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26話 バラと戯れる幼女

「…バラもどき?…退治って?」


 奴はゆっくりとバラ庭園を指差す。

「…よく、見てごらん…。」

「…?…なッ!? 」


なんと、よく見なければわからない程度だがバラがぞわぞわとうごめいていた。

「うおっ、気色わるっ!」

「…人の言葉に反応して、踊るバラをつくろうとしたんだけど…。何でこうなったんだろ…。」

「俺のほうこそ聞きたいわ!」


「…はい…。」

奴がゆっくりと俺に、一般的な草刈用の鎌を手渡した。

「…はい、って。…あれをどうしろと…。」

俺は草刈鎌を手に庭園を見る。

一度動くとわかると、あちらこちらでウゾウゾしているのが嫌でも目に付く。


「…普通のバラと一緒…。その鎌で刈ればいい…。刈った後は普通のバラと一緒だから、売っても持って帰っても、好きにしていいよ…。…トゲは無いから、普通のバラよりも刈りやすいと思うよ…。」

トゲがあっても、動かない分普通のバラのほうが良いわい!!



 俺は嫌々ながら端っこのバラから手をつけていく。

ユーベルトの奴は「我が子が刈られていく様子を見るのはつらい。」とかほざきやがって、建物の中に入ってしまった。

俺は黙々とバラの幹をつかみ、根元から切る動作を繰り返す。

幹をつかむと、バラもどきは(そもそもバラもどきって何なんだ!?)抗議するようにひそかに身を震わせる。

鎌の刃を当てると震えが大きくなり、刈るとピタッと動かなくなる。

孤児院にいたときに、食事係でウサギを絞めたことを思い出す。

別にトラウマになっているわけではないが、生命のあるものの命を奪っているような居たたまれなさをごまかしながら俺は一本一本刈っていった。



「ふぅ。」

俺は額を流れる汗をふき、空を見上げる。

だいぶ日が傾き、そろそろ夕暮れ時にさしかかろうかという頃だ。

まだ裏庭は3分の1程度しか刈れていない。

覆い茂っているバラもどきを眺めながら、こりゃ明日に持ち越しだなとため息をついたときだった。


「…ん?」

ズボンの上から、ふくらはぎのあたりを何かが触れているような変な感触がする。

虫かヘビが巻き付いているような…、俺はおそるおそる足のほうを見た。

「…何だこれ。」


 細い草のツルのようなものが足に巻きついていた。

今まで刈ったバラもどきにはツルなんてなかったぞ…?

俺が首をかしげながら鎌でツルを切った瞬間だった!


茂みの中からさっきのツルとは比べ物にならないような、子どもの腕くらい太いツタがあっという間に俺の足首に巻きつく。

「うわっ!? 」

驚いている間に俺はツタに持ち上げられ、宙に吊り下げられてしまった。


「うわわ、わ、わ、わ、何だ、何がおこったんだ!? 」

俺は訳もわからず、足首に巻きついたぶっといツタの根元を追って見た。


「うっぎゃああああああぁぁああ!!」


 そこには、大人の男と同じくらいの高さで、井戸と同じくらいバカでけぇ花のバラの化け物の姿があった。

しかもその化け物からいくつもの、もはや触手としかいいようのないツタがうねうねと蠢いている。

「ぎゃあぁあぁあああああ、喰われるぅうぅうう!!」

俺は力の限り手足をバタバタさせたが、足のツタはビクともしない。

クラインの俺なら、さかさまの状態でも腹筋で足元のツタに鎌を振るうこともできるのだが、このクランの身体じゃ重力にしたがってプランプランと揺れていることしかできなかった。



「おぉ、突然変異だ…!」

俺の叫び声が聞こえたのか、建物からユーベルトが出てきていた。

「同胞の命の危機に反応して、こんなに短期間に進化をみせるとは…。」


「た、助けてくれッ!!」

何かぶつぶつ言っているユーベルトに必死で助けを求める。

ユーベルトの奴は初めて俺に気付いたようにゆっくりと俺のほうを見上げた。


「…無理…。」

「何おう!? 」

「…そんなことできるなら、最初から傭兵団に頼んだりしない…。」

「こんな化け物退治なんか聞いてないぞ!? これは契約違反じゃねえかっ!!」



 依頼内容と明らかに違う場合は俺たちが現場で判断して契約破棄でき、本部から違約金の請求をすることになっている。

強面どもの傭兵団に逆らう奴はめったにいないが、たまに貴族の権力をかざして横暴をする奴は衛兵に突き出すようになっていた。



「…鳥便を飛ばして、君が作業をしている途中までは普通だったんだ…。さっき進化してこうなっちゃたんだから、契約違反じゃないよ…。」

「バラもどきとか呼んでる時点で化け物じゃねえかぁぁああ!!」

「…僕の子どもたちは、化け物なんかじゃないもの…。」

「使えねぇ、コイツ壮絶につかえねぇぇぇぇ!!ひぃっ!? 」


 ユーベルトに意識をやっていた間に、何本かのツタが俺の身体をまさぐり始めていた。

「ひぃぃぃぃ、何これ?何これぇぇぇぇッ!!」

「…捕まえた相手を、検分しているのかな…。」

「ひぃぃぃぃ、助けてぇぇぇぇぇ!!うひゃあぁっ!」


何本かが服の下にするりと入り込み、地肌をつつ…となぞった。



「気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い、誰かとってぇぇぇぇぇぇえええ!!」


最後まで読んでいただきありがとうございました。


一度はやりたいお約束の触手イベント…。

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