第二章 【昌子】
「何の用だよ」
これがテニス部部長、赤城努がはるばるテニス部の部室までやって来た私に対する第一声だった。
「大した用じゃなかったら後にしてくれねェかな?俺、こう見えても結構忙しい身でね」
そう言って彼は視線を私から手元にあるノートに変えた。私は彼の他人に対するそっけのない態度に改めていらだちを覚えたが、それよりも先に聞かなければならない事を聞かなければならない。
「仲山美花さんが殺された件について、話を聞きに来たの」
「仲山…テメェこの俺を疑ってんのか?」
赤城は持っていたシャーペンの持ち方をナイフの様に変えた。私を刺すつもりなのだろうか?
「別に。私はあなたが仲山さんを殺したなんて少しも思っていない。けど、もしかしたら彼女を殺した犯人を特定できる情報を、あなたがもっているかもしれないでしょ?」
そう言われて少しは安心したのか、持っていたシャーペンを放り出した。単純な男である。
「それで?何を聞きてェんだよ」
「それじゃあまずは…事件があった日の六時三十分頃、あなたはどこで何をしていたのか教えて」
結局は俺の事疑ってんじゃねェかよ。赤城の目は確実にそう言っていたが、彼はしぶしぶ口を開いた。
「一人で家にいたよ。風邪をこじらせてな…」
この季節に風邪なんて…と言う人が多くいるが、この男は見かけによらずかなり病弱な体質なのだ。
「それで?それを証明してくれる人はいるの?家族とか…」
喋っている途中、ヤバいと思ったがもう手遅れだった。赤城は椅子を倒して立ち上がると、再びシャーペンを手に取った。
「俺はなぁ、家に居て飯を食うときも一人なんだ!ましてや熱出してウンウン唸ってる時に、誰が俺の事を気にかけてくれるものか!」
そうだった…コイツには両親が居なかったんだった…私を同じで。
「ごめんなさい!悪気は全然…」
「さっさと出て行け!」
赤城は私を部屋の外へと締め出すと、思いっきりドアを閉めた。
「………」
私は自分の体が大きく震えているのに気がついた。




