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19話 天を仰ぎて候う

全裸の変態が幼女にせまる話です。苦手な方はご注意ください。

 奴に誘導されるままに歩いていると、廊下の途中に豪華な飾り棚があった。

俺は無意識に覗き込んで後悔した。

そこには腕輪、首輪、足枷、ムチ、他にもどう使うのか考えたくもないようなグロテスクなモノがゴロゴロと並んでいた。


「こういうものに興味があるかい?」

頭上から妙に熱っぽい声がかけられ、俺は無意識に奴のどてっぱらに打ち込もうとした拳をもう片手でとっさに押さえ込んだ。


 そのまま何事もなかったように、奴を置いて廊下を先に進む。

何かしらの反応を返して奴を喜ばせるのは癪だった。

「それでいい…。素晴らしい…。」

背後から何か聞こえてきたが聞こえない聞こえない。



 やがて一番奥の扉にたどり着く。

マルゲルスは鍵を開けると俺を中へ誘導し、自らも中に入り鍵を閉めた。

ガチリ、という重い音を聞きながら奴がポケットに鍵をしまうのを確認する。


 部屋は薄暗く壁も床も無骨な石で、大きなベッドがひとつと広いスペースに鎖やら貼り付け台やらがあった。

あれは部屋の装飾品っつーか、実際に使うものなんだろうな…。


「さぁ、これで誰にも邪魔されない。君と私の二人きりだ。」

奴は芝居の役者のように大仰に両手を広げうっとりとささやく。

そのとき見たくないものを見ちまった。…どこがとは言わないが盛り上がってる…。


「ぐっ…。」

俺は吐き気をこらえ目をそらした。

すると衣擦れの音とパサパサと床に布が落ちる音が聞こえ、視線を正面にもどした俺の目に飛び込んできたのは…。


 全裸で恍惚とした表情をしながらムチを掲げた奴の姿だった。


 絶句して後ずさりする俺に、奴はムチを手にしたままゆっくりとにじり寄る。

「…大丈夫、この部屋は完全防音で外に聞こえないから…。」


 奴の血走った目に圧倒され、思わず後ずさりしてしまう。


「…さぁ、このムチで…。」

「…っつ!!」

背中に固い壁の感触を感じ、とうとう俺は壁際に追い詰められたことを悟る。


「ハァハァ…さぁ…。」



 俺は…、俺は!

「うおぉぉぉぉぉっつ!!」


 俺は床を強く蹴ると奴の持つムチめがけて飛び込んだ。

そのまま奴の横を転がり背後へとすり抜ける。

「よしっ!」

俺の手の中にしっかりとムチがあった。


 奴は俺が反撃すると思っていなかったようで、全裸で呆然と立ち尽くしている。


 俺はそのまま振り返りざまにムチを振り上げた。

「今までお前が、虐げてきた奴らの痛みを思いしれぇぇぇぇっつ!!」


 そのまま躊躇なく振り下ろす!

ムチは空気を切り裂き、奴の尻にぶち当たった。


「あひぃぃぃぃん!」

奴は情けない悲鳴をあげて倒れた。

俺は奴にムチを投げ捨てると、脱ぎ捨てられた服のほうに行き鍵を探した。

「あった。」


 さすが完全防音の部屋だ。けっこうな騒ぎだったが誰も部屋を訪ねてくるものはいない。

奴の目論見が裏目にでたのだ。

このまま誰にも悟られないうちにこっそりと脱出しよう。


 そう思って扉へと一歩踏み出したとき、俺の足をガシッとつかまれた。

もちろんマルゲルスの奴だ。

奴ははいずりながら俺の足元まできていた。

俺はすでに自分のペースを取り戻していたので奴の奇行に圧倒されることもなく、つかまれた足を振り上げて奴の手をはずした。

そのまま追いすがってきた手を踏みつける。


「これに懲りたら、もう傭兵団にそのきったねぇ顔を出すんじゃねえぞ。」

さすがに唾を吐きかけるのはこらえたが、クラインのときからの降り積もっていた奴に対する鬱憤がまぁまぁ晴れた。


本来なら平民の俺がお貴族様にこんなことをしたら、不敬罪とかで衛兵にしょっ引かれる。

しかし奴だって幼女な俺にこんな目にあわされたんだから、お貴族様のプライドってやつで公にはしないだろう。

奴の手から足をどけると、その場をさっさと立ち去ろうとした。


「…待ってくれ…。」

「しつこいぞお前。」

「…こ、このムチで…。」


 見ると奴の手にはいつの間にかムチが握られている。

いいかげんそのしつこさに頭にきて、その手を蹴り上げようとしたそのときだった。



「このムチで、このムチで、僕を打ちのめしてくれぇぇぇぇぇっツ!!」



……は?


 ヤツは床に這いつくばったまま熱弁する。


「素晴らしい、素晴らしいっ!!やはり僕の目に狂いはなかった。君を見かけたときからわかっていたんだ、僕と君の出会いは運命だと!僕は自分よりか弱いモノに虐げられることで興奮するんだ。だがすべての子は怯えてしまい僕を満足させてくれる者は誰一人いなかった…。」


 そこまで一気に言い切ると奴はおもむろに立ち上がった。

俺の目線の高さに、これ以上ないくらいに元気になっちゃってるヤツ自身があった。


「だが!君は物怖じするどころか僕をその眼で見下し、その口で罵り、その手でムチを振るい、その足で踏みにじった!素晴らしい!君はまさに天性の女王だっ!」


 奴が話すのに合わせてヤツ自身が激しく揺れる。

そのまま恍惚とした顔で奴とヤツは天をあおぎ叫んだ。



「君は、君は僕の奇跡だぁぁぁぁぁぁ!!」


…だあぁ…だあぁ…あぁ…ぁぁ…




 二人だけの密室に、奴の叫びが無駄に反響した。




最後まで読んでいただきありがとうございました。

文字数が少ないとはいえ20部まできました。これも読んでいただいている皆様のおかげです。

本当にありがとうございます。


副題「てんをあおぎてそうろう」えぇ、ただの読み方です。

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