弱い。

だからこそ、おやっさんにいろんな戦い方を叩き込まれた俺が、他の団員に比べて若く入隊も後なのに副団長なんぞをして連中を率いている理由のひとつだった。



 ウサギ狩り部隊に心配がないなら他になんだろうと、おやっさんの顔を見上げる。


「狼討伐の依頼が来た。」


広場は重くどよめいた。


 狼のやつらは徒党を組んで行動し、逃げるだけのウサギと違って俺たちを襲ってくる危険がある。

しかも噛み付かれたり引っかかれたりすると、その傷口が腐ったり高熱が出たあげくに狂って死んでしまったりする。



 おやっさんは渋い顔のまま続ける。

「どうやら群れを出た若いオスが牧場の羊の味を覚えたらしく、何頭かが徒党を組んでやってくるそうだ。今回は俺が世話になった方の領地でな、本部はキースに任せて俺が出る。」


 おやっさんが傭兵団の仕事で王都を留守にするのはめったにない。

俺たちは討伐隊として次々に呼び上げられる名前を聞きながら、こりゃどんだけ位の高いお貴族様なんだろうとこそこそ話をしていた。


 もちろん、呼ばれる中に俺の名前はなかった。

ウサギ狩り以上に足手まといになるのは目に見えているし、なにより命を落とす可能性のほうがでかい。

使えるとしたら、狼をおびき寄せる囮ぐらいか?


「午前中に革の防護服と槍や弓を調達する。午後から出発だ、準備しておくように!」

そこで朝礼は解散になった。




 傭兵団に槍や長剣の類の武器を所持することは許可されていない。

王宮管理の機関ではないからだ。

成人男子として装備する短刀と、訓練用の木刀のみ許されている。

だからこういうときは、衛兵の詰め所などにおやっさんかキースが申し込みをして、武器を借りに行くことになっている。


 ちなみに監視官がたまに訪問してきて、武器を所持していないかを調査しにくることがある。

マルゲルスがその監視官という立場を利用して、キースや俺たちに嫌がらせをしていた。

おぉう、奴のことを思い出したら鳥肌がたった…。


 防御品に関しては特に規定もないので、いろんな種類の盾やら服やらが倉庫にそろっている。

俺たち下っ端は倉庫に行き、指定された防御品を人数分そろえて整備していた。

そんなとき、俺は団長室に呼び出された。



 おやっさんが留守の間に大人しくしているよう、釘をさすつもりかな…。




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