第二章 【昌子】
「…ありがとう。切るわね…」
私は受話器を置き、しばらくその場に静止した後、ようやくベッドに腰を下ろした。
仲山美花が死んだ。それも…殺された…
仲山美花は私と同じ桂高校の三年生で、テニス部の副部長をしていた。それが昨日、何者かの手によって殺害されたと言うのだ。
「どうしよう…」
私は頭を抱え込んだ。全身が震えているのが分かる。
「…そうだ」
私は色々と考え込んだ末、再び電話に手を伸ばすと無我夢中でボタンを押した。掛ける相手は勿論…
「はい。もしもし、霜田です」
彼はまるで私を待っていてくれたかの様にすぐ電話に出てくれた。
「おはよう、康時君」
「おはようございます先輩」
康時はいつもと変わらぬ様子で挨拶を返してくれた。そう、いつもの様に…
「あなたは…あの話を聞いた?」
「ええ、三年生の女子生徒が昨日、通り魔に殺されたって話でしょう?そのせいで今日は学校が休みだそうですね。それがどうかしましたか?」
私は床に視線を落とした。
「一緒のクラスで、親友だっだんだよね…美花とは…」
「えっ…そんな…」
康時は私と仲山が親友だったというのを知り、ショックを受けたのか、しばらくの間黙っていた。
「だからお願い」
私は声を若干震わせて言った。
「私と一緒に美花を殺した犯人を探して」
「えっ」
電話越しで康時が目を丸くしているのが目に浮かぶ。
「でも先輩、殺人犯を捕まえるなんて…」
私の唐突な言葉の数々に彼はついていけていない様子であったが、私は そんな事等お構い無しに話を続ける。
「私は親友として、あの子を殺した犯人が許せないの。でも、私一人じゃ殺人犯を追い詰めるなんて出来そうにない。だからお願い康時君!」
少しずつ声を大きくしていったのが効果的だったのか。
「…分かりました…」
とうとう彼は折れてくれた。
「ありがとう…」
私はそっと、呟いた。